ハイスクールⅮ×Ⅾとメガテンのクロス。
この駒王学園の廊下にコツコツと数人分の足音が響く。それは、俺と俺の目の前を歩く教師、そして俺の隣を歩く金髪少女のものだった。
「やっと・・・やっと皆さんと再会できますね」
「あぁ、そのためにここへ来たんだ。皆元気にしてるかな?」
俺と金髪少女はこの時を待ち続けたといわんばかりの笑顔で嬉しそうに話す。
とある事情でこの学園の二年に転校生という形で通うことになり、俺達は教師に先導されながら自分達のクラスに向かっていた。
その途中で今までのことを思い返す。
『君、帰れないの? なら私の所に来ない?』
もう十年以上前。突如現れた姿も声も似ている謎の人物に居場所を奪われ、泣きながらあてもなく暗闇を彷徨っていた時、人の身でありながら神でさえも従わせる規格外の人間・・・後に俺の師匠になる女性と出会った。
『この子もあなたと同じように帰る所がなくてね。今は私達の拠点で一緒に暮らしているの。きっと仲良くなれると思うわ。 ほら、ご挨拶』
『ア、アーシア・アルジェントといいます!よろしくお願いしまひゅ・・・はぅ~///』
女性が暮らしているという拠点なる場所で、俺と同じく帰る場所がなかった金髪少女・・・現在俺の隣にいる【相棒】と出会った。
『あなたが私を呼んだのね。さぁ、願いは何?』
師匠と同じデビルサマナーになり、それなりに実力を付けて師匠が「そろそろ一誠にも仲魔が欲しいわね」と呟き、仲魔を求めてとある街を歩いていた時、通行人に『あなたの願いを叶えます』と書かれた紙を配っている真紅の髪の少女に出会った。
『私とあなた達だけじゃ厳しくなってきたから、手を貸してもらおうと思って連れて来たわ』
『リアスから事情は聞いています。リアスの女王である姫島朱乃です。うふふ、よろしくお願いしますわサマナーさん』
『僕は騎士の木場裕斗。よろしく頼むよ』
『・・・戦車の登城小猫です。コンゴトモヨロシク(何かこのセリフを言わなきゃいけないような気がしたから言いましたが何故でしょうか?)』
前に進むたびに敵が強くなり、流石に俺とアーシアと仲魔となったリアスの三人だけじゃ厳しさを感じ始めた時、リアスが連れて来たリアスの眷属達と出会った。
『イッセーさん、諦めないでください!何があっても・・・私が傍にいますから!!』
『忌々しいあの男から受け継いだ力なんて使いたくなかった。でもこの身をもって思い知りましたわ。私が甘かったです!あの時この力を使っていればとここまで後悔することになるなんて思いませんでしたわ!』
『僕は復讐のために生きていたんだ。君の仲魔になったのも・・・部長のためでもあるけど、やっぱり復讐のための力をつけることが目的だったんじゃないかと聞かれれば否定しきれない。部長から君の仲魔になることを聞かされた時は好都合とすら思っていたんだ。君の仲魔になって力をつければ復讐に近づけるって』
『今まで隠していてごめんなさい。でも、この力を使うのは怖いんです。姉様のように力に溺れちゃうんじゃないかって・・・誰かを殺してしまうんじゃないかって。わかってるんです、そんなこと言ってる場合じゃないってことは!でも・・・それでも・・・怖いんです』
『私が甘かったわ。今更だけどようやく気付けたの。私はまだまだ王として未熟だった・・・このままじゃ駄目なんだって‼』
デビルサマナーならぬダークサマナーやファントムサマナー、そんなサマナーが従える仲魔達に完敗した挙句、決して他人ではなかった同じデビルサマナーや友人を殺され、心が折れかけたこともあった。
『私決めましたわ!この力を使います!受け入れて前に進みます!だからイッセー君、見ていてください!』
『この復讐心は聖剣にぶつけなければ晴れることはないだろう。でも今は・・・今だけは君のために剣を振るうことを誓うよ!』
『見守ってください。傍にいてください。あなたがいれば頑張れるような気がするんです』
『私は変わる!強くなるわ!グレモリーとして!あの子達の王として!そしてあなたの仲魔として!』
それでも折れずに立ち上がって、各々の力を受け入れて、己を高めた。
『皆頑張ってるのに、僕だけが役立たずなんて嫌なんです! 僕も頑張りますから・・・もう逃げませんから・・・だから・・・僕を仲魔にしてください!』
ハーフであるが故に迫害され、自身に宿った力を恐れて自ら引きこもっていた吸血鬼も
