鬼神と戦った職人はどうやら異世界転移に巻き込まれるようです   作:両刃剣はロマン

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第4話

戦争への参加を確認した後、イシュタルの爺さんによって俺達は今いる聖教教会本部がある『神山』から麓にある『ハイリヒ王国』へと送られた。

理由としてはそこの王国で戦えるように鍛えろとの事だ。

まあ、その点に関しては戦闘に関して素人集団である時点で分かっていたことだ。

それよりも気になったのは、山から麓まで移動する際に爺さんが唱えた魔法の呪文だった。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」

 

その言葉によって魔法陣が輝き、麓まで床ごとゆっくりと下っていく。

クレアの言葉によれば今のは魔法らしい。

だが俺の知る呪文とは違う。

俺が知る呪文は魔女ごとに違った。

例えば初代鬼神を蘇らせた魔女メドゥーサなら『ネークスネーク コブラコブブラ』。

その手下だった魔女エルカなら『カエロッグフロエル ゲコエルフロッグ』と唱えていた。

さらに言えば爺さんの魂はごく一般的なモノ。

決して魔女のような魂をしていなかった。

 

「クレア、この世界は魔女じゃないのに魔法を使えるみたいだな」

「うーん、なーんか違うのよねぇ」

「違う?どういうことだ?」

「えっとまず私や魔女には本来呪文なんて意味がないのよ。アレは魔力を操作してより確実に魔法を発動させるための所謂ルーティン、だから一人ひとり呪文が違うのよ。それに対して今のは呪文自体に意味を成している。なんて言えば良いのかしら……そうよ言霊、日本の言霊ね。言葉自体が体内の魔力の在り方を決めている。だから直接魔力を操れなくても、魔法を行使できているのよ」

 

つまりアレか。

トータスでは魔法を使う者=魔女ではなく、魔法を使う者=魔力をもつ者っていうことか。

そう考えると、この世界が魔法によって発展したことにも納得できる。

そんな事を考えているうちに気づけば、眼下には山から突き出るように巨大な城がそびえ立つ。

さらにその城を中心に放射状に建築された城下町は、まさに小説などに出てくる王都の街並みそのものだった。

周囲はそんな壮観な景色に息を呑みこんだり、テンションを上げている。

俺も少なからずその景色を楽しむ中、ふと目にした南雲だけは何かを覚悟するような顔をしておりその姿はとても印象に残った。

 

 

 

 

 

 

 

王宮に到着すると、レッドカーペットの先にある玉座で初老の男が立って待っていた。

その隣には幾分か若い女性に14前後の女の子と10歳程度の男の子。

恐らく順に王、王妃、王女、王子なんだろう。

さらにレッドカーペットを挟むように、軍人や文官らしき人物たちが控えていた。

俺たちは玉座の前まで行くとそこで止められ、イシュタルの爺さんのみがさらに王の前へと進み出た。

爺さんが手を出せば、そこに王らしき人物が立膝をたてその手に触れない程度の口づけをする。

それは、王族よりも宗教……いや神か。

デスシティーとは国と街という単位や治め方に違いはあるが、デスシティーと同様に神を頂点とするものであると示していた。

 

その後イシュタルはそうそうに立ち去り、王たちの自己紹介がなされた。

爺さんの手に口づけをしていたのはやはり王様でエリヒド・S・B・ハイリヒと名乗り、王妃はルアリア、王子はランデルと自己紹介をしていく。

途中ランデルに関しては白崎に熱い視線をチラチラと向けており、その視線に気が付いた雫が悩みの種が増えそうねとため息を吐いていた。

 

「私はハイリヒ王国王女のリリアーナ・S・B・ハイリヒです。皆さんよろしくお願いします」

 

そう言って、ニコリと笑う王女に何人もの男たちが顔を赤らめていた。

その後は控えていた軍人や文官、その中でも高い地位にいるものが紹介されているが、なにやら視線を感じる。

その視線の先を見てみれば、先ほどたくさんの男を落とした王女だった。

 

――じーーー

 

俺と目が合うも、視線はそれるこなく見つめ返される。

なぜ俺を見ているんだ?

首を傾げ、周囲を確認したが特に何もない。

改めてもう一度王女を見れば、かわらずこちらを見てくる。

さらに言えば頬は赤みが増しており、よく見れば指をワキワキと握ったり開いたりしている。

まるで何かを抱きしめたいのを我慢しているようだ……うん?

視線を改めて見てみる。

その視線は俺を……いや僅かに俺の横をみていた。

 

「うにゃ?」

 

肩にはクレアが乗っている。

試しにクレアを抱いて左へ右へ上へ下へと移動させれば、王女の視線もまた左右上下へと移動していた。

王女は気づいてないが周囲はその姿を見て微笑ましい表情を浮かべており、その状況に思わず――プッと笑いが漏れてしまう。

 

「ッ‼~~~~~///」

 

王女はそれで俺や周囲の状況に気づき、顔を急速に赤らめて手で覆ってしまった。

 

「クックックッ」

「ちょっと何やってんのよジン。まだ紹介中なのよ」

「いや、雫みたいに可愛い物好きなんだなぁってな。ほれ」

 

そう言ってクレアを雫に渡せば、お説教モードの表情が一瞬でフニャっと頬を緩めてクレアを抱きしめるのでさらに笑いそうになるのを俺は噛みしめて押し殺すことになった。

 

 

