鬼神と戦った職人はどうやら異世界転移に巻き込まれるようです   作:両刃剣はロマン

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すいません、間違えて作成途中のものを投稿してしまい、再投稿させていただきました。


感想の返信はまだですが、毎回参考になるような考察ありがとうございます


第7話

移動するのに一日を費やしオルクス大迷宮の近場にある宿場町『ホルアド』で一泊後、俺達は迷宮へ挑戦するために入り口の正面前に来ていた。

各々は既に武装しており、俺も服装はこっちに来た時に来ていたジーパンにシャツを着てクレアを武器化させている。言ってしまえば死武専での恰好そのままだ。

 

「ねえジン。貴方ホントに防具を付けない気なの?」

「ああ、むしろ動きの邪魔になるんだ」

 

そういう雫の恰好は胸当てと利き腕とは反対側だけに小手を装備した格好をしていた。

雫のステータスは敏捷特化で全体的に見れば天之川に次ぐステである。

天職は剣士……そして魔刀職人だった。

本来は前者だけだったのだろうが、あの日俺を握ったことが要因なのか、俺やクレア以外だと初めて見る二つ目の天職を雫は持っていた。

技能に関してはそれに関連するように『魂威術』が出ていたが、まだブラック★スターやシュタイン博士みたいな事ができるほどのモノではなかった。

 

「あと昨日の約束、忘れてないわよね」

「わかっている。折り返しには武器になるから最初はそれで我慢しとけ」

 

そう言って俺は雫が帯剣している曲剣を指さす。

 

「刀に一番似ているから選んだけど、抜刀とかに違和感あるのよね」

「だからって俺が常に武器になってるのは無理だ、慣れろ。ほらそろそろ時間だぞ」

 

見れば騎士団の面々も既に集まっている。

 

「これから、迷宮に入る!良いかお前ら、この中は罠が沢山ある。中には発動しただけで死ぬものもある。死にたくなければ俺の指示に絶対下掛け‼いいな!」

 

全員が集まったのを確認したメルド団長の指示のもと、迷宮探索が始まろうとしていた。

と言ってもいきなり迷宮に潜るのではなく、受付に順にステータスプレートを見せて行くのだが。

これはステータスプレートの出入りによって、迷宮内の死亡者数の確認をしているらしい。

 

「ではステータスプレートを確認しますね。あれ?二枚ですか?」

「ああ、このアーティファクトの分もあるんだ」

「よろしくにゃ」

 

魔武器である俺やクレアみたいな存在はこちらではいないらしく、表向きでは武器化するさいは自我がある珍しいアーティファクトだという設定になってしまった。

最初は大丈夫なのかとも思ったのだが、さすが神代に作られたと言われているアーティファクト。

そう言えば誰も疑わなかったのだ。

 

「そうなんですか、さすが勇者様一行ですね。珍しいアーティファクトもお持ちなんてスゴイです」

 

現に今も受付嬢は疑問も浮かべず、すんなりと信じてくれた。

いったいどんなモノならアーティファクトって言われて怪しむのだろうか?

ステータスプレートを受け取りながらそんなどうでもいい事を俺は考えるのだった。

 

 

 

 

迷宮に入っての配置は、天之川や雫など素質が高いものは一番前に、逆に素質が無い物は一番奥に配置され騎士団が先頭と殿をするような陣形になる。

俺は、新兵以上の実力があり実践も経験済みなことから騎士団同様に殿をメルド団長に任されていた。

一番後ろにいたのは、ここ二週間もっとも交流が深かったハジメだった為、声をかける。

 

「頑張ろうなハジメ」

「あはは、僕も足を引っ張らないようにがんばるよ」

 

そんな感じで始まった迷宮攻略だったが、最初の方はまさにオーバーキルだった。

 

「あー勇者組にこの階の雑魚は弱すぎるな……魔石までボロボロだ」

 

団長の言う通り、一桁の階層で白崎や谷口などの術師が唱えた後、残っているのは魂以外は煤だけしか残らなかった。

団長はそう言ってため息をついていたが、俺は第三者という傍観者のおかげで分かったことがある。

この迷宮で魂感知をすると、魔物の魂が鬼神の卵と同質の魂をだったのだ。

考えてみれば、どちらも秩序において絶対的な悪なため同質なのは当たり前の話だったのだが。

ただ質に関しては今いる上層ではあちらで刈っていた悪人ほど良い魂ではない。

高く見積もっても、この魂が100個以上ないと釣り合わないほどその質は低かった。

 

『簡単にやられるぐらいだから、この質にゃのも納得だけど食べがいがにゃいにゃ』

 

クレアの言う通り、腹の足しにもなりそうになかった。

実際食べてみても、味のない飴玉みたいな……ただ口の水分だけ消えていくようなそんな感じだった。

 

ふと見れば、白崎が杖をもったままボーっとしている。

 

