パラオ泊地の襲撃から、帝国軍は対MS装備の開発を急いだ。パラオ泊地艦隊やトラック泊地艦隊が運用してデータ収集していた有線式30cm12連装噴進弾、近距離レーダーを搭載した三式弾・改は他の泊地や本土の鎮守府でも運用を開始し、改良を進めている。
特に有線式噴進弾は、応用が利くという事が分かり、地対空装備用に多連装式の開発が急がれている。
それはさておき、パラオ泊地の軍港の一角にてスピリッツが、アークエンジェルの修理と激戦を繰り広げて消耗したトライアド中隊のオーバーホールをしていた。
その間、アークエンジェルは一度艦から降りて、パラオ泊地の一角を借りて情報整理をしていた。
「……あのサーペントの装備……オプション装備の一つを改造したものですか……」
MSサーペント
AC世界のバートン財団が世界を手中に収めようという野心から開発した機体で、射砲撃戦闘を重視して開発されているが、それでも様々な場面に対応出来るようにとオプション装備が多数開発されていた。
例として挙げると、超長距離狙撃用のビームランチャー、面制圧を目的とした増設用ミサイルランチャーに対空重視型の連装高角砲と様々だ。
しかしエンドレスワルツの際に使用されたのは、降下用のパラシュートパックと地上での機動性を上げるホバー装備しか使われなかった。
というらよりも、換装する場所が無かったが正しいかもしれない。
AC世界はOZトレーズ派とホワイトファングの戦いの後、地球圏統一連合となり、あらゆる軍隊が解体され、同時に兵器が破棄される事になった。
それにより真っ先にMSの廃棄が始まり、それに合わせて基地の解体も行われた。
恐らくだが、デキム・バートンはまだ使える基地があると考えたのかもしれない。
しかし実際には、ブリュッセル近郊の基地は解体が終わっていた。
だから、現地で追加のオプション装備の装着が出来ず、結果として一部装備のみが運用されたのかもしれない。
今回スピリッツと交戦したのは、そんなオプション装備の一つ。砲撃支援タイプを改造し、運用したようだ。
「複数の弾が使える、と考えた方が良いでしょうね……」
アークエンジェルは呟きながら、端末を操作した。
様々な方法で入手した情報を、ピックアップして表示しては消していく。
「口径は、約250mmというところで……後背部でサブアームで保持していて、様々な角度、方向に指向が可能……背部バックパックに様々な弾が入っていて、機体側からの選択で撃ち別けも出来る……と考えた方が良いでしょう……中々に自由度が高い」
相手の脅威度は低く見積もるより、高く見積もっておいた方がマシ、とアークエンジェルは考えて、量産機の中では高脅威機体に設定した。
「次に、ジオ・グーン……地中を進まれるのは厄介ですが、それだけ……武装はグーンと共通……どうやら稼働時間は短いみたいですから、相手からしてもまだ試作機体か扱い難い機体なのは間違いない」
次に表示したのは、トライアド隊が交戦したジオ・グーンだ。
グーンを改修し地中を進む機体で、主に奇襲や地下司令部等を襲撃する事に用いられる機体だが、トライアド隊のデータを検証すると、ちゃんと稼働出来るかどうかはかなり賭けに近いようだ、とアークエンジェルは判断した。
その理由が、戦闘したジオ・グーンの内、約3割強がセンサー系に異常が起きたらしく、スピリッツ側を捕捉出来ていなかったからだ。
これは、改修の際に上半身装甲全体にスケイルモーターを採用したからだ、と推測している。
スケイルモーターというのは、砂漠等で砂を超微振動させる事でまるで水のように移動出来るという装備なのだが、その微振動がセンサー系に悪影響を及ぼし、破壊していると考える。
「地面に何らかの強い振動を起こす装置、みたいなのを考えるべきかしら……」
アークエンジェルはそう呟いて、ジオ・グーンを中脅威度に分類した。
そして最後に、完全新型のGNドライヴ搭載機体。
高機動型の完全新型。それも、リボーンズ並の機動性を有している。
この機体をアークエンジェルは、一も二もなく高脅威度に選択した。
「この機体、明らかに私達用に用意した……そう考えるのが自然でしょう……」
アークエンジェルはそう呟きながら、横須賀事件の時に交戦した類似機のデータを表示した。
高機動型でGNファングを搭載した機体。
もしこれらが少数でも量産され、部隊として投入されたら、何かしらの対策をしない限り危険だ。
「……やれやれ……何時も綱渡りですね」
アークエンジェルはそう呟きながら、窓から空を見上げた。