「……査察ねぇ」
そう呟いたのは、一枚の書類を見ていた祐輔だった。
それが届いたのは、今朝方のことであった。査察の名目は、最近急に増えた艦娘の扱いがどうなっているか、ということだった。
拒否する理由もないので、祐輔は査察を受け入れることにした。
そして、翌日
「祐輔さん、査察官がお出でになりました」
「ん、まあ。こっちは呼ばれない限りは不干渉で……余計な軋轢は生みたくないしね」
吹雪の報告を聞いた祐輔は、書類を捌きながら返答。すると、吹雪は
「しかし、今のタイミングですか……」
「……スピリッツの皆さんには、海底に隠れて貰ってるよ」
吹雪が何を言いたいのか分かり、祐輔はそう呟いた。
査察部隊が要らぬことをしないようにと、スピリッツの二隻には事前に付近の海底に隠れてもらっている。
何やら嫌な予感がしたのだ。
「さて……僕は、普段通りに……」
と祐輔は、今まで通りに書類を捌こうと新しい書類に手を伸ばした。
その時、電話が鳴り
「……もしもし?」
それに、吹雪が出た。少しすると、マイク部分を押さえて
「祐輔さん……」
と吹雪が受話器を掲げた。
それを見た祐輔は、自分の机の受話器を持ち上げてからボタンの一つを押して
「お電話代わりました。榊原です」
と出た。
『査察部隊の天瀬大佐だ。伺いたいことがある。今すぐ、港に来い』
「……分かりました」
要件を聞いた祐輔は、執務室から出て港に向かった。
港に到着すると、小太りの男。
「お話しとは?」
「こちらの情報では、ここに所属不明の艦が二隻停泊していたとあったが……どこに匿った?」
祐輔が問い掛けると、天瀬大佐はそう問い掛けてきた。
「はて、何のことでしょうか?」
「惚けるな」
祐輔が首を傾げると、天瀬大佐は拳銃を抜いて突き付けた。
それを見た吹雪は、即座に護衛の為に拳銃を抜いて構えた。それを一瞥した天瀬大佐は、鼻で笑いながら
「どういう教育をしているのかね? たかが駆逐艦程度が大佐に歯向かうとは」
と侮蔑した表情を向けた。
それを聞いた祐輔は、そんな天瀬大佐に
「……その情報の出所は何処ですか?」
と問い掛けた。
スピリッツが停泊しているという情報を知っているのは、元帥と祐輔を含めて僅か一握り。
天瀬大佐が知る筈が無かったのだ。
「貴様に、教える理由があるか?」
天瀬大佐はそう言いながら、拳銃の安全装置を解除し、それに触発されてか吹雪も拳銃の安全装置を外した。
ふと気付けば、天瀬大佐の護衛達も武装を構えていた。数は不利。どうするべきか、祐輔は考えていた。
そして
「もう一度言います。そちらの言う所属不明の艦というのは知りません。」
と祐輔は告げた。
「そうか……」
天瀬大佐がそう呟いた直後、炸裂音が鎮守府全域に鳴り響いた。