場所は変わり、パラオ司令部。
そこでは、司令部要員がドタバタと走り回り
「スピリッツの信号弾確認! 艦娘保護! 医療の必要認む!」
「明石さんに、ドックとバケツの準備を連絡! 整備員は回収用意! 観測機は!?」
「まだ帰還しません! 信号弾も確認されていません!」
「……対空砲撃の用意を! もしかしたら、敵の航空戦力が接近してくるかもしれません!」
「了解!」
怒号が飛び交っていた。
そこに、新しい要員が司令部に入ってきて
「観測所から、新しい報告です!」
と祐輔に書類が手渡された。それを一読した祐輔は
「対空砲撃陣地に、対空散弾砲弾を運び込んでください! 新型の方です!」
と指示を下した。
その頃、港では
『緊急事態により、市民の方々は一時避難をお願いします! 今現在、未知の敵がこのパラオに接近してきています! 避難は事前の取り決め通り、各地区毎のシェルターに向かってください! 繰り返します!』
「慌てないで! シェルターには、まだ余裕があります! 押さないでください!」
「入り口で名前の記入をお願いします!」
放送を聞いた漁師達が避難の為に走り、艦娘達が警戒しながら避難の誘導をしている。
よく見れば、艦娘達の艤装にケーブルが繋がっており、妖精が機械から出てきた紙を読むと、艦娘達の耳元で何かを聞いては
「こちらの状況を報告して、必要な物資のピックアップをお願い!」
と告げている。どうやらケーブルは、有線回線のようだ。ミノフスキー粒子は無線に多大な影響を与えるため、祐輔は対策として有線回線をまずパラオ全体に巡らせた。
海上にも少しずつ有線回線のブイを浮かせているが、深海棲艦の潜水艦により破壊されたりするので、中々広まらないのが現状だ。
それはさておき、ある地区の避難誘導を指揮していた神風は、近くに居る別の駆逐艦娘。文月に
「文月! 第七地区から、新しい連絡は!?」
「まだない! あっちは子供が多いから、手こずってるって連絡が最後!」
文月からの返答に、神風は渋面を浮かべた。
神風が言った第七地区には、学校と孤児院が集中して建っているので、避難訓練は特にやっていたが、やはり実際にやるとでは、違いは出るのだろう。
支援に回りたいが、まだ手は空かない。
「春風達を、信じるしかないわね……あ、お爺さん! こっちです! 道から外れないでください!」
神風は妹達を信じて、避難誘導に意識を集中させた。
そして、三度場所は変わり、最前線。
「アンチビーム爆雷投射後、艦尾ミサイル発射菅に対空榴散弾頭全門装填! バリアント、撃てぇ!!」
アークエンジェルから放たれた砲撃が、紺色の敵艦目掛けて飛翔する。しかし敵艦は、砲撃を機動性の高さで回避すると、GNミサイルを連続発射した。
「対空榴散弾頭弾、一斉射!」
アークエンジェルの指示と同時に艦尾ミサイル発射菅から、一斉にミサイルが発射されて、空中で凄まじい爆発が連鎖する。
その直後、爆煙を貫通してビーム砲撃が来たが、艦に当たる直前で霧散する。
「砲撃位置特定! 予測進路、表示!!」
「バリアント、ゴットフリート、撃てぇ!!」
同じく爆煙を貫通し、次々と砲撃を放つアークエンジェル。その間に、敵艦を挟む位置に移動したエウクレイデスが砲撃を開始した。
しかし敵艦は、気付けばGNフィールドを展開していて、無傷だった。
「敵艦、GNフィールドにより健在!」
「……飽和砲撃! GNフィールドも無限じゃない! エウクレイデスと合わせて、砲撃!」
二隻からの砲撃を、敵艦は機動性で回避しつつGNフィールドで防御する。
その時、直援の二隊が不意に動いた。
「え……真下!?」
艦橋間近に近づいたヴァルキリー2がハンドサインで、真下に敵と知らせてきた。アークエンジェルは急制動し、真下から現れた敵機の攻撃を回避した。
凄まじい加速、黒く塗装された戦闘機に見える可変機。
「敵機確認……識別照合、アブルホールです!」
それは、ソレスタル・ビーイングが可変機構の試験用に開発したガンダムだった。
先程の攻撃は、GNバルカンだったようだ。
アブルホールは一度戦闘機形態からMS形態に変わり、強引に急制動し、GNミサイルを撃とうとした。だがその時には、既にガンダムエピオンが懐に入り込んでいて、斬っていた。
アブルホールは先にも書いたが、可変機構の試験の為に開発されたガンダムで、武装はGNバルカンとGNミサイルしかなく、ましてや腕すらない。
だから接近されたらGNバルカンで対処するしかないのだが、システムで先を読むエピオンに当たる訳もなく、斬り捨てられた。
その直後、アブルホールを中心に広大な範囲に煙とGN粒子が広がった。
「しまった……!」
アークエンジェルはアブルホールの狙いに気付いたが、もう後の祭り。
気付けば、敵艦はトランザムを発動して、遥か彼方に消えていた。