「艦隊、微速前進!」
「了解! 艦隊微速前進!」
アークエンジェルが指示を下すと、副長妖精が復唱
その指示を受けて、操舵士妖精が艦を前進させ始めた
すると、アークエンジェルは
「艦載MSの稼働状況は!?」
と副長妖精に問い掛けた
すると、副長妖精は
「僚艦合わせて、全機発艦可能です!」
と答えた
それを聞いたアークエンジェルは、少し考えた後に
「エウクレイデスに、トライアド中隊の発艦要請! あの少女達の援護をさせなさい!」
と指示を下した
その数十秒後、モニターにエウクレイデスのリニアカタパルトを使って出撃するトライアド中隊を、アークエンジェルは見送った
場所は変わり、主戦域
そこでは、日本帝国海軍第一トラック泊地艦隊所属の艦娘達が、遭遇した深海悽艦艦隊と交戦していた
しかしこの艦隊、遠征中の艦隊で、戦えるのは武装を保持しているのは二人だけ
しかもその内の一人たる時雨は、不期遭遇した戦艦タ級エリートの砲撃により、中破してしまった
そしてもう一人、吹雪は健在だが、戦力差が激しい
(このままじゃ、長くは持たないね……)
時雨は何処か他人事のように、そう思った
援軍要請は出したが、今の自分達の提督が頷くとは思えなかった
だから時雨は、決意した
「吹雪! 他の子達を連れて、離脱して!」
「そんな!? 時雨ちゃんはどうするの!?」
「ボクは、あいつらの足止めをする!」
「時雨ちゃん!?」
「行って!!」
吹雪の呼び声を振りきって、時雨は深海悽艦艦隊に突撃した
(これで、白露姉さんや夕立に、会えるかな……)
と時雨は、戦死した姉妹達に思いを馳せた
その時だった
『頭を下げろ』
と声が聞こえて、時雨は反射的に頭を下げた
その直後、一発の光弾が時雨の頭上を通過
その光弾により、一体の重巡リ級が撃沈した
「え……な……」
その光景が信じられず、時雨は呆然とした
そこに
『貴官らを援護する……後退せよ』
と先ほどと同じ青年の声が聞こえて、時雨の脇を人型の物が高速で通り過ぎた
「な、何が……」
「時雨ちゃん、今の内に後退しよ!」
時雨が呆然としていると、吹雪が近付いてきて、手を引きながらそう促した
「吹雪……」
「あの人達は、味方みたい! 今の内に、一緒に下がろ!」
吹雪にそう言われて、時雨は周囲に同様の人型が多数居ることに気付いた
それらは、遠征艦隊を中心に円形の陣形を展開して、対空射撃をしている
空母ヲ級フラグシップが射出した艦載機を、片っ端から撃墜しているようだ
その動きから、非常に統率力のある部隊だと分かる
「あれらは……一体……」
「えっとね……傭兵部隊って、言ってた……傭兵部隊、スピリッツって」
「傭兵部隊、スピリッツ……」
吹雪の告げた名前を聞いて、時雨は呆然と突撃した人型を見た
その人型は機敏な動きで、次々と深海悽艦艦隊を撃破
単機で、深海悽艦艦隊を殲滅した
『敵残存勢力、確認されず……艦長、浮上、どうぞ』
ゆっくりと戻ってきた黒い装甲の人型は、冷静にそう告げた
その数秒後、少し離れた場所の海面が盛り上がって、二隻の白亜の巨艦が姿を現した
「な!?」
「か、海中から!?」
時雨と吹雪が驚いていると、艦隊の一人
電が近寄ってきて
「吹雪さん、時雨さん、どうするのですか?」
と問い掛けた
不期遭遇した後、艦隊は全速力で逃げ続けたために、トラック泊地に到着出きるかは微妙な燃料残量だった
そこに、黒い装甲の人型が近付いてきて
『あの艦に乗ってくれ、悪いようにはしない』
と告げた
すると、電の姉妹艦たる雷が
「この人達、悪い人じゃないと思うわ。信じてみましょう?」
と時雨に進言した
それを聞いた旗艦たる時雨は、頷いてから
「わかった、貴方達の船にお世話になるね」
と言った
それを聞いた黒い装甲の人型は
『了承した。俺は、傭兵部隊スピリッツのMS隊が一隊。トライアド中隊隊長。トライアド1のガンダムデルタカイ・フレスベルグだ』
と名乗った
「僕達は、日本帝国海軍第一トラック泊地所属、第一遠征艦隊。僕は、旗艦の時雨だよ」
「私は、副艦の吹雪です!」
「遠征艦隊の電なのです!」
「同じく、雷よ!」
「文月ですー!」
「弥生……です」
時雨が名乗ると、遠征艦隊全員が名乗った
それを聞いたフレスベルグは、頷いてから
『了解した。こちらで、安全を保証する』
と言って、時雨をお姫様抱っこで抱え上げた
「わっ!?」
『その損傷では、痛む筈だ。母艦まで運ぼう』
時雨が驚くと、フレスベルグはそう言った
確かに、時雨は大破一歩手前の損傷を負っている
事実、航行能力に支障が出ている
『トライアド2、3、6以外も彼女達を運んで差し上げろ。カタパルトまで、高さが有るからな』
『了解!』
フレスベルグの指示を受けて、他のトライアド中隊の指定されたメンバーが、他の艦娘達を同じように抱え上げた
そして時雨達は、トライアド中隊の母艦たるエウクレイデスに乗艦することになった
『衛生妖精、彼女を』
「はっ!」
フレスベルグが呼ぶと、ストレッチャーを引いた妖精が駆け寄ってきた
「妖精が……居るんだ……」
戦闘が終わって気が抜けてきたからか、時雨は痛みを堪えながらそう呟いた
そしてフレスベルグは、妖精が引いてきたストレッチャーに、時雨を優しく下ろすと
『整備妖精、彼女の装備を外せるか?』
と別の妖精に問い掛けた
すると、整備妖精が
「少々お待ちを……」
と言って、時雨の艤装の点検を始めた
そして、少しすると
「外します」
と言って、一つずつ近くの台に外した艤装を乗せていった
そして、全部外すと
「医務室へ!」
と衛生妖精が、引いていった
それを見送った後、フレスベルグは吹雪に視線を向けて
『君は、エウクレイデス艦長に会ってもらうが、構わないか?』
と問い掛けた
その問い掛けに、吹雪は
「はい、構いません! お礼が言いたいので!」
と言った
その後、吹雪達の艤装も外してから、艦長室に向かった
『エウクレイデス艦長、副艦殿を連れてきました』
『入室させて』
フレスベルグが報告すると、中から入室させるように促された
それを聞いたフレスベルグは、吹雪に
『中へ』
と言って、ドアを開けた
そして吹雪は、中に入った