鬼神と戦った職人はどうやら異世界転移に巻き込まれるようです 作:両刃剣はロマン
「なあ、クレア。許してくれよ」
「フン!クレアに相談なしに勝手にやって!」
雫への説明が終わった後、早々に部屋へ戻り現在は朝日が昇ったばかりの早朝ともいえる時間だった。
これから訓練が始まる為クレアを連れて行ってるのだが、クレアは俺の癖ッ毛が強い黒髪の上でへそを曲げている。
あの晩クレアに相談なく、俺を雫に握らせたことが原因なのだ。
「本当に悪かった。つい雰囲気的と勢いで……痛ッ!クレア、爪を立てるのはやめてくれ!」
「フシャー‼」
どうやら、しばらくは許してもらえなさそうだ。
爪をたてられることに甘んじて受け入れ、集合場所である訓練所へ向かうと多くの人が既に集合していた。
「ふう、どうやら遅刻は免れたようだな」
「もうすぐ始まるようだけど……大丈夫なの?頭の猫スゴイ爪立ててるんだけど」
そう言って若干引き気味にこちらを見ていたのは、昨日転移する直前に雫に紹介されていた南雲だった。
「痛いけど、いろいろあって諦めたんだ。それよりもあの時自己紹介できなかったな。俺は真桐 刃。ジンとでも呼んでくれ。で上にしがみついているのはクレアだ」
「その色々がスゴく気になるんだけど……僕は南雲ハジメ。ハジメでいいよ、よろしくジン君」
そう言ってハンドシェイクをしていると、ふと周りにあの時のメンバーがいないことに気づく。
「なあハジメ。昨日みたいに白崎たちと一緒じゃないのか?」
「え?あ、うん。4人は前の方だよ」
ハジメの言葉に前の方を見れば、確かに雫も含めた4人が固まっていた。
雫を見てみれば、白崎にからかわれているのか若干顔を赤らめている。
「……とりあえず大丈夫そうだな」
「八重樫さんを探してたの?」
「いや、単に昨日みたいによくつるんでるのかと思って聞いただけだ。それよりハジメ、騎士団が来たみたいだぞ」
早朝訓練の教官に来たのは、まさかの騎士団長のメルド・ロギンスだった。
彼の説明によればこれからの俺達の訓練は全て彼が直々にみることになるらしい。
俺たちにばかり構っていていいのかと誰かが聞けば、団長曰く対外、対内的に『勇者一行』を半端なものに預けることができないからだということだ。
それによる弊害は全て副団長が背負うことになり、デスサイズになったソウルが書類仕事をサボってキャバクラに逃げたマカの父親の分までやっていた姿が重なり、まだ見ぬ副団長に俺は黙祷を捧げた。
そんな団長の指示によって、俺達はスマホほどの大きさで金属質なカードが全員に配られた。
表や裏を見ると魔法陣のような模様はあれど、どちらも何も書かれていない。
コレには今までへそを曲げていたクレアも興味を示し、頭の上からカードを眺めていた。
「よし、全員に受け取ったな? このプレートは『ステータスプレート』と呼ばれている。これは自分のステータスを数値化して表示される。またこれは最も信頼のある身分証明書でもあるからな。例え迷子になっても平気だが失くすなよ?」
団長がそう言って気楽な口調で説明してくれる。
彼は小さなことは気にしない性格らしく、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも俺たちに対して普通に接するように言っていた。
正直な話、宰相の人等が敬語で接してくるのだが、年上から敬語で接せられる事がなかったため居心地があまり良くなかったからこの対応には助かっていた。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それでそのプレートに所持者が登録される。 『ステータスオープン』と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん専門外で知らないからな。俺から言えるのは神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
その聞きなれない単語に天之川が聞き返す。
「アーティファクトっていうのは、現代では再現不可能な魔法の道具のことだ。専門家の話では神や眷族が地上にいた時代のしろもんらしい。あとコレと複製するアーティファクトは一般市民にも普及しているが、他のは国宝になるな」
つまり、俺たちの世界だとエイボンの魔道具みたいなやつだな。
団長の説明が終わり、さっそく周りはステータスプレートに血をつけている。
俺も周りに続き、自身の血をステータスプレートに言って一滴気落としてみた。
真桐 刃 17歳 男 レベル:☆☆
