トラック泊地の連合艦隊は、周辺警戒をしながらパラオに向かっていた。その時、対空警戒をしていた秋月が
「未確認機、接近!」
と上空を指差して、対空砲撃態勢に入った。
しかし、潮が
「待ってください! あれは確か、スピリッツが使ってた無人機の筈です……ん、光が……」
制止して、とそのUAVの機首部分が不規則に光っている事に気付いた。その光を見た五十鈴が
「あのパターンは……モールス信号……日本軍のモールス信号よ!」
と気付いた。
「読みます……通信回線……258……以上です!」
「通信回線258に切り替えて!」
霧島の指示に従い、トラック泊地の艦隊は通信回線の周波数を切り替えた。すると、ノイズ混じりだが
『こちらは、パラオに協力しているスピリッツです……トラック泊地の艦隊で、間違いありませんか?』
とアークエンジェルの声が聞こえた。
「はい、間違いありません! トラック泊地所属艦隊です! パラオで異常事態が起きてると考え、救援に向かってる途中です!」
『なるほど……今現在、パラオは敵対MSにより襲撃されており、切迫した状況です……はっきり言って、轟沈する可能性が高い状況です……それでも、パラオに向かいますか?』
それは、最終警告だった。
スピリッツとて、無用な犠牲は出したくない。それに、勇敢な味方を喪いたくはない。だから、警告を発したのだ。
「行きます」
真っ先に発言したのは、潮だった。
「パラオとスピリッツの皆さんには、助けてもらった恩があります……その恩を返したいんです」
「それに、ピンチの味方を見捨てるなんて、目覚めが悪いわ」
潮に続いて、霧島と五十鈴が力強く宣言した。
『……不要な確認でしたね……』
アークエンジェルはそこで一拍置いて
『確認ですが、対MS装備は?』
「こちらが装備しているのは……」
アークエンジェルからの問い掛けに、霧島が代表して報告を始めた。
それから、少しして
『作戦を伝えます』
とアークエンジェルが切り出した。
同時刻、パラオ本島付近。その海中では、スピリッツ側とリボーンズ側の水陸両用MS部隊が激しく交戦していた。
数はリボーンズ側の方が圧倒的だが、機体の練度はスピリッツ側が圧倒していた。
リボーンズ側はグーンやゾノ、ドーシートを投入してきていたが、スピリッツ側はハイザックを水陸両用にした機体のみ。
しかしスピリッツ側は、海流を使って移動しており、リボーンズ側はその動きに翻弄され、近接攻擊で撃破されていた。
海底には、次々とリボーンズ側の水陸両用MSの残骸が積み上がっていく。
それを、遠巻きに見ていたパラオの潜水艦娘達は
「あんなの、戦えないのね……」
「今は静かにするしかないでち……」
と静かにする事を決めていた。
彼女達は資源回収の遠征に向かっていて、もう少しでパラオに帰還出来るというタイミングで、今回の事件が発生。
戦闘の渦中に取り残されていた。
今も目の前を、スピリッツ側とリボーンズ側の機体が激しく絡み合いながら通り過ぎ、スピリッツ側がドーシートの腰部に長い刃のアーマーシュナイダーを突き刺して撃破した。
余りの光景に、潜水艦娘達が固まっていた。
その時、伊26の後ろに一機現れた。
「ニム!」
伊19の言葉に、伊26が反応して振り向いて固まったが、気付いた。そこに居たのは、スピリッツ側の機体だった。
スピリッツ側の機体はゆっくり近付くと、頭部のカメラを不規則に光らせ始めた。
「……方位、300……距離900の位置に、緊急避難用船が停泊してる……好きに使われたし……」
伊26が解読すると、スピリッツ側機は近づいてきていたゾノに突撃していった。
「……イク、どうするでち?」
「……行くしか、ないの……旗艦として、皆を死なせる訳にはいかないのね……」
伊58からの問い掛けに、伊19はそう答えて、進み始めた。指定ポイントに向かうと、岩に見える船があった。
「これ……?」
「だと思うの……下部に、ハッチがあったのね」
U511が首を傾げていると、伊19がその船の底面にハッチを見つけて開けて、中を見た。数人が座れる座席と簡易的な机。壁のホルダーには水分補給と思われるボトルが見えた。
伊19を先頭に、潜水艦娘達は次々と中に入って、最後尾の伊168がハッチを閉めた。
すると船が動き始めた。
「え!?」
「なんなの!?」
伊58と伊26が慌てていると、伊19が
「多分、海底に接地するつもり……岩みたいな見た目だったから、擬態してやり過ごす気なの」
と自身の推測を述べた。
そして、それは当たっていた。実は船の表面には実際に石が接着されており、光学カメラ及びソナーには反応が出づらいようにされている。
そんな船が、大小様々な岩が散在する海底に接地すれば、どうなるだろうか。
答えは、非常に分かりづらい避難場所の完成である。
「後は、信じて待つしかないでち……」
伊58もだが、潜水艦娘達は、己の無力さを恨んだのだった。