鬼神と戦った職人はどうやら異世界転移に巻き込まれるようです   作:両刃剣はロマン

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第2話

目が覚めると視界に映ったのは、いつもの洋装の天井ではなく和装の天井だった。

 

(そう言えば、今日から雫の家に泊まってたんだな)

 

いつもなら腹にはクレアが寝ており若干の圧力を感じるのだが、クレアは先に起きているようだ。

窓を開けたら眠気眼の太陽ではなく、大口開けて笑う黄色い太陽が視界に映る。

どう見てもいつもより寝過ごしているのは確実だった。

 

「学校が無いのは幸いだったな。昨日は師匠に挨拶した後、雫と話していたらほぼ明け方だったからな」

 

1人言い訳がましくそれらしい事を言いながら、布団をたたんだ後居間へと向かう。

そこには既に俺以外の人物が揃っており、相棒であるクレアも眠気まなこの雫の膝の上でゴロゴロとノドを鳴らしていた。

 

「おはようジン、随分遅かったわね」

「おはよう、長期休暇ってことで気が抜けていたわ」

 

雫にそう返すと何とも言えない顔をする。

まあ雫は普通に学校、それも学生が最も憂鬱になる月曜でさらに言えば寝不足もプラスされている状態ならそんな顔にもなるだろう。

俺の席は雫の横のようで、そこに座ると目の前には俺の師匠である、雫の父さんが新聞を広げ座っている。

 

「…………」

「あらあらお父さん。ジンちゃんも大変だったんですからいいじゃないですか」

「…………」

「はいはい。ジンちゃんには後で言っておきますよ。それよりも今日は死武専の支部に行くのですから、そろそろ準備しないと間に合いませんよ」

 

うん、相変わらず師匠は無口だが何故おばさんは師匠の仕草だけで会話が出来るのだろうか。

あれか?いわゆる阿吽の呼吸ってやつなのか?

これだけは未だに謎だ。

 

師匠と雫がそれぞれ仕事と学校へと向かい、俺は久しぶりに日本のTV番組を見ているとクレアが声をかけてきた。

 

「ねえ、ねえ。これって雫のじゃにゃいかにゃ?」

 

クレアが前脚でチョンチョンとするのは巾着に入った小さめの弁当があった。

その言葉におばさんもそれがある事に気がついて困り顔になる。

 

「あら雫ったらお弁当作ったのに……そうだジンちゃんお願いがあるんだけど……」

 

 

 

今の時刻は昼の12時を少し過ぎた時間。

俺はいうと死武専に比べて遥かに小さい校舎の前に立っていた。

 

「クレア、この高校であってんだよな?」

「うん、おばさんにもらった地図だとここにゃ。それにしてもにゃんでクレアはカバンの中にゃ?正直せまいにゃ」

 

そういって、俺が背負ったリュックの口から地図を咥えてひょこっと顔を出すクレア。

 

「仕方ないだろ。おばさんもパートでいないし、留守番は嫌だっていったのはお前じゃねーか」

「それでもカバンはないにゃ」

「さっきも説明しただろ。向こう(死武専)と違って、学校に堂々と連れていけないんだよ」

「むー」

 

いくら説明してもクレアは納得せず、肩に登って来て肉球で俺の頬をフニフニしてくる。

 

「……はぁ。帰りにち〇~る買ってやるから、今は耐えてくれ相棒」

「うにゃ!?にゃら仕方ないから我慢するにゃ」

 

ったく現金なヤツだ。

途端にご機嫌にカバンに潜りこむクレアにため息が出たが、大人しくなったため改めて学校の中へと入った。

 

 

そのまま事務員の人に話せば、まず通されたのは職員室だった。

そこで雫のクラスの担任である畑山先生と面会し、彼女に教室まで案内される事になった。

 

「すいません、わざわざ教室まで案内してもらって」

「いえいえ良いんですよ。だって私先生なんですから」

 

そう言ってふんすと胸の前で拳を握る畑山先生を見て、なんだかほんわかとしたオーラが漏れている。

道中、彼女と雑談するがその内容ら主に俺の事だった。

 

「ほへぇ、小学生の途中からアメリカに留学なんてスゴいですね。最初のほうはやっぱり大変だったんじゃないんですか?」

「まあ、そうですね。ろくに英語も喋れなかったですから、会話なんて主に身振り手振りでしたね」

「ふふ、でもそんな状況でもコミュニケーションを取ろうとする姿勢はスゴい事ですよ。あ、ここですね。昼休み中なら、学校にいても大丈夫ですので」

「ありがとうございます」

 

