「高久艦隊の皆さんには、一先ずこちらの予備宿舎に寝泊まりしてもらいます。何か入り用でしたら、こちらの番号に連絡くれれば、すぐに対処しますので」
「有り難い……何から何まで……感謝する」
祐輔の言葉に、艦隊を代表してか武蔵が頭を下げた。
すると祐輔は
「僕に出来ることをやっているだけですよ」
と微笑んで、元高久艦隊の全員が宿舎に入っていくのを見送った。
その直後、川内が祐輔の背後に現れて
「ありがとうね、スピリッツの協力を漕ぎ着けてくれて」
と祐輔にお礼を述べた。
川内が電子鍵を突破出来たのは、祐輔がスピリッツに依頼の形で協力を漕ぎ着けたからだ。
そしてスピリッツは、電子戦が得意なセラヴィー・エルフィーとAGE2・フルバレットを派遣し、あっという間にたかすみの制御系を掌握。更には高久元大佐が行ってきた悪事の証拠を全て入手。
祐輔に送った後に、大本営の元帥宛に全ての証拠を送信。それを見た元帥は、逮捕状を発効したのだ。
「後は、彼女達がどうするかです……彼女達がやりたいことが有るのなら、僕は無理をしてでも援助するつもりです……」
祐輔はそう言って、川内と共に執務室へと向かった。
何せ、書類はまだまだ大量にあるのだから。
そして、時が経ち数日後
「皆さん、この後のことは決めましたか? 僕に出来ることなら、何でもやるつもりですよ」
と言う祐輔の前に、高久艦隊の艦娘達が整列している。
すると、武蔵が一歩前に出て
「そのことに関してだが、我々を貴官の艦隊に編入してもらえないだろうか?」
と祐輔に言った。
それは予想外だった祐輔は、思わず片眉を上げた。
祐輔としては、殆どが退役を選ぶと思ったからだ。
「確かに、何人かは退役も考えていたが、何をしていいか分からないのと、戦うしか能の無いのでな……話し合った結果、貴官の艦隊に編入してもらおうと決めたのだ」
「……分かりました。元帥に話し合って、何とか編入してもらいます」
武蔵の話を聞いた祐輔は、そう言うと敬礼しながら
「早いですが、貴女方の編入を歓迎します」
と伝えた。
その後祐輔は、何とか元帥と話し合って元高久艦隊の全員を編入することが出来て、受け入れた。
そして高久元大佐だが、現在は本土にて軍法裁判の真っ最中だ。
どうやら一度は親族に助けを求めたらしいが、その軍家出身ということをひけらかす人格が好かれていなかったらしく、袖を振られたようだ。
そして、高久元大佐がした悪事に関して現当主は深々と謝罪してきた。
本来高久家は、艦娘肯定の穏健派に属していて、元大佐以外は全員穏健派に属している。
しかし元大佐は強硬派に属し、艦娘達を酷使していた。
縁を切らなかったのは、一重に家族としての最後の情けだったのだ。
「しかし、この艦隊の練度は高いな……」
「急に、どうしました?」
武蔵の言葉を聞いた吹雪は、案内を一時中断して振り向いた。
そして武蔵が見ていたのは、教導に就いている祐輔艦隊の駆逐艦娘の秋月だ。
その秋月が教導している中には、重巡洋艦娘の摩耶の姿もある。
「なに、動きを見てな……訓練にも真剣に取り組んでいる……」
更に武蔵の見ていた先では、明石と夕張が筆頭になって何らかの改修工事も行っており、そこにも他の艦娘が混じっている。
「しかし、ここでは様々なことをやっているな……」
「はい。祐輔さんが戦後のことも考えて、戦うこと以外のことも知って、楽しさを見つけてほしいと」
ここまで案内を受けた元高久艦隊だが、その高久艦隊では元大佐の指示したこと以外はやるなと言われていた。
兵器なのだから、戦うこと以外はするなと命令され、もしやったり、やろうとしたりすれば、重い罰が与えられた。
「じゃ、じゃあ……歌を歌ったりしても、いいの?」
オドオドしながら問い掛けてきたのは、川内型の那珂である。
那珂によく見られるのはアイドル活動で、実際に大本営の那珂はアイドルとしてテレビにも出ている。
「はい、流石にすぐには無理だと思いますが、許可されるかと」
という吹雪の言葉に、その那珂は嬉しそうな表情を浮かべた。
すると吹雪は
「余程のことが無い限り、大抵のことは許可される筈です」
と全員に聞こえるように、大きな声で教えた。
それを聞いた彼女達は、楽しそうに会話を始めた。
そこに、家具を抱えた川内が現れて
「吹雪、このA9の家具はどこに運ぶんだっけ?」
と問い掛けてきた。
「もう、しっかりしてくださいよ。A9は第二酒保のカウンターとして使うって決めたじゃないですか」
「あー、そうだった……ごめんごめん」
吹雪の言葉を聞いた川内は、思い出したという風体で軽く自身の頭を叩いて、踵を返して離れていった。
すると吹雪が
「ちなみに、あの家具は今の川内さんが作ったものなんですよ」
と教えると、殆どが驚いた表情を浮かべた。
川内型一番艦の川内と言えば、夜戦バカと呼ばれる程に夜型の艦娘で夜戦しか興味ないとされ言われる始末の艦娘だ。
しかし、一部の提督しか知らないのが、川内というのは生活力が高い。
料理、洗濯、家事全般が得意で、更には字も上手い。
そして何よりも、一度興味を持ったことはとことん突き詰めていく性格なのだ。
そして、祐輔艦隊の川内改二は家具作りを含めた木工品を作るのに興味を示したのだ。
「とまあ、今のように出来ますので、ドンドン自分がやりたいことを見つけてくださいね。なんなら、私達がやっていることを見学に来ても構いませんからね」
吹雪はそう言うと、案内を再開したのだった。