天職 魔両刃剣職人・魔刀・死神の使徒
筋力:B
体力:A
耐性:B
敏捷:A
魔力:E
魔耐:D
技能:両刃剣術・魔武器化・魂感知・魂喰い・言語理解・狂気[+力]
「全員終わったか?なら説明するぞ?まず最初に〝レベル〟からだな。それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
「は?」
そう言われ、俺は思わず呆けた声が出た。
それはそうだ、メルド団長の話とプレートの表記がまるっきり違う。
レベルは星で表記され、ステータスも数値ではなくアルファベット表記なのだ。
「ジンのステータスどこかで見たことあるにゃ……どこだったかにゃあ?」
そんなことを言うクレアやステータスについての説明をするメルド団長の言葉を聞き流し、隣にいたハジメのステータスを見せてもらった。
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
「やっぱり俺だけだよなぁ……」
「どうしたの?何か変なのでも表示されたの?」
そう言って心配するハジメに俺のステータスを見せる。
「え?バグ?」
「あーーーー!分かったにゃ!」
突如、頭の上でクレアが叫ぶ。
それによってハジメが「猫が喋った!?」と驚くが、そういう猫なんだと言って流す。
「クレア、何が分かった?」
「このステータス、体力テストの成績にゃ!」
なん……だと。
確かに死武専では任務を受けるさいに、受付が適しているか判断するために体力テストから身体能力をE~S表記で表記していたが……
改めてステータスを見てみる。
確かに言われてみれば、筋力から敏捷までの表記は体力テストの結果と同じだった。
魔力、魔耐に関しては俺は魔法を使えないし、魔法を使う相手もそれほど経験はない。
その事を考えるとこの評価には納得できる。
「あとはレベルの星か。ん?星?、そうか職人ランク!」
俺は死武専若手精鋭部隊に所属のさいに職人ランクが二つ星へと昇格していた……って。
「あっちと変わんねーじゃねーか‼」
思わず俺はステータスプレートをべチンと地面に叩きつけた。
何が『
ただ単にあっちでの身体能力をデータ化しただけだろ!!
思わずその事に対して叫ぶと、さすがに騒ぎすぎたのかメルド団長等がこちらへとやってきた。
「おいおい、何を騒いでいる。ん?おい、ちょっと詳しく見せろ」
そう言って俺のプレートを見るメルド団長の顔は険しくなっていく。
そして「ちょっとこっちに来い」と訓練所の外へと連れ出された。
「ジン、率直に聞く。『死神の使徒』なんてお前、なにもんだ?人間……なんだよな?」
メイド団長は警戒しており、いつでも切れるように剣に手をかけてた。
俺の事に関しては、他の奴とは経歴が違うがそれを特に隠すつもりはなかった。
そのため俺はメルド団長に俺の経歴――死武専の事などについて掻い摘んで話す。
全てを聞いた団長は、目を瞑り1度大きなため息を吐いていた。
「鬼神の卵である悪人を狩っていたねぇ……お前さん等の世界は平和じゃなかったのかよ」
「それは一部だけですよ。俺なんてつい最近まで魔女や聖職者とかと殺し合ってましたし」
「……はぁ、お前の事は分かった。だが教会の奴らにはその天職は見せるなよ。下手したら異端者として認定されるからな」
そう言って、メルド団長がステータスプレートを返してくれる。
その際にステータスの隠蔽方法を教わり、『死神の使徒』とステータスの数値を隠蔽させる。
「……団長も信者なんじゃないんですか?」
「ああ、俺は確かに聖教の信者だ。だが別に、俺はおまえさんらにまでエヒト様を信仰しろなんて言わんさ。それにお前さん以外も違う神を信仰している奴もいるだろ?」
「ありがとうございます。あ、そうだ。団長、ステータスプレートをもう一つくれませんか?」
「あ?確かにプレートはまだあるが、何に使うつもりだ?」
「頭の上に乗っている相棒に使うんです」
「猫に使うって、おいおいお前さ……ん!?」
団長が呆れたような表情をしたため、クレアが人間の状態へと変わる。
クレアの姿は銀髪ロングのストレートに胸、尻など出るとこは出て、ウエストはキュッと引き締まっている。
まさにモデルさながらの体型をしており、顔に関してもハッキリと言えばものすごい美人だ。
そんなパンツスーツを着る妖艶の猫耳美女に彼は言葉が出なかったようで固まっていた。
「この姿では初めまして。ジンの相棒のクレアよ。一応この姿でも活動するかもしれないから、私にもプレートをくださいな団長」
「あ、ああ。驚いた、まさかただの猫だと思っていたのが亜人だったなんてな」