『あなたのお陰でまた白音と一緒に暮らせる、あの子の姉でいられる。本当にありがとうイッセー。もしよければ、私も仲魔にしてくれないかな?恩返しがしたいにゃん♪』
愛する妹のために自ら罪を犯した黒猫も仲魔に加わった。
時には異世界に飛ばされたり、時には過去や未来にタイムスリップしたり、時には神や神すら超越する存在と遭遇したこともあったが、冷静に対処し、相手が下級の存在でも油断なく対応した。
互いに助け合い、互いに高めあい、共に前に進んだ仲魔達。
その仲魔達と今日・・・再会する。
「ここがお前たちの教室だ。少し待っててくれ」
「「はい」」
どうやらついたようだ。
教師が教室に入り、俺と相棒は呼ばれるまで壁にもたれかかって待つ。
中から お前ら席に就けー という声が聞こえると、少し騒がしかった教室の中が静まり返るが、転校生が加わると言うと再び騒がしくなる。
女子からの「男子ですか?」 男子からの「女子ですか?」と少し期待しているような声が聞こえる。
教師が男子一人女子一人だと答えるとさらに騒がしくなった。
「入ってきてくれ」
俺と相棒は中に入り、黒板の前に立って自分の名前をチョークで書き込む。振り返り、今日からクラスメイトになる生徒達を見回し、自己紹介した。
「今日からこの学園の生徒になります。■●一誠です。今後ともよろしくお願いします。」
「アーシア・アルジェントです。同じく、今後ともよろしくお願いします。」
自己紹介を終えると教室に拍手が響く。
先生に席を教えてもらい、俺はとある生徒の隣、相棒はその俺の隣の席に座る。
席に着くと、俺は隣の生徒に話しかける。
「久しぶりだな」
「あぁ、二年ぶりか」
特に表情を変えないまま呟くように言う隣の生徒。
その生徒の名は間薙(かんなぎ)シン。
仲魔ではないが、俺の友の一人であった。
♦
昼休み、俺と相棒とシンは弁当箱を持ってとある場所へ向かっていた。
朝は転校生というだけで余程興味を持たれていたのか質問攻めにあった。正直に言えないところは何とか誤魔化していたのだが、シンと友であるということはかなり驚かれた。どうやらシンは学校では・・・言い方は悪いがかなり浮いているらしい。まぁ、シンが抱えてる事情と本人の性格からしてそうなんじゃないかとは思っていたために特に驚くことはなく、寧ろ納得してしまった。
「なぁシン、何かあったのか?」
そんなシンは現在俺たちと一緒に弁当箱を持ってそのとある場所に向かっているのだが、そのシンの様子が少しおかしいような気がするのだ。
気がする・・・というのは、いつも無表情だから何となくでしか分からないというか何というか・・・。
「何処か疲れているように見えるのですが・・・」
少しだけではあるが分かっている相棒に尊敬の念を抱くというか・・・。
「ピクシーの機嫌を損ねてしまってな」
「あぁー・・・」
「あぁー・・・」
俺と相棒は気まずそうに目を逸らす。
シンはデビルサマナーではないが、俺と同じように仲魔がいるのだ。その身に悪魔の力を宿した人間・・・半人半魔であり、悪魔と人間の間に生まれたというわけではないが、そこは割愛する。
俺と相棒の脳裏に映るのは、シンの最初の仲魔であり、人修羅(シン)の嫁を自称する青いレオタードを着た身長十数センチしかない小さな妖精だった。
普通ならそんな小さな妖精等恐れるに値しないと思うだろうが、侮ってはならない。何故なら、彼女は妖精でありながら神の炎すら操り、神すら超越している俺の仲魔達を超えるほどの力を持つのだ。
神を「メギドラオ~ン」と何処かの魔法少女ならぬ魔王少女のように可愛らしく発言しながら、しかし平然と消し去っていく様を仲魔達と共に文字通り( ゚д゚)ポカーンとしながら見ていたのはあまりにインパクトが強すぎて忘れたくても忘れられないだろう。
しかも彼女の性格は妖精らしく子供っぽく我儘なのだ。故に一度機嫌を損ねれば暫くは直らないし、最悪無差別に暴れだしてしまう。小さな妖精が暴れる・・・字面的に可愛らしく聞こえるだろうが、彼女の実力を知っているものからすれば洒落にならない。最悪世界が消える・・・・・いやマジで。
今頃、同じくシンの仲魔であるヒーホーと鳴く雪ダルマや、あらゆる防御を貫く一つ目像はさぞかし苦労していることだろう。・・・いや、ヒーホーはピクシーと同じく妖精だから彼女の勢いに便乗している可能性が微レ存?