 

軍人、文官の紹介が終わった後は晩餐会が開かれた。

出て来た料理は見た目は洋食に似ていたが、時たまピンクのソースや虹色の飲み物などちょっと食べるのに勇気がいるような物もあったが味は良かった。

その時王子は白崎に積極的に話しかけたり、王女は王女でクレアを膝にのせようとしたが俺の膝から動かないせいで、可愛らしく頬を膨らまして俺を睨んでくるなどの些細な事があった。

10歳の少年に嫉妬する大人げない17歳達やクレアにフラれた雫まで俺を睨んできたなどの出来事もあったが些細な事にしておきたい。

晩餐会が終わり解散となると各自に1室ずつ部屋を与えられそこで休息だった。

しかし俺は部屋には行かず、給仕の人に部屋の場所だけ教えてもらいクレアを連れて王城の中庭まで出ていた。

 

「ジン?いったいここでどうする気にゃ?」

「ん?ああ、念の為にキッドに繋がらないかなっておもってな」

 

近くにあった窓に近づき誰もいないことを確認したら、窓に向かって息を吐く。

今からするのは向こうでよく討伐報告をしていた時の方法だ。

死神様の部屋にある鏡は稀代の天才エイボンによる魔道具で、ある番号を鏡や窓に書けばその魔道具に映し出される所謂ビデオ通話みたいなものなのだ。

 

「えっと42-42-564っと」

 

息を吐いたことにより、白くなった窓にその番号を書く。

本来ならすぐにでも湖面のような波紋が映し出されるのだが、今回はやはり繋がらず窓ガラスのままだった。

 

「やっぱり無理だったにゃ」

「しゃあない。薄々分かってたことなんだ、日課の素振りでもして寝るか」

「はーいにゃ」

 

そう言ってクレアが、柄の両側に剣がある両刃剣へと変貌し、それをいつものように切り上げ、切り払いなど縦横無尽に振るう。

そのまま何も考えず、かつて教えられた型を繰り返していると真夜中のはずなのに人影がこちらへと近づいてきた。

 

「休まなくても大丈夫なの?」

「雫か。いつものことをやっていないと落ち着かなくてな」

 

そう言ってタオルを投げてきた雫が俺の横で座った為、俺もそれにならいその場に座る。

 

「……私がここに来た理由聞かないんだ」

「ぬいぐるみが無くて寝れないのか?」

「違うわよ‼なんでそうなるのよ‼」

「いや、毎年誕生日に要求してくるのがぬいぐるみ……からかって悪かったから睨まないでくれ」

「たくっ……ねえ、私達無事に帰れると思う」

 

その問いに俺は一瞬言葉が詰まった。

俺たちはこれから戦争を、それも多分最前線に配置されるはずだ。

そうなればいくら常人の何倍もの強さを持っていても無事に終われるはずはない。

誰かは手足を欠損させるかもしれない。

下手すれば、大多数いや全員この世界で死ぬかもしれない。

戦争……殺し合いをするというのはそういうのを覚悟しなければいけないのだ。

 

「……正直に言えば死者がでてもおかしくない状況だ」

「ッ‼やっぱり……ここに来たのはね、不安で眠れなかったの。人を殺すのも、知り合いが死ぬかもしれないって思うと怖くて、不安で……ジン、あなたは怖くないの?」

「俺だって怖い。何回も命のやり取りは経験してるがそれでも怖い」

 

初代鬼神と戦ったときもメドゥーサやアラクネなどの魔女と戦った時も、鬼神の卵である殺人鬼とかと戦った時でさえ死ぬかもしれないという恐怖は消えたことはなかった。

 

「でもな、それ以上に勇気が湧くんだよ。大切な人達を守りたいって」

 

俺は所詮人だ、天之川みたいに何もかも救うなんて傲慢な事は言えない。

救える者は限られてくる。

だがその救える者……救いたい者のためなら恐怖は乗り越えられるのだ。

 

「ジンは強いわね」

 

そういう雫の顔はまだ暗いままだった。

それを見て俺は改めて決意する。

 

「雫、俺を持ってみろ」

 

そう言って俺は自身の体を武器化させた。

雫の目の前には一振りの月に照らされ緋色に輝く刀が地面へと刺さっている。

雫が恐る恐る俺を手にもつ。

 

「……すごい。羽みたいにとても軽い」

「波長が合っている証拠だ。これで俺とお前は武器と職人の関係だ」

 

その状態から武器化を解くと俺は左手で雫の手をとる状態になった。

 

「俺はお前の刃だ。お前に来る害は全部叩き斬ってやる。頼りねえかもしれねえが、いつでも頼れ」

「……うん、ありがとう。じゃあ、さっそくお願いだけど」

 

そう言って雫がほほ笑むと俺の手を離しなぜか背中に回って、ぎゅっと顔をうずめてきた。

 

「おい汗くさいぞ」

「いいの。少しだけでいいからしばらくこのままでいさせて」

 

まあ、頼れって言ったのは俺だ、甘んじて受け入れるか。

俺は上を見上げ、背中に雫のぬくもりを感じながらトータスの夜空を眺めるのだった。

 

「だからクレアを放置してイチャイチャするにゃー‼」

「誰!?え、クレア!?どういうこと!?」

 

まあそれも銀髪猫耳美女になって飛びついてきたクレアによって、雫に説明する為に直に終わるのだが。

 

 

 

 

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