スピリッツがトラック泊地に訪れて、作業を始めてから約一週間が経過。
予定通りに作業は進み、MS運用の為の施設と新しく建設された施設は運用可能になり、今はトラック泊地の人員にMS運用の為の講座を開いていた。
「……っと、このようにMS運用は艦隊との連携も重要です」
今しがた教育しているのは、MSと艦隊の連携運用に関してになる。
「艦隊に簡易的ながら推進剤と弾薬の補給装置を用意すれば、MSの行動範囲が広がり、索敵や哨戒に活かせます」
「なるほど……推進剤は、何を使用しているのでしょうか?」
「ケロシン。または、SAFになります」
一人の整備士らしい初老の男性の質問に、エウクレイデスは答えた。
「SAFとは確か、まだ実験段階の……」
(ああ。この世界ではまだ、SAFは実験段階なのね)
ケロシンというのは、灯油より燃焼効率を上げた石油由来の化石燃料。それに対して、SAFとは動植物、廃食用油、都市から排出されるゴミ由来の再生燃料になり、宇宙世紀では最早一般的な燃料として推進剤に使われていた。
それほどまでに、宇宙世紀では地球の鉱物、化石の天然資源は取り尽くされて、燃料は人工物へ。鉱物は隕石や小惑星に依存していた。
「SAFに関しては、後ほど此方から資料を提出しましょう」
「つっ!?」
「よろしいのですかな?」
トラック泊地の提督の言葉に、エウクレイデスは頷き
「でなければ……人類は遅かれ早かれ、資源が間に合わなくなり、深海棲艦達に敗北するでしょう……」
この世界では、深海棲艦側と人類側で資源を取り合っている。
そうなれば、ジェネレーション世界よりも早く資源が枯渇する可能性が高まる。そこまで行ってしまったら、未だに宇宙への進出も、技術も発展していないこの世界は行き詰まり、人類側が敗北する未来に繋がってしまう。
それを、スピリッツが看過出来る訳がない。
ならば、技術支援をして勝てる確率を上げるのが、今のスピリッツが出来る最大限の支援だろう。
「今貴方方は、深海棲艦と資源を巡って争ってると言っても過言ではありません。少しずつでも、代替資源や人工資源を発見したり開発する必要があるのです」
エウクレイデスの言葉に、提督は目を見開いた。
「資源の取り合い……気付きませんでしたね…」
「有効な資源は、宇宙の隕石や小惑星です……他にも、ゴミを再利用する、という方法もあります」
「ゴミの再利用……」
「はい。例えばですが……」
エウクレイデスは教卓の上にあったペットボトルを持ち
「こちら、分解すれば油として利用する事が出来ます」
「一度固形化しても、油に戻せるというのですか?」
一人の技術士官からの問い掛けに、エウクレイデスは教卓の上に足下に置いていた機材を乗せた。
「これは、このペットボトルを分解する事が出来る機械の縮小版です。本来は、トラックサイズになります」
エウクレイデスはそう説明しながら、コンセントにプラグを差し込んだ。そして軽く操作し、少し待つ間に空のペットボトルを細かく細断した。
そうして、機材がちゃんと動いてるのを確認し
「このケースに、細断したペットボトルとフタを入れます……そして、このケースを機材に入れます」
エウクレイデスは分かるように説明しながら、会議室に居る一同に見せていく。
そうして
「提督殿、こちらのスイッチを押してください」
「あ、ああ……」
提督を呼び、位置を変わって機材のスイッチを押させた。すると、機材から少し重い音が鳴り始め、機材下部の透明なタンクにちょっとずつ黄色み掛かった液体が満たされ始めた。
そうして十数分後、タンクの4分の1位にまで液体が溜まり、機材が止まった。
エウクレイデスはタンクとケースを取り出して
「このように、油に戻せます」
とケースの中のペットボトルが無くなり、タンクに溜まった油を見せた。
提督は指先で油を触り、手触りや匂いを確かめ
「……確かに、油だ……なんという……」
と驚きの声を漏らしていた。
「同じように、鋼材も溶かせば再利用が可能です。一度使って廃棄になったからとて、再利用出来ない訳ではないのです」
「ネジも、装甲もか……なるほど……これは、本土に打診するべき事案か」
提督は唸りながら、エウクレイデスが告げた内容を取り出したメモ帳に書き記し
「ありがとう、スピリッツ……貴女方のおかげで、我々は大事な点に気付けた」
「我々に出来る事なら、最大限協力しましょう」
エウクレイデスと提督は硬く握手した。
それから約一ヶ月後、日本にて資源の再利用に関する研究の指示が出される事になる。