許可を得たエウクレイデスは、あらゆるデータの検証を開始した。
機動、攻擊、出力、装甲
特に、強敵との戦闘時のデータを事細かく検証した。
勿論だが、敵のデータも。
その中で、気付いた点が幾つかあった。
「……データが少ないから気付かなかったけど、出力が上がってる……」
エウクレイデスが気付いたのは、リボーンズ達の出力だった。
機動性とGNライフルやサーベルの威力が、以前のデータより上がっていたのだ。
「ここから導き出される出力は……前より、二割近く出力が上がってる……!」
リボーンズ達のGNドライブの出力が、二割近く向上している事が導き出された。
「まさか……佐世保やパラオに現れた新型……GNドライブの出力向上の試験目的!?」
スターダストやパラオの機体は、出力向上型のGNドライブの試験用として開発され、どういった効果が得られるのかを、佐世保やパラオで試験した。
「……他に、海底基地もまだ有りそうね……そうじゃないと、試験データが揃わない……こりゃ、強化改修は急務ね」
エウクレイデスはそう決断し、その結論とデータをアークエンジェルに送信。その後、組み上げた予備機を使って強化を始めた。
その後、アークエンジェルにて
「……なるほど、対私達というより、出力向上型GNドライブの試験機……確かに腑に落ちますね……」
アークエンジェルはエウクレイデスから送られてきていたメッセージを読み、一人納得していた。
そして、まだ海底基地があるという結論も。
「そうなると、艦隊の皆さんに協力してもらう必要がありますね……此方から、装備や設計図を提供して艦隊の皆さんの戦力強化も図りましょうか……」
アークエンジェルはそう決断し、設計図アーカイブにアクセスを開始した。
そして翌日
「協力……」
「はい。先日の戦闘で、敵にはまだ海底基地のような秘匿施設があると確信しました。それを見つける為に、協力を要請したいのです」
祐輔に代わり涼華に計画書を提出し、協力を要請していた。
「勿論、私達も協力は惜しみません……ですが」
「懸念は分かります……ですので、これを」
涼華が最後まで口にする前に、アークエンジェルはファイルを差し出した。
涼華はそのファイルを開き
「これは……!?」
「はい。各艦種用に転用可能な新しい砲弾、潜水艦の速度を上げる推進機関。そして新型戦闘機の設計図です。既に実物は、こちらの工廠に運び込んであります」
新兵器と新機関の設計図。それも、かなりの数だった。しかも、既に実物が運び込んであるという。
「……分かりました。私から、大本営に提案書とこれらの設計図を送ります」
涼華はファイルと計画書を鞄に大事に仕舞い、会議室から退室した。そこから、日本軍の動きは早かった。
約一週間後には日本本土から数多の技術者達がパラオに到着し、工廠に入った。
「なるほど……対地攻撃用に……」
「これ自体はシンプルな構造だから、確かにあらゆる口径用に……」
「ウォータージェット機関にスケイルモーター……」
「此方は多少艤装を改造すれば、潜水艦だけではなく……」
「この推進機関は、噴進式か……!」
「なるほど、こうすればより高圧で……!」
技術者達は目を輝かせながら、設計図と実物を見比べて感嘆していた。
そして会議室では
「まさか、元帥自らが来てくださるとは……しかも、陸軍元帥も」
アークエンジェルは、日本本土から来た二人の元帥と対面していた。
「何……反撃の狼煙となる計画……乗らない理由は無いからな」
「佐世保の時、我々は君達に助けられた……それに、陛下の裁可も得た……我々も、君達の力になりたいのだ」
海軍元帥の後に述べたのが、陸軍の最高司令官。
佐世保動乱の際、陸軍は独自に開発していた対深海兵器が大して役に立っていない事を痛感し、独自路線から海軍と共同開発する方向に舵を変更した。
その矢先に、アークエンジェルが設計図と実物を提供したと聞いて、パラオまでやってきたのだ。
「こんな事、都合が良いとは承知している……頼む、我々陸軍にも、設計図を出して貰えないだろうか……」
阿藤元帥はそう言って、深々と頭を下げた。
陸軍は深海大戦が始まってから、犠牲者ばかり出してきていて、戦果は微々たるものだった。
そこから対深海用兵器の開発も開始したが、膨大な予算を投じても効果は余り無かった。
それどころか、佐世保動乱で使用した兵器の大半は廃棄になった。
そこで、独自開発では時間と予算を食い潰すだけと判断した。
プライドなど、深海大戦初期にズタズタにされた。
今大事なのは、戦える力を有する事。
阿藤元帥は、そう考えて頭を下げてでも共同開発に漕ぎつけようとパラオまで来た。
そんな阿藤元帥に、アークエンジェルは
「構いませんよ、阿藤元帥……アーカイブから引き出すので少々お時間が掛かります……ですので、まずはこのパラオの工廠にある物を見ていてください」
優しくそう声を掛けながら、阿藤元帥の肩に手を置いた。それを聞いた阿藤元帥は、涙を流しながらアークエンジェルの手を握ったのだった。