まぁ、ともかく、そんな彼女の機嫌を損ねたとなれば・・・
「ご愁傷様」
「ご愁傷様です」
すまん、シン。これしか言えない。
いくら俺達でも彼女を力づくで止めるのは無理がある。
何とかご機嫌を取ってくれ。
「・・・着いたぞ」
シンの呟きに俺と相棒の中の哀れむ気持ちが一瞬で消える。
俺たちの目の前にあるのは、俺たちが向かっていた旧校舎の扉であった。
ここに向かっていたのは、かつての仲魔達から昼にここで会おうと約束していたからだ。
俺と相棒の中が緊張感で満たされる。
深呼吸し、落ち着いてからオカルト研究部と書かれた名札が付けられている扉をノックする。
「入ってちょうだい」
聞こえた。
懐かしい声が。
シンにとってのピクシーのように、俺にとっての最初の仲魔の声が。
ゆっくりと扉を開け、俺、相棒、そしてシンの順に中に入り、最後に入ったシンが扉を閉める。
俺の視界に映るのは、俺達と同じ制服を着た六人の生徒達。
「イッセ・・・へぶ⁉」
俺を見るなり笑顔で両手を広げながら跳びかかってきた・・・かと思いきや勢い良く床とキスする黒髪で黒い猫耳と二本の尻尾を生やした女子生徒。
名を、塔城 黒歌
「抜け駆けは許しませんよ姉様?」
床に転がっている女子生徒の足を掴んだまま少し呆れるような視線を向ける白髪で白い猫耳と一本の尻尾を生やした・・・姉様と呼ばれた女子生徒と対照的に見える小柄な女子生徒。
名を、塔城 白音
「うぅぅ・・・イッセさぁん、アーシアさぁん・・・会いたかったよぉ・・・」
俺達を見て・・・嬉し泣きしてくれているのだろう。昔と変わらず段ボールに入って泣いている金髪の女装した男の娘男子生徒。
名を、ギャスパー・ヴラディ
「帰って来たんだね。イッセー君、アーシアさん」
正にイケメンと言える顔立ちで懐かしむように、そして再会を喜ぶように言いながら嬉しそうに笑う金髪の男子生徒。
名を、木場 裕斗
「ずっと・・・ずっと待っていましたわ。あなたと再会できるこの時を」
黒髪を後ろに一本に束ね色気を感じさせる容姿を持ち、母性を感じさせる笑顔で愛した人を待ち続けたように語る女子生徒。
名を、姫島 朱乃
そして・・・
一番奥の席に座っていた女子生徒と目が合う。
真紅の髪を持った女子生徒は代表者のように立ち上がる。
その目からは今にも涙が流れそうで・・・しかし笑った。
俺の・・・最初の仲魔。
「お帰りなさい。イッセー。アーシア」
彼女の名は、リアス・グレモリー
魔獣 黒歌
魔獣 白音
幽鬼 ギャスパー
英傑 裕斗
堕天使 朱乃
夜魔 リアス
俺は今ここに、仲魔達との再会を果たした。