そう言って畑山先生と共に俺が教室に入ると中にいた全員の視線が俺に向く。

その理由は俺自身も理解している。

同年代の見知らぬ男子、それもこの学校の制服ではなく私服なら懐疑の視線を浮かべるのは普通の反応だった。

あまりこの視線は受け続けたくないので、雫を探せば幸いにもすぐに見つかった。

何やら、雫に負けず劣らず可愛い顔をした少女とエクスカリバーを持っていた時のヒーロを思わせる周囲にキラキラのエフェクトを浮かべた少年、後は周りよりは鍛えている少年がいる。

いや、あとそのヒーロ擬きの影になって見えなかったがNOTの魔武器にいそうなひ弱というイメージが思い浮かべれる少年も近くにいた。

 

「ジン!?なんで貴方、学校に来てるのよ!!」

「これ忘れてたろ、お前。弁当、おばさんに届けるよう頼まれたんだよ」

 

そう言ってふりふりと可愛らしい弁当を雫に掲げる。

……何故かこれだけのやりとりだけで、キツくなる視線が出てきた。

 

「別に学食あるんだから、わざわざ持ってこなくて良かったのに……」

 

そう言って全員に注目されているからか、顔を赤らめて弁当を受け取る雫にヒーロ擬きが声を掛けてくる。

 

「雫、彼はいったい誰だい?」

「あー、そう言えば貴方達は入れ違いだったわね。コイツは真桐ジン。光輝がうちに入門する直前に別の道場に移った同い年の貴方の兄弟子ね。ジン、彼は天之河 光輝。貴方の後にうちの剣道に入った後輩弟子よ。それで後は順に白崎 香織に坂上龍太郎、席に座っているのは南雲ハジメ君よ」

 

へぇ、弟じゃなくて後輩。それもわざわざ剣道って言っている辺り、俺が職人達レベルの所に移った時に入門した一般人相手用の門下生か。

まあ、そうそう俺みたいに幼少期に移るケースはないもんな。

 

「どうも、初めまして。ジンだ、今は長期休暇で雫ん家に厄介になってる」

「あ、よろしくお願いします。白崎香織です」

 

俺が右手を出して自己紹介すると、まず返ってきたは白崎と呼ばれた少女だった。

ハンドシェイクをすると先程から浴びる視線がよりキツいものになる。

いったい俺が何をしたのか分からないが、ちょっとわずわらしく感じる。

 

「よろしく、ジン。俺は天之河光輝だ」

「俺は坂上龍太郎だ」

 

次いで男子2人ともハンドシェイクしていると、何故か最後に雫が紹介していた南雲がコソコソと教室から出ようとしている。

 

「あっ!!南雲君、なんで逃げるの!」

「し、白崎さん……これは、ええっと」

 

それを見つけた白崎が南雲を逃がさないと回り込んでいる。

 

「なあ、雫。あの二人は?」

「あー香織がアピールしてるんだけど、空振りしてるって言えば良いのかしら?」

 

あぁ、なるほど青春ってやつだな。

特に初対面の俺がどうこう言える訳でもなく、見ているとそこに先程のヒーロ擬き……天之川が割って入って何やらクサイ事を言って白崎にアピールしていた。

 

「こういう時の天之川の事を日本語でなんだったか……ああ、アレだ馬鹿に蹴られて死んでしまえだったか?」

「鹿まで追い打ちかけてどうするにゃ」

「ぶふっ!!ってクレア、なんで貴方まで来てるの!?」

 

あ、雫がふいた。

次いでクレアの存在を知り慌ててリュックの口を閉めていると、突然床が光り始めた。

教室全域に幾何学模様が描かれている。

 

「皆さん、急いで教室の外へ」

「ダメだよ、愛ちゃん先生!!扉を開けたら壁があって出れない!!」

 

その異変に畑山先生が行動を起こすも、死武専前夜祭の時のように入口が封鎖されている。

この緊急時にクレアもリュックから飛び出し、俺の肩から幾何学模様を透き通るような青眼で覗きこむ。

 

「……クレア」

「ダメ、魔法って事しか分からない。それにこんな魔法陣見たことないわ」

 

クレアの口調が真面目になっている辺り、かなりヤバい状況だ。

脱出不可能な教室の中は阿鼻叫喚に包まれてる。

真横にいる雫も言葉が出ないのか、俺の服を掴んでいるだけだ。

俺自身も予想外の事だったため一瞬硬直したが、その後はせめて敵の居場所やどんな存在かを把握するため、魂感知を試みる。

そして、その結果に空いた口が塞がらなかった。

 

「ウソだろ……」

 

感知での反応の結果は何もなし。

そう、目の前にいる人物の魂すら見えないのだ。

その状況を俺は1度経験している。

先代の死神様の魂を覗いた時だ。

つまり、この仕業は死神様並に強大な……神のような存在って事だった。

 

「はは……神の仕業ってか?」

 

思わず出た乾いた笑みを最後に床は今まで以上に強く発光し、目の前が真っ白になった。

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