乾いた炸裂音が響き渡った、その直後、今度は甲高い音が響いた。
天瀬大佐が撃った弾丸は、空中で火花を散らして、祐輔には当たらなかった。
「なっ!? 何が起きた!?」
天瀬大佐は驚き喚くが、祐輔はその理由に即座に思い至った。
(……天さんですか)
AGF天ミナ改、その特殊装置たるミラージュコロイド。それを展開すれば、あらゆるレーダー、光学カメラ、肉眼で捉えることは出来ない。唯一、ある装置だけがミラージュコロイドから発せられる電磁波を拾うことが出来るが、それが無い天瀬大佐には気付ける理由が無い。
「このっ!?」
天瀬大佐は更に数発発砲するが、一発も祐輔に当たらない。祐輔は、天瀬大佐から目を放さずに立っている。
そして気付けば、天瀬大佐が何回引き金を引いても弾は出なくなっていた。つまり、弾切れである。
「貴様ら! 何を呆けている! 早く撃たないか!!」
天瀬大佐が怒号を飛ばすと、呆然としていた部下達は我に返り、次々と小銃を構えてから銃撃しようとした。
だが
「これ以上」
「撃たせるとでも?」
気付けば周囲を、艤装を展開し機銃を指向した艦娘達が包囲していた。その数は、六人。
鳥海、摩耶、球磨、多摩、由良、阿武隈。その六人が、全機銃を指向し、何時でも撃てるようにしていた。
「この……兵器ごときが……!」
天瀬大佐は怒り心頭と言った表情で、六人を睨み付けた。しかし、六人は何処吹く風と言った感じで機銃を向けている。
その六人は、祐輔艦隊の古参艦娘達で、幾多の修羅場を越えてきている。
その彼女達にとって、人間一人の怒気程度はそよ風程度にしか感じられない。
「なるほど……貴方の後ろ楯は、強硬派ですか……となると、トラックに居る金瀬少将辺りですか?」
「貴様ごときが、金瀬閣下の名を口にするな!」
「……語るに落ちる、とは貴方の為にある言葉ですね。天瀬大佐……さて、仮にも上官に対して発砲……見過ごす理由は、こちらにはありませんね」
祐輔は呆れた様子でそう呟くと、指を鳴らした。その直後、天瀬大佐一行の背後に人影が現れて、一瞬にして全員を気絶させた。
「ったく、背後への警戒が無いとか……軍人として二流以下だよ」
「ありがとうございます、川内さん」
天瀬大佐一行の背後に現れたのは、川内であった。
軽巡洋艦娘としての高い身体能力と、軽い身のこなしはまさに忍者である。
「いやいや、川内さんの隠密はかなりですよ? 僕も、半径50まで近付かれないと気付きませんよ」
「私としては、半径10まで気づかれないで近付くのが目標!」
川内は、一体何を目指しているのか。
それが心配になる祐輔だった。実を言えば、今居る場所を中心に半径500以内に二個連合艦隊規模の艦娘が、即応態勢で待機しているのだ。
更には、海中ではスピリッツのMS隊も待機していた。
その証拠に、近くの海面が盛り上がり
『まさか、こちらの情報が漏れているとはな』
と赤いMS、スピリッツMS隊総隊長のフェニックスが呟いた。
「元帥に内偵を頼みましょう。吹雪ちゃん、悪いけど彼等を拘束。適当な牢屋に入れておいて」
「わかりました!」
祐輔の指示を受けた吹雪は、拳銃を仕舞った後に天瀬大佐一行の拘束を始めた。
ポケットから結束バンドを出して、手首をきつく拘束。その後、フェニックスの後から現れたスピリッツのMS隊の手伝いを借りて、全員を牢屋に収容。
それを確認したABF水中仕様が、二隻に特定の周波数で浮上するように通信した。
しかし、これはまだ始まりに過ぎなかった。