「……意外と、脆かったですね……」
本当に意外だな、という風にアークエンジェルは呟いた。
『やっぱり、ビーム兵器に対する防御力は無かったようね……ここまで来ると、むしろ憐れにすら思えるわ……』
文字通り全滅した深海艦隊を見て、エウクレイデスは心底から憐れといった風に言いながら、首を振った。
もはや、海面には燃える深海艦隊の残骸しか見えない。
MS隊は、念のために生き残っている深海悽艦が居ないか確認中である。
ふとその時、ある一ヶ所で光の柱が伸びた。
「何事ですか?」
「ジェミニ1、確認に向かいました」
アークエンジェルが問い掛けた直後、副長妖精はそう告げた。そして、少しすると
『こちらジェミニ1! 該当海域にて、意識の無い艦娘を発見しました!』
と通信が来た。それを聞いた副長妖精は、首を傾げながら
「意識の無い艦娘……捕虜にされていた?」
と呟いた。アークエンジェルは、少し間を置くと
「ジェミニ1、回収を」
と指示を下した。
それから数分後、深海艦隊の全滅を確認したスピリッツは、泊地へと帰還した。
「いや、まさか……あんな短時間で全滅させるとは……」
と驚いたのは、祐輔だ。
祐輔はまさか、たった一時間足らずで60を越える深海艦隊が全滅するとは思っていなかったのだ。
「それと、1つ報告事項が……」
アークエンジェルがそう言うと、ジェミニ1。ビギニング30が一人の艦娘をお姫様抱っこで運んできた。
「光の柱が伸びた場所で、彼女を見つけました」
「この子は……葛城ですね……ドロップですか」
「……ドロップ?」
祐輔の言ったドロップの意味が分からず、エウクレイデスは首を傾げた。
ドロップというのは、原因不明で時々起きる現象であり、深海悽艦を撃破すると艦娘が現れるのだ。
一説では、艦娘と深海悽艦は正と負の違いでしかなく、撃破することで負の力が削がれて、正に帰属するのではないか。と言われている。
「……不思議な現象ですね……」
「そうですね……取り合えず、彼女はこちらで預かります……」
アークエンジェルの言葉に同意した祐輔は、ビギニング30から葛城を受け取ると、葛城を施設へと運んだ。
それから数十分後、祐輔は神通と共にアークエンジェルとの会談に赴いた。
「……なるほど……今回の深海艦隊の旗艦は、空母悽姫でしたか……それを、ハイメガキャノンで……」
「ええ……その他に関しては、全てビームライフルかビームサーベルで一撃でした」
祐輔とアークエンジェルは普通に会話しているが、神通は
(姫級を、一撃で……他にも、耐久力が高い戦艦級も……改めて、彼等の武装が私達の常識の外なのが分かりますね……)
と内心で困惑していた。
「……目的は恐らく、このパラオを陥落させて、トラックを孤立させることでしょう……補給に関しても、潤沢とは言えなくなります……帝国海軍に代わり、お礼を」
祐輔はそう言いながら、深々と頭を下げた。正直言って、残っていた艦隊での防衛戦は無理だっただろう。
「今回のことは、こちらとしても渡りに舟でした……良いデータが取れたので」
「大抵の通常級は、ビーム兵器で対処可能……ということですね」
アークエンジェルの言葉を引き継ぐ形で祐輔が言うと、アークエンジェルは頷いた。
そこに、エウクレイデスが現れて
「MS隊の整備、終わったわよ」
と告げた。
「わかりました……では、我々はこれで」
「はい。今回は、ありがとうございました」
その会話を合図に、それぞれの拠点に戻った。