そう言って渡されたステータスプレートにクレアが血を垂らす。
クレア 323歳 女 レベル:☆☆
天職 魔両刃剣・死神の使徒
筋力:C
体力:D
耐性:B
敏捷:A
魔力:A
魔耐:A
技能:全属性適性・複合魔法・想像構成・魔力操作・魔武器化・魂喰い・魂魄蓄積・言語理解・狂気[+知恵]
「こっちの亜人と違って、私は魔法を使える猫ってだけなんだけどね。それにしても血から何を読み込んで表示させているのかしらコレ?」
「さあな。やっぱり『死神の使徒』はクレアにもでてるな。条件は死武専所属か?」
「まだ南雲君しか見てないから確証はないけど、それくらいしか今は思いつかないわね」
ふとメルド団長を見れば、クレアのステータスを見て二度目の硬直をしていた。
恐らくクレアが亜人そっくりな外見なのに亜人が操れない魔力を操作できるからだろう。
「ほら団長。いつまでも固まってないで他の人の所へ戻らないと訓練する時間無くなっちゃうわよ」
そう言って再び猫に戻ったクレアが俺の頭の上に乗る。
「今なら、勇者が初期ステータス1000でも驚かない自信があるぞ……」
そう言って疲れたようにメルド団長は再び深いため息をつくのだった。
団長と共に訓練所へ戻ってみれば、なにやら一部が騒がしくしている。
その中心を見てみるとハジメが苦笑いし、その周りにいる4人がプレートを見て馬鹿笑いしていた。
「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」
「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
どうやらハジメのステータスを見てバカにしているようだった。
「団長、錬成師でステータスオール10って低いんですか?」
「勇者たちにしてみればの話だがな。この世界のレベル1の平均が10だ。あとは錬成師は物質を加工して変化させる天職だな。言ってしまえば鍛冶師だ」
「ふーん、そうなんですか」
そう言って俺はバカ騒ぎしている集団に近付く。
「なあ、何がそんなに面白いんだ?」
「あぁ!?なんだてめぇ?」
「まずは自己紹介を。アメリカのデスシティーからやってきたジンだ。声をかけたのは、たかが数字が少し大きいだけで同じ素人が何を笑ってんだろうなって思ってな。こういう必死に優劣をつけようってすること、確か日本ではドングリの背比べって言うんだろ?」
俺が小ばかにするように言えば、小物臭を感じさせる男子たちがこちらへと詰め寄り俺の胸倉をつかんでくる。
ハジメをみれば、この展開についていけてなのかポカンと口をあけていた。
「お前……殴られたいみてぇだな」
「ホントの事を言っただけだが?」
そう言って俺が殺気を出せば、胸倉をつかんでた奴はそれを感じとれたんだろう体が震えはじめていた。
「所詮は初期ステータスだろ?大器晩成型の可能性もあるのに今バカにしてたら恥かくかもしれないぜ」
ガクガクと首を縦にふる目の前のやつからプレートを取ってハジメに渡す。
「ほれハジメ」
「あ、ありがとうジン君」
「気にすんな。アイツにも言ったが、ステータスなんてこれからどうなるか分からないし、その技能も使い方しだいで面白しろくなりそうじゃん」
そう言っていると畑山先生もこちらへやってきて、自身のステータスを見せてハジメを励ましていた。
……励ましていたのだが
畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
ハジメと違い魔力の多さや技能の量によって、ものの見事にトドメの一撃をハジメに与えていた。
その状況に雫や白崎もやってきており、俺も話そうとすると誰かが俺の腕をつかむ。
その人物は先ほどハジメにトドメをさしていた畑山先生だった。
「どうしたんですか、畑山先生?」
「真桐君、いくら檜山君達が悪くてもやりすぎです‼」
「いや、でも」
「でもではありません‼いいですか、あなたがやったことは…………」
その後も説教は続いた。
結論から言うと、それは各自の武器を見繕うために宝物庫へと向かうまで畑山先生によるありがたい説教は続くのだった。
ある日の出来事
ハジメ:(いっそ旅に出たいなぁ……亜人の国なんかみたいかも。ケモミミを見ずして異世界に来たって言えないし、とりあえず図書館で亜人の国の場所調べてみよ)
――ガラッ
クレア(銀髪猫耳モード+伊達メガネ):「…………」ペラッペラッ
ハジメ:「……なんでやねん」
クレア:「あら?ちょうどよかったわ南雲君。錬成について少しお話しない?」
ハジメ「なんでやねん」