が、彼女たちは武装しておらず、さらに日本語がネイティブになっていたのだ。
そして、彼女は悲しき過去を静かに語り始める。
13:00 昼食を終え、休憩時間は残り30分。多くのメンバーがのんびりとした時間を過ごす中、突如鎮守府内に警報が鳴り響く。
「敵襲か!?場所はどこだ!?」
「鎮守府近海です!!」
「レーダーに引っかからない新個体なのか!?」
いつも冷静な提督が珍しく焦っている。それだけ緊急事態ということだ。
「鎮守府近海まで侵入なんて何年ぶりかしら」
艤装を身につけた加賀がモニターを見上げてそう呟く。
なぜこんなに焦っているのか。
レーダーに引っかからないということや、鎮守府近海への侵入ということもあるが、1番はやはり、深海棲艦の侵攻ということだろう。この世界では、2015年からの4年間、深海棲艦は海に一切姿を見せなかった。
このことから、実情上戦争は終結し、艦娘達は税金泥棒と罵られながらも海をパトロールしていた。
「加賀、瑞鶴、山風!お前らは先導部隊として時間を稼いでくれ。準備ができ次第金剛達を向かわせる。それまで何とか持ちこたえてくれ」
「「「了解!」」」
3人が出撃し少し経ってから、モニターに偵察機の映像が映し出される。敵は戦艦ル級が1隻、空母ヲ級が2隻、重巡リ級が1隻の合計4隻らしい。
「提督、どうしますか?」
無線機で加賀が指示を求めてくる。ここから敵までは約1キロほどあり、目視でも姿が確認できる。
先手を打ったのは深海側だった。ヲ級から放たれた艦載機はこちらに向かって一直線に近づいてくる。
「ッまずい!散開するんだ!」
3人はそれぞれ別方向へと散らばる。そして敵機から魚雷・・・ではなくプラスチックの筒のようなものが落とされた。
これには皆が唖然となった。その間にも深海棲艦はこちらへ肉薄してくる。が、しかし、一向に攻撃してくる気配はない。
「なぁ、あの筒急に爆発したりしないよな?」
「熱反応とかはないですね・・・」
提督の疑問に瑞鶴が答える。
「なら拾ってみてくれ」
筒を拾い上げ中身を確認すると、1枚の紙が入っていた。
『御機嫌よう 艦娘諸君。久々の逢瀬の感想は如何かな?
・・・小難しい?いやーめんごめんご、ちょっとテンションがわからなくて。手短にいうと
戦争を再開しようと思う。だけど武力は一切使わない
言うならば平和な戦争だ。具体的には』
「なんて書いてあるんだ?」
「戦争はするけど武力は使わないらしいです・・・」
「意味がわからんぞ。だいたい、どうやって・・・」
「それは今から我々が説明しようではないか」
振り返ると深海所属の方々がいた。というか、こいつらこんなに日本語ペラペラだったっけ・・・
「艦娘の皆さんお久しぶり。げんきだった?」
深海棲艦がこんなに流暢に話したことは、データにはない。どうすればいいものか悩んでいると、少し離れた場所から声がした。
「瑞鶴から離れて・・・!」
声の方向に顔を向けると、単装砲を構えた山風と警戒態勢の加賀さんがいた。
「あはは・・・戦う気はさらさらないんだけどなぁ」
戦艦ル級が苦笑しながら頰をかく。その動きは、まるで人間のようだった。
―戦う気はさらさらないーその言葉は本当らしく、ヲ級以外は艤装?をつけていない。
「とりあえず私の話を聞いてほしいな」ル級は2人に語りかける。
その様子にいつもと違うと感じたのか、警戒態勢を解いた。その様子を見て、ル級はこれまでの事を語り始めた。
2015年、深海棲艦に1つの転機が訪れる。人間との出会い、そして別れ。
その男は、ただの海が好きな一般人だった。その日までは。
いつも通りに海を眺めていた男は、いつも通りではないあるものを発見した。