「白崎、大丈夫か?」

「え?あ……真桐君。うん、ちょっとね……魔法だったからあんまり実感はないんだけど、初めて生き物を殺したんだなって」

「そうか、初めてだったか」

 

やっぱり出たか。

俺以外は平和な日本の学生、人どころか虫以上に大きい生き物を殺したことが無い者が大半だろう。

大半の者は自身にとって既知の生物ではないからか、はたまた今だゲーム感覚なのか嬉々として魔物を斬ったり焼いたりとしている。

ただそのなかには、雫のように血が滴った剣を見る者、焼け焦げた魔物を見て口を抑え顔を青くする者もいた。

 

「気分が悪いとかはないか?」

「うん、それは大丈夫。ただなんだろう……胸に穴が開いたような、そんな違和感があるかな」

「……白崎、その罪悪感だけはなくすなよ」

「罪悪感?」

 

そう罪悪感だ。

例え殺す相手が悪であっても、この手でひとつの命を終らせることには変わらない。

それは本来なら人が嫌悪する行動のひとつであり、だからこそ罪悪感を感じる。

もしこの行為に喜びを見出したのなら……

 

「ああ、それは罪悪感だ。もしその感情が無くなれば、行きつく先は鬼神の卵と同様の血に塗れた人生だけだ」

 

俺の言葉に白崎は胸元をぎゅっと握りしめ、メルド団長に呼ばれ前行くハジメを見ていた。

 

「そう言えば、今日は一段とハジメを見ているな」

『もしかしてとうとう香織も告白したのかにゃ?』

「ち、違うよ!?そりゃできれば恋人に慣れたらってゴニョゴニョ。え、えっと、昨日南雲君と約束したから、私が守るって」

「それでずっと見てるのはどうかと思うがな……ん?」

 

白崎の行動に若干の呆れとハジメの受難に心の中で合掌をしていたが、ハジメが相手する魔物が視界に入り、俺も一番前へ行き一閃。

 

「ジン君?」

「おい、ジン。なぜトドメを刺した、これでは南雲の戦闘にならんだろ!」

 

魂感知をしてみると、すぐ曲がり角から一つの魂を感知する。

特に広くもない通路での戦闘、うん、ハジメならいけるだろう。

 

「団長、まあ見ていてください。ハジメ、次の角から同じのが一匹だ。やれるな?」

 

そういうとハジメは一度頷き、手を地面につける。

 

――錬成

 

ハジメがそう唱えると狭い通路の地面がボコボコと鋭く三角錐状に盛り上がっていく。

それと同時に曲がり角から4足歩行の魔物が現れ、ハジメを標的に駆けだした。

不規則にある盛り上がった地面を左右によけ、さらにハジメへ迫る。

 

 

それが罠だと分からずに。

 

 

『錬成師は鍛冶職?そう決めつけた奴はバカね。鉱石を操れるって時点で床が地面なら容易に戦闘に使えることぐらい理解しなさいよ』

 

クレアの言葉に重なるように突如地面がくぼみ、魔物が足を取られ倒れる。

 

――錬成

 

それに合わせ、さらにハジメが錬成を重ねる。

口に、首に、足が拘束される。

トドメとばかりに胴体も拘束された魔物は身じろぎひとつとれなかった。

そこをハジメがザシュッと肋骨の合間から心臓へ一突きし、魔物がビクリとはねた後ピクリとも動かなくなった。

 

「なるほど……魔物の動きを制限させて、落とし穴で拘束。錬成にこんな使い方があったなんて、面白い戦い方だな。どこまで吹き込んだジン」

「俺は、効率的な殺し方だけですよ」

 

ハジメのステータスの伸びはハッキリ言って悪かった。

それこそ、二週間そこらで筋力なんかは2しか上がっていない。

そこでハジメは確実に殺るために錬成で拘束してみてはどうかというのを、クレア(人間状態)に相談したのだ。

そこで出たのが、行動の制限。

周りに障害物を設置することによって、より拘束しやすい状況を作り出すことにしたのだ。

そして俺からは、最小の余力で殺す技術。

まあ言ってしまえば、どこにどの角度で刺せば一撃で殺せるかってことだ。

幸い、図書館で調べれば魔物の臓器はあちらの世界の動物とさほど変わらないものだったため、問題なく教えることができた。

 

「ハジメ、ナイスファイト」

 

俺はそう言って若干青い顔をするハジメの肩をたたく。

ハジメも喋るほどの余裕は無さそうだったが、頷いて後方へと下がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな調子でどんどん階層を降りていき、現在は20階層まで降りていた。

ここまで来れるものは一流の冒険者と判断される階らしく、今日の探索は21階層へ続く階段手前まで行くのが目的である。

 

「よし罠はないな。ジン、そろそろお前も戦闘に参加だ」

 

罠を見破るフェアスコープという道具で確認したメルド団長に呼ばれ、一番前に出る。

 

