艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

14 / 113
暗雲

その日、祐輔は朝から嫌な予感がしていた。

 

「なんだろう……胸騒ぎがするんだよなぁ……」

 

祐輔はそう呟きながらも、再建を着々と進めていた。その甲斐あり、パラオ第三泊地は大分資源に余裕が出てきた。

そして何より、一部の艦娘達は自主訓練を開始。練度の向上に努め始めた。

いい傾向だと、祐輔は思っている。

海賊も大分数が減らせて、まさに順調。胸騒ぎを覚える理由は無い筈なのだ。

しかし、嫌な予感が止まらない。

 

(なんでだろう……)

 

と思考している時、ドアが開き

 

「祐輔さん。演習の申込みが来ました」

 

と大淀が報告してきた。

 

「相手は誰?」

 

「はい……大湊第四警備府の高久大佐です」

 

大淀が告げた名前を聞いて、祐輔はそれかと思った。

高久大揮(たかくだいき)大佐。帝国海軍に多数の優秀な軍人を輩出した高久家の三男だ。

 

「……規則だから、断ることは出来ないね……何時来るって?」

 

「今から、四時間後です」

 

報告を聞いた祐輔は、演習用の艦隊を編成するために頭を悩ませ始めた。

それから、四時間後。一隻の輸送船が入港してきた。

大湊所属のおおすみ型、たかすみである。

そのたかすみから、一人の肥え太った男が降りてきた。

その男が、高久大揮大佐だ。

はっきり言ってしまえば、悪い噂ばかり耳にする。

一般から選ばれた提督を見下し、駆逐艦娘達は戦艦や空母を守るための弾除けにする。

祐輔としても、関わりたくない提督の一人だが、演習を申込まれた場合は断ることが出来ないのが規則だ。

 

「ふん、提督が出迎えにでないとはな……これだから、一般の出は教育がなっとらん」

 

祐輔が居ないことに気付いた高久大佐は、まるで吐き捨てるようにそう言った。

すると、出迎えに来ていた神通が

 

「現在当泊地は、建て直しの最中でして。提督は多忙なんです。高久大佐」

 

と答えた。

すると、高久大佐は

 

「それがどうした。出迎えをするのが、礼儀というものではないか?」

 

「お言葉ですが、我々の提督の階級は少将です。高久大佐」

 

高久大佐の言葉を聞いた神通は、言外に下の階級の軍人を出迎えるのは如何なものか。と告げた。

だが、高久大佐は

 

「それがどうした。たかが一つしか違わん。それならば、一般の出が軍家の出の私を出迎えるのが礼儀だろう」

 

とまるで、それが当たり前だと言う風に言った。

しかし、神通は

 

「では、提督の所にご案内します」

 

と言うと、静かに歩みだした。

それを見た高久大佐は、小さく舌打ちした後に護衛なのか重巡洋艦娘を一人従えて、神通に続いた。

そして、数分後

 

「提督、高久提督をお連れしました」

 

『入って』

 

祐輔に促されて、神通はドアを開けて、高久も中に入った。そして高久は、見えた光景に固まった。

何故ならば、祐輔の机の上には高さ数十cmにもなろうかという書類の束が幾つもあったからだ。

 

「すいません、もう少々お待ちください。これが終わりましたら、演習場に向かいましょう」

 

祐輔はそう言いながら、次々と書類を終わらせていく。

そして、数分後

 

「すいません、お待たせしました。では、行きましょう」

 

と祐輔は、処理した書類を《処理済み》とラベルが貼られた箱に入れてから立ち上がった。

 

「大淀さん、この書類を事務課にお願いします」

 

「承りました」

 

祐輔の指示を聞いて、大淀は予備の箱と入れ替える形で書類を持っていき、祐輔達は演習場手前の部屋に向かった。

 

「それで、演習ですが。どういった形式で?」

 

「勿論、互いが選んだ主力艦隊の艦隊決戦だ。それ以外は認めん」

 

祐輔の問い掛けに、高久は当然だと言わんばかりに返答した。

 

「分かりました」

 

祐輔は頷きながら、高久の後ろに居る重巡洋艦娘。

妙高型四番艦娘の羽黒を見た。羽黒は気弱な艦娘で、祐輔としては何時もオドオドしている印象の艦娘だ。

だが、高久の後ろに居る羽黒は、気弱というよりも意思が弱いという印象を抱いた。

俯いていて、目に光が見られない。

 

(……何か有るな……)

 

そう考えた祐輔は、編成をしながら

 

「川内さん、ちょっとお願いが有るのですが……」

 

と小声で、通信を試みた。

その頃、たかすみ艦内。

 

「ねえ、本当にやるの……?」

 

「言うな……私とて、やりたくない……だが、やらなければ……あの子達の命が無い……」

 

長い銀髪にピョコンと生えているアホ毛が特徴の少女の問い掛けに、背が高く褐色肌が特徴の女性が嫌々という雰囲気で答えた。

そして女性は

 

「すまない……許せとは言わない……」

 

と呟きながら、移動を始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。