鬼神と戦った職人はどうやら異世界転移に巻き込まれるようです   作:両刃剣はロマン

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返信は返せていませんが、色々と参考になるご質問などありがとうございます。


第3話

光によりやられていた視界が戻るが、そこは最後にいた教室ではなかった。

目の前に映るのは大理石描かれた巨大な壁画だった。

自然の風景が描かれ、その中心には後光を背負う男性とも女性ともとらえられる人物が金色の長髪をなびかせてる。

恐らく地上に降り立つ神か、または天に召されて神となった者を描いたのだろう。

それが前者か後者なのかまでは判断がつかないが、少なくともそれが宗教的な価値のある絵だということだけは確信が持てた。

周囲を見れば、壁画と同様の素材でできた石柱やドーム状に加工された天井もある。

どうやらここは建築物の中らしく、俺たちは祭壇の上に立っていた。

 

「クレア、雫。ケガはないか?」

「クレアは大丈夫にゃ」

「私も平気。でもここはいったい……」

「俺も分からん。少なくともあいつらならわかるんじゃないか?」

 

そう言って指し示したのは、祭壇を囲んで祈るような恰好をしている者たち。

そいつらは白地に金の刺繡が施されたローブを纏っている。

 

「にゃるほどねぇ。ローブのデザインは見覚えにゃいけど、この場所を見れば分かるにゃ、あの服は法衣、祈っているのは神官にゃ」

 

 

クレアがそう断定すると、奴らの奥からより一層金をかけていそうな衣装を纏う老人がでてきた。

クレアの言葉が正しいなら、たぶん法王的な存在か。

 

「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 

 

 

 

好々爺然とした態度で接してきたイシュタルと名乗った教皇によって、俺たちは状況説明を聞くために長大なテーブルのある部屋へと連れられた。

席は特に指定されなかった為、上座の方に座った雫の隣にクレアを膝に乗せて座るとタイミング良くメイド達がティーセットをワゴンに乗せて入ってくる。

そのメイド達はあっちでよくいるようなおばさんではなく、全員が美女・美少女達。

男子のほとんどがその美貌に鼻の下を伸ばしているが、先程からのイシュタルの態度にこの狙ったかのようなメイド達。

正直に言って怪しすぎだ。

 

「……籠絡、脅迫どっちだ。クレアいけるな?」

「にゃあ」

 

俺の言葉にクレアは膝からおりてメイドの方へ走って行く。

クレアの低い視線なら、俺達から見えない位置にありそうな武器も見えるはず。

そう思っていたのだが、当のクレアは執拗以上にメイドの足元をウロチョロしていた。

クレアさん?さりげなく見るだけで良いんですが、そのままだとメイドさんがこけぇぇ!?

 

「きゃあ!!」

「「「おぉおぉお!?」」」

 

案の定メイドがクレアを踏みそうになったところでバランスを崩し、スカートを翻して盛大に尻もちをつく。

透き通るような色をした太ももをあらわに、更にはあと少しでその先の中身が見えるか見えないかという青少年には少々刺激的な姿に男子達が思わず声を出し、女子の視線が冷たくなる。

 

「ちょっとクレア、何やっているの!?」

 

その状況に雫が思わずクレアの回収へ向かい、俺は他人の振りをした。

確かにメイドの武器の有無を確認するように頼んだし、そのおかげで俺も確認できた。

だがやめろ、『これが見たかったんだろ』といいたげなドヤ顔と達成感をごちゃ混ぜにしたような顔をしてこっちを見るな。

 

「ジン、しっかりとクレアを抱いていないといけないじゃない」

 

そう言ってクレアを渡してきた雫の声は冷たく、俺は言い訳することもできず無言で顔を上下に動かした。

 

「すいませんでした。もう逃げないようにしっかり見ておくので許してください」

「あの、私は大丈夫ですので……」

 

俺がメイドに頭を下げるとメイドは顔を赤らめながらそう言って、作業へと戻っていく。

 

「こほん、では飲み物を来たことですし、この世界について一から説明させていただきましょう。まずは私の話を最後までお聞きください」

 

そう言って、イシュタルはここが異世界であるということから説明を始めた。

俺以外の全員がイシュタルの言葉に耳を傾ける中、俺はクレアへと咎めように視線をむける。

 

「……おいクレア、メイドがナイフを太ももに隠し持っていたのは分かったがお前が確認すればいいだけだったろ」

「にゃ?お爺さんの話しは良いのかにゃ?」

「話をそらすな。それに爺さんの話はここが異世界だとかの話だろ。口の動きをみればわかるだろ?意味不明な言葉と日本語を喋っているのに聞こえてくるのは全部英語だ。仮にこの翻訳が魔法だとしても呪文を唱えていない時点で俺の知っている常識とは違う場所だ。それに魂もおかしくなっているし、あの爺さんから言われるまでもなく信じる材料はある」

