私に勇気を下さい   作:小将

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プロローグ

「夕祈〜起きなさーい」

 

微睡む意識の中、母の声が聞こえる。聞こえはするがこの眠気の誘惑には抗えそうにない、ということでもう少し、惰眠を貪るとしよう。

 

「夕祈、母さんが呼んでいるわよ、二度寝なんてしてないで起きなさい」

 

紗夜お姉ちゃんの声がする、いつの間に私の部屋に入ったんだか、既に私の布団の目の前で立っているし、ここまで来られたらもう寝ていられないだろう、諦めて起きてしまおう。

 

「はいはい、今起きますよっと」

 

「じゃあ、夕祈は日菜を起こしてきて、まだ夕祈みたいに布団の中だろうから」

 

「うん、了解したよ、日菜姉は起こしておくから紗夜お姉ちゃんは先に下に行ってて」

 

「そうね、じゃあ先に行ってるわね、ちゃんと起こしてくるのよ」

 

「そこまで疑わなくてもいいのにー!」

 

「あら、お母さんの呼びかけを無視して二度寝しようとしていたのは何処の誰かしらね」

 

それだけ言い残すと紗夜お姉ちゃんは行ってしまった。その通りなんだけど、なんか癪だなー。これは日菜姉をからかってプラマイゼロにするしかないな。ゴメンね日菜姉、これは不可抗力なんだよ。

そんなくだらないことを考えながら軽い身支度を済ませ部屋を出た私の目の前には

 

「おっはよう!ゆうちゃん起きてるかい?」

 

すっごい笑顔の日菜姉がいた。紗夜お姉ちゃんの嘘つき!日菜姉ガッツリ起きてるじゃん。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

というわけで、家族5人で朝食の時間を過ごした私は学校への道のりを歩いていた。

私の通う学校は、羽丘女子学園と呼ばれている女子校だ。羽丘には日菜姉も通っているので必然的に一緒に登校することになる。まあ、私は中等部で日菜姉は高等部だから完全に一緒ではないのだけれど。紗夜お姉ちゃんは花咲女学園という女子高に通っているので一緒には登校出来ないのだ。

 

「お姉ちゃんも一緒に登校出来たらもっとるん!って来るんだけどな〜」

 

このセリフもなんど聞いたことか。

 

「日菜姉、私そのセリフすっごく聞き飽きちゃったよ、そろそろ慣れなよ」

 

「えー、だって一緒にいたいんだもーん」

 

「じゃあ、日菜姉は私といる時にはるん!ってこないんだー」

 

「む、その言い方はちょっと意地悪じゃないかな〜、あたしがゆうちゃんのと嫌いなわけないじゃん」

 

確かに少し大人げなかったかもしれない、まあ、日菜姉の方が私よりも大人なんだけど

 

「ごめんごめん、ちょっと朝のこともあって、からかってみただけだよ」

 

「え、朝のことって何?あたしなにかゆうちゃんを怒らせるようなことしちゃったっけ?」

 

「いやぁ、ちょっと紗夜お姉ちゃんとね」

 

あ、しまった。私の口から紗夜お姉ちゃんの話題をだしちゃ....

 

「そっか、お姉ちゃんと....」

 

遅かった。目に見えて表情を曇らせる日菜姉、けどそれも一瞬で、直ぐにいつもの笑顔に戻った。

 

「だからってあたしに当たらないでよー」

 

あぁ、まただ、また日菜姉に無理をさせてしまった。笑顔でも隠しきれてないよ、何年一緒にいると思ってんのさ、日菜姉も紗夜お姉ちゃんも。

ただ、無理してるよね、なんて言えない。無理をさせてしまった私が、その無理を意味の無かったことにさせるのは許されないから。

 

「可愛い妹のイタズラだよー、むしろ有難く思ってほしいなー」

 

「全く、調子いーんだから」

 

こんな下らない会話をしながら私達はいつも通り学校へと向かった。

 

ーーーーーーーー

 

日菜姉と別れ中等部の教室に向かう途中で私の大親友がいたので声をかけた。

 

「おはよー」

 

「あっ、ゆうゆうおっはよー!」

 

「今日もあこは元気だねー、朝からそんなに元気で尊敬するよ」

 

「ふふふっ、当然!我が体には抑えきれぬ魔力が常に放たれているのだからな」

 

この、元気いっぱいで偶にカッコつけたことを言ってしまう女の子は私の幼なじみであり大親友の宇田川あこ。小学校の頃からずっと仲良くしてきて中学3年になった今でも大の仲良しだ。

 

「流石は聖堕天使あこ姫だね。で、その魔力もとい元気の秘訣は?」

 

「えっ、秘訣?ひけつ...ひけつ......あっ!お姉ちゃん!」

 

「そこで出るのがやっぱりトモちゃんなんだ。あこってほんとトモちゃんのこと大好きだよねー」

 

「うんっ!大好きだよ!カッコイイし優しいし。それにゆうゆうだって紗夜ちゃんに日菜ちんのこと大好きでしょ?」

 

「そう...だけど、そんなに堂々と大好きなんて言えないよ、恥ずかしいし」

 

「そっか、ゆうゆうは照れ屋さんだねぇ」

 

こちらをからかうように言ってくる。

 

「もう、早く教室行くよ」

 

「あっ。待ってよゆうゆーう」

 

私は恥ずかしくなり話を切り上げ、教室を足早に目指した。

 

ーーーーーーーー

 

4限まで授業を終えて、今は昼休み。私とあこは2人で昼食を食べながら話していた。

 

「ライブ?」

 

「そう、ライブ!今日の放課後にライブハウスでやるの!」

 

「そのライブってafterglowが出るの?」

 

「うん!だから一緒に行かない?」

 

afterglow、トモちゃんがドラムを担当している幼馴染で結成されているバンドの名称だ。ちなみにメンバー全員私のお友達でもある。

うーん、ライブかー、afterglowのみんなが出るんなら是非とも行きたいな

 

「うん、いいよ行こっかライブ。私もみんなの演奏聴きたいし」

 

「やったー!じゃあ、放課後にお姉ちゃん達と合流してからライブハウスにレッツゴーだよ」

 

ということで放課後にライブハウスに行くことが決定した。

軽い気持ちで行くつもりだったが今後の運命を定める放課後になるとはこの時の私は想像もしていなかった。

 

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