鬼神と戦った職人はどうやら異世界転移に巻き込まれるようです 作:両刃剣はロマン
「ここがジンの故郷ニャンだね」
「おう、何もないけどいい所だろ?」
俺の名は
職業は武器職人兼魔武器。
ん?いやいや、鍛冶師の方の職人じゃねーよ。
武器職人ってのは、アメリカネバダ州のデスシティにある『死神武器職人専門学校』通称死武専に所属しており、死神様の武器である『デスサイズ』を作ることを目標にして魔武器を扱う者を指す。
デスサイズには鬼神の卵である悪人の魂99個と魔女の魂1個が必要であり、武器職人は日夜悪人や魔女相手に奮闘していたのだ。
過去形なのは、初代鬼神である阿修羅との戦闘の際に魔女と共闘。
それをきっかけに魔女とは和解し、同じ死武専若手精鋭部隊『スパルトイ』のソウル=イーターがデスサイズになったのを最後に、それ以降のデスサイズ作成は中止となったためだ。
俺は鬼神戦の後処理も終わった後、現死神様であるキッドに長期休暇の許可を貰って、強い魔力をもった白猫兼魔武器である相棒のクレアと共に地元へと帰省したのだ。
両親は俺が死武専に行った際にアメリカについてきて、こっちにはいない。
今は、今日から世話になる所までのんびりとクレアと話しながら歩いている所だった。
「それでジン。今日から泊まる所ってどこにゃの?美味しいお魚があれば嬉しいにゃん」
「魚は分からんが、今から行くところは俺が小さい頃にお世話になった道場のとこだよ。ほらアレだ」
目の前にある大きな道場と日本家屋。
そこには『八重樫』と表札が書かれており、目的の人物の家である事を示していた。
「ここの道場は色々な武器を扱っていて、死武専の東アジア支部の人はここで訓練してる人も多いみたいだぜ」
俺自身もここで支部の人にスカウトを受け、死武専に入学したんだとクレアに教えながらインターホンを押す。
「はーい」
そう言って、玄関から出てきたのは俺と同年代の少女。
久々にあったが、向こうにいる間も時々テレビ電話などで会話していたためその人物が誰かはすぐにわかった。
幼い頃にここの道場で一緒に師匠に鍛えられた道場主の子であり、俺にとっては幼馴染でもある『八重樫 雫』である。
濡鴉のように綺麗な黒髪をポニーテールで纏めた少女に向かって、俺は片手をあげて軽い挨拶をした。
「よ、雫。久しぶり」
「………」
だが、向こうは無反応どころか何故か玄関を閉める。
仕方なしに俺はもう一度ピンポーンとインターホンを押すと、すぐに雫は出てきたが自身の頬をつねった後ため息を吐く。
「やっぱり夢じゃないのね……ジン、貴方アメリカにいたんじゃないの?」
「長期休暇で戻ってきたんだよ」
「それならそうと事前に電話しなさいよ、いきなりすぎて驚いたわ」
「いや、電話した「あらあらジンちゃん、大きくなったわねぇ」あ、おばさん、お久しぶりです」
何やら食い違いが起きている中、雫のお母さんが玄関へとやってきた。
「客間の準備は出来てるから、そこに荷物は置いてねぇ」
「分かりました」
そこまで言った時点で何やら雫の様子がおかしかった。
まるで初めて聞いたかのように目を丸くさせ、その後には頭が痛いかのように手を顔に当てている。
「……母さん。私、ジンが泊まるなんて聞いてないんだけど?」
「だって言ってないもの?サプライズよ、サ・プ・ラ・イ・ズ」
「なんで道場が休みだったか、今分かったわ……母さん。そういう大事な事は隠さずに先に言ってよ!!」
「その方がおめかししてお迎え出来るからかしら?」
「~~~ッ!!道場行ってくる!!」
そのうちおばさんに丸め込まれたのか、雫は顔を赤くさせながら俺の横を通って道場へと歩いていく。
「雫。後で久々に手合わせしようぜ」
「わかった………あとおかえり」
「おう、ただいま」
そのまま雫は耳まで真っ赤にさせながら、こっちを見ることなく道場へと入っていった。
「あらあら、少しからかいすぎたわねぇ。ジンちゃん、自分の家だと思って、ゆっくりしていってね」
「ジンも隅におけなゃいね」
客間に荷物を置く間に散々クレアにからかわれたが、うるせぇとデコピンをくらわせ動きやすい格好をして道場へと向かう。
そこには道着に着替えて、瞑想する雫がいた。
「悪い、待たせたな」
「………」
俺が声をかけると返ってきたのは木刀を構えた姿だ。
クレアは自然と肩から降り、道場の隅へ行く。
俺も予め用意されていたのであろう、自身の身長170cm程の長さの棍を持ち水平に構える。
電話で話すなどはやっていたが、手合わせは幼い頃以来だ。
だがそれを知るのに言葉は不要。
語るのは互いの獲物で十分だ。
雫が袈裟斬りしてくるのに対して、逆袈裟で木刀に合わせる。
「「ッ!!」」
雫がさらに攻撃してくるので棍を合わせ、再び互いの獲物が弾かれた。
俺はその反動を利用し、反転しながら勢いを乗せて息つくまもなく反撃する。
それを雫は足さばきだけで最小限の動きで避け、あちらも攻撃へと転じる。
突き、払い、切り上げ。
至近距離で打ち合うが互いに決定打は出ない。
当たる攻撃は互いの獲物で弾くため、道場は木刀と棍がぶつかる音と空気を切り裂く音だけが響いていた。
それは2人の間で終わる事はなく、結局おばさんが夕飯が出来たという呼びに来るまで俺と雫は打ち合っていたのだった。
「引き分けか」
「はぁ……はぁ……息を切らしてないのに何言ってんのよ」
おばさんの声で集中が切れた雫が息を切らし、その場で座る。
夕飯と言われ、道場の外を見れば既に日が暮れている。
集中していて気づかなかったが、かなりの時間打ち合ってたのだろう。
「これでも剣道で優勝したし、けっこう自信あったんだけどなぁ」
「いやいや、職人でもないのに十分だろ」
こちとら何年実践で鬼神の卵とやり合ってると思ってんだよ。
むしろ、そんな職人と打ち合えるほどの剣道……いや剣術の技術がある雫の実力に驚いた。
「これなら例の約束も近々果たせるかもな」
「え?本当!?」
クレアがタオルを2つ口にくわえて持ってきてくれたため、それを受け取り片方を雫に投げ渡す。
「ねぇ。せっかく帰ってきたんだから、後でアメリカであった面白いこととか教えてよ」
三角座りで頭をコテンと傾けてそう言った雫の姿に、不覚にもドキッとしたがそれを悟られたくなかった俺は別の方向へ顔を背けるら、
「しゃあねぇな。とっておきのエイボンの書の中の話をしてやるよ。代わりにお前も高校とかでの事話せよな」
「分かってるわよ」
「クレアがいるのにイチャラブ空間はやめるにゃ」
「猫が喋った!?」
「え?普通だろ?」
「デスシティでは普通にゃん」
真桐 刃(まきり ジン)
死武専若手部隊に所属する魔両刃剣使いである。
マカと同様に、魂感知、退魔の波長を得意とする。
クレア
ジンとタッグを組む魔両刃剣兼高い魔力をもつ白猫。
姉妹にブレアという黒猫がおり、ブレア同様魔法や人化する事ができる自他共に認める万能猫