海に浮かぶ人間のような黒い物体。それは戦い敗れた戦艦ル級だった。
「オノレ・・・」
体力も底をつき、あと数分で海に浮かぶゴミ同然になるだろう。それは覆しようのない事実だ。
死んでいった他の仲間たちもこうだったのだろうか。冷たい海は何も答えてくれやしない。
目を閉じて、覚悟を決める。やがて意識は、海の中へと溶けていく。
どのくらい時間がたっただろうか。いや、というよりなぜ私は生きているのか。
体中が痛い。
唯一動かせる顔であたりを見回すと、岩でできた洞窟のような場所にいるということが分かった。焚火を焚いているのだろうか、淡いオレンジ色がほのかにあたりを照らしている。
「あ、気が付いたんですね。よかった」
本を読んでいた男が視線をこちらへ向けて微笑む。私はこんな表情は知らない。私が知っているのは憎しみとか、苦しいとか、負の感情だけだ。
「オマエハ・・・」
「僕は中山です。下の名は雄介だけど、皆僕のことを名前では呼びません」
「ナカヤマ・・・」
聞きたいことはたくさんあったが、眠気には抗うことができなかった。瞼を閉じて、再び暗闇の中に身を置く。やがて意識は遠のき、完全に眠りに落ちた。
再び目を覚ますと、私の体には毛布のようなものがかけられていた。体も上半身を起こせるぐらいには回復していた。
「ナカヤマ・・・?」
洞窟の中を見回すが、見当たらなかった。
まぁ、そんなことはどうでもいい。早く仲間のもとに戻らなければ。鉛のように重い足を何とか奮い立たせ、立ち上がる。右足の骨は折れているだろう。それでも、私は海へ戻らなければいけない。
あそこにしか、私の生きる場所はないのだから。足がもつれ、倒れこむ。関係ない、這ってでも海へ・・・
「ただいま戻りました・・・って、何やってるんですか!まだ寝てないと・・・」
ナカヤマが洞窟に戻ってくるなり私のもとに駆け寄って来る。
「ジャマヲ・・・スルナァ!!」
その手を払いのけ、前に進もうとしていると急に体が宙に浮いた。
「ハナセ!」
「絶対放しません!」
お姫様抱っこのような体勢で先ほどまで寝ていた場所に戻される。
抵抗しようにも力が入らないんじゃどうしようもない。
「怪我が治るまではここにいてもらいます!」
そう言うナカヤマに、私はなぜか素直に頷いてしまった。
どうせ出られないのだ、今いろいろ聞いておこう。
「ナゼ・・・タスケタ?」
「僕、医者だから。怪我人を無視できないだけです」
「デモ・・・ワタシハ・・・」
「深海棲艦だとしても、目の前の怪我人を無視はできません」
なんという甘さだろう。敵に対し、殺さぬどころか治療など。
特に見返りもなく、私が完治すれば殺される危険だってあるのに。
こんな奴らと何十年も戦い続けていたのか・・・よくよく考えてみると、私はこいつらのことは何も知らない。
もっと言えば、私自身もなぜ自分が戦っているのかすらわかっていない。生まれた時から戦うことしかできなかったし、そうせざるを得なかった。
丁度いい機会だし、しばらく人間観察でもしてみようか。
そして、私の中に現れた今までなかった感情、ナカヤマを見ると変な感じがする。
この謎も解き明かさなければならない。そう思いながらナカヤマのほうに視線をやると、こちらに微笑みを向けてきた。
これを見ると胸が苦しいのだ。思わずそっぽを向く。こうして、私とナカヤマの奇妙な生活が始まったのだ。
2話でいきなり過去編に突入しました。ル級はイケメンお姉さんって感じでいいですよね。
一番好きなのはタ級なんですけど。
さて、今回は深海棲艦が出てきました。1話であれだけ出てないって言ってたのにいきなり出ましたね。
果たしてどうなる第3話。1月31日投稿予定です。