 

そう言って魂感知をこの場にいる者に向けてみれば、あの教室にいた者の魂が教室にいた時と違うことを改めて知覚する。

 

教室にいた時は何の変哲もない魂だった。

だが今は俺やクレアを含めて教室にいた全員が、まるで魂に焼印をいれたかのように幾何学模様が刻み込まれている。

その規模は人それぞれであり、もっとも多く刻まれているのが天之川で最低限刻まれているのが俺、クレア、そして南雲だった。

ただ言えるのはそれは規格が合わないことを承知で無理やりしたような物で、似たような魂だと魔婆の眼を奪った狼男のフリーのような後天的に魔法を扱えるようになった魂と似通った構造へと変質していた。

 

「魂にまで干渉するなんて、まさに神の御業ね……。ジン、弁明の前にひとつ分かった事があるわ」

「……なんだ?」

「あのメイドはクロのパ『べチン!!』フニャ!!」

 

真面目な口調でなに言い出すんだ、この猫は。

今重要なのは、メイドが武器をもっていたことだ。

言わんでいい事も言おうとしたクレアにデコピンをかました後、魂感知をさらに広域にしてみる。

まあ、そうすると反応が出るわ出るわ。

奥の座席や爺さんの後ろの壁や天井、それに先程通った入口の方からも何十人と人の魂を感知する事ができた。

つまり脅してでも従わせるという魂胆があるようだ。

そう考えると、今注がれたお茶も怪しく見えてくる。

どうなるかは成り行き次第だが、ここの物には手をつけずに動けるようにはしておこう。

 

「クレア、ふざけるのはなしだ。いつで武器化できるようにしていてくれ」

「りょーかいにゃ」

 

ある程度の事を把握し顔を上げて見れば、何故か畑山先生が小さな身体を震わせて爺さんにプリプリと怒っていた。

 

「なあ、雫。なんで畑山先生は爺さんに怒っているんだ?」

「さっきからクレアと話していると思ったら、やっぱり聞いてなかったのね」

 

俺が話を聞いていなかった事に雫は呆れた目をしながらもここまでの流れを説明してくれた。

その話は簡潔に言えば、魔人族と呼ばれる南一帯を支配する民族と何百年もの間戦争しており、今までは武力が拮抗していたが近年に魔人族が本来不可能な魔物を使役するという異常事態が発生しその均衡が崩れたらしい。

このままでは人が滅びそうなところ人が崇めている神から神託がくだって俺達が召喚されたらしく、俺たちには戦争に参加してほしいとのことだ。

また帰還を求めたが、これは主神が呼びだした為俺たちを元の場所に帰すことは不可能らしく、ふざけるなと畑山先生が怒鳴っているのが目の前の状況らしい。

 

それにしてもおかしな話だ。

その主神……えっとエヒトだったか。

そいつがあの転移の仕業なら、何故死神様のように直接関わっていないんだ。

俺達外部の者の力が必要なほど、戦況は切羽詰まっている状況なはずなのに。

だがそれ以上によく分からなかったのは天之川の行動だった。

 

なんとコイツ、イシュタルによる一方的な情報だけで戦争に参加することを決意したのだ。

これにはクレアも素で「人型の生物を殺したこともないのにバカなの?」とマジトーンで言っている。

イシュタルの話が本当に正しいのかもわからない状況なのに、何を根拠に信じているのか分からない。

もしかしたら俺同様に武器を持っている者に囲まれた状況を理解しているのかもしれない。

そう思った。

そう思いたかった。

 

「この世界の人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

疑っている相手に帰還できるか聞き曖昧な答えを信じてやる気を見せている時点で、俺の希望的観測はありえなかった。

目の前で他のヤツらを元気づける天之川がイシュタルの手のひらで踊る道化にしか見えなかった。

だがここで下手に動けば、隠れている奴らが動き状況が悪い方向へ動くことを考えると天之川の行動はある意味正しい。

雫も正義感に酔う天之川を見た後、俺に視線を送る。

聡明な雫のことだ。今の状況を理解した上で、どう動くのかを俺に聞いているんだろう。

その問いに対して、俺は横に首を振った。

流石の俺も少人数で40人以上の人物を守り切るのは不可能だ。

あれよあれよと言う間に他の者もほとんどの者が天之川の行動に賛同し、俺たちが戦争することが確定したのだった。

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