「ようやくか」

 

今までは殺しという行為に慣れるために、俺以外がずっと戦闘していたのだ。

さっそく魂感知をすると前方に3つ反応があった。

だが、その反応があったのは一見すればせり出した壁にしか見えない。

 

「擬態?」

「初見なのによく見破るな。ほら来るぞ」

 

その言葉の直後、3つのせり出した壁は変色し、褐色のゴリラになった。

 

「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」

 

メルド団長のその言葉に意識を切り替え、クレア――両刃剣を構える。

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

ロックマウントの雄たけびに周囲は怯むが、阿修羅の叫びに比べれば全然可愛い方だ。

 

『準備運動にまず一匹にゃ』

「おう」

 

一息に近付き、袈裟切りに両断する。

 

「そして二匹」

 

その勢いのまま遠心力を利用して、近くにいた一匹をひと突きで殺す。

そして残り一匹なのだが……

なぜかそのゴリラはこちらを、正確に言えば雫や白崎などを見ていた。

 

 

 

血走った目で。

 

 

そして鼻息もあらく、前に突き出した両手はワキワキと気味悪いぐらいに動かしている。

後方の女性陣からヒィッと引きつった悲鳴が漏れていた。

もしこのゴリラが喋るならきっとこう言っていただろう。

 

『ムフンムフン、ムフー』

 

って、いやこれはただ鼻息が荒いだけだな。

 

「なあ、あのゴリラ下心ありすぎじゃないか」

『デスシティーのお肉屋さんとお魚屋さんの二人を思い出すにゃ』

 

ああ、確かにあの二人もクレアを連れていた時のサービスはスゴかったが、下心満載だったもんなぁ。

こんなのは目に毒だとさっさと倒そうと思ったが、何故か後方から光がでていた。

振り返ると、そこには聖剣を構えた天之川(バカ)が詠唱をはじめていた。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

いや、許さないとかじゃなくて俺がいるのに何考えてんだアイツ!?

 

――万翔羽ばたき、天へと至れ

 

聖剣はいまにも光を放ちそうだ。

 

「クレア!」

『はいにゃ!』

 

俺の波長をクレアに送り、増幅させて俺へと戻される。

それを何度繰り返し、より強大な波長を産み出す。

武器と職人による大技を出すための技術『魂の共鳴』。

まさか、こんな場面で出すはめになるとは思わなかった。

 

――天翔閃

 

俺の共鳴技と天之川の聖剣が振り落とされるのはほぼ同時だった。

 

「このバカ者が!こんな洞窟で、まして前方に味方がいる状態でそんな大技放つヤツがどこにいる!」

「うぐっすいません。香織たちの事を考えたら、つい多めの魔力が……」

 

ゴチンと離れた所からでも聞えてくる拳骨をどうやら天之川はくらったようだ。

 

「ジン大丈夫!?」

「おう、雫。壁を破壊して難は逃れたわ」

 

心配してこちらへと来る雫に頭についた壁の破片を払いながら、ひらひらと手を振る。

 

「す、すまないジン」

「……俺だったから良いものの、他の奴だったら大けがだぞ」

 

すまなさそうに顔をして謝ってくる天之川に怒りが一周回って冷静になり、俺で良かったと思っていると白崎が俺が破壊した壁の上の方に視線を向けていた。

 

「何だろあれ?……キラキラしてる」

 

その言葉に全員が視線の先を見れば、青白く発光するこぶし大の水晶が壁に埋まっていた。

その幻想的な光に女子達はうっとりとした表情を見せていた。

 

「あれはグランツ鉱石だな。あの大きさはなかなかないぞ」

 

そのまま説明も聞けば、特に魔石てきな価値はないが貴婦人に人気があるらしく貴族が求婚するときに指輪などでよく使われるらしい。

 

『にゃふふふ。香織、南雲君を見ているにゃ』

「さっさと告ればいいのにな」

「それができていたら、香織も苦労してないわよ」

 

そう言って雫が子を見守るように白崎をみている。

 

「……やっぱりオカンだろ。痛ッ‼無言で蹴るなよ!」

 

全体的に弛緩した空気になる、メルド団長も撤収の声をかけていた。

 

「さて約束通り武器化するか」

「やっと刀を振れるのねって……何してるのよ」

 

雫が喜んだ矢先、目の前の状況に呆れる。

何を考えて……たぶん女子の誰かに渡したいのだろう檜山(バカ2号)が壁を上って、あの水晶を取ろうとしていたのだ。

 

「メルド団長も怒鳴ってるわね。罠、大丈夫かしら?」

「さすがにないだろ。壁の中にあったのに、罠なんて仕掛けても意味ないだろ?」

『ジン、それフラグにゃ』

 

クレアの言葉に笑おうとしたのだが、檜山が水晶に触れると俺達がいる地面に魔法陣が浮かび上がった。

 

……マジかよ。

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