艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

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醜悪

「強硬派に、情報が?」

 

『はい。それにより、天瀬大佐が査察として来訪。スピリッツのことを聞いてきまして。表向きのことを告げたところ、拳銃を発砲。弾はステルスを起動させたスピリッツの機体により防がれましたので、僕は無事です』

 

「実力行使に踏み切るか……」

 

祐輔からの報告を聞いて、十蔵は両手を組んだ。

まさか、実力行使に出るとはと思っていなかったようだ。

 

「……今はどうなっている?」

 

『はっ。天瀬大佐一行は、拘束した後に牢に収容しました』

 

「分かった……天瀬大佐一行については、憲兵隊に引き渡してくれ……上官への発砲……殺人未遂で逮捕させる」

 

『分かりました』

 

十蔵の指示を受けて、祐輔は敬礼。それを見た十蔵は

 

「情報が漏れた件に関しては、こちらで内偵を行う……君は、通常通りに」

 

『はっ』

 

そのやり取りを最後に、通信は終わった。

すると十蔵は、振り向き

 

「加賀、人選は一任する……強硬派の内偵を始めろ」

 

「分かりました」

 

と秘書艦の加賀に、指示を出した。

そして十蔵は、受話器を持ち上げて

 

「私だ……すまんが、分隊規模を第三パラオに送ってくれ……検挙対象は、天瀬大佐とその部下数名。罪状は殺人未遂だ……ああ、頼む」

 

とやり取りすると、受話器を戻した。

どうやら、憲兵隊本部に連絡したようだ。そして、これが後に、強硬派一大検挙と呼ばれる事件の幕開けである。

それから数日後。

 

「……ふむ」

 

祐輔は資源に関する資料を確認し、判子をポンと押してから明石に差し出して

 

「許可します。始めてください」

 

と告げた。

 

「分かりました!」

 

書類を受け取った明石は、執務室から退室。そんな明石と入れ替わる形で、エウクレイデスが入ってきて

 

「失礼するわね」

 

と言いながら、机に近づいた。

 

「エウクレイデスさん、どうしました?」

 

「そちらの長門に関する報告よ。やっぱり、かなり長期化するわね」

 

祐輔の問い掛けに、エウクレイデスはそう答えた。心因性による失明。それにより、長門はまともに生活するのも困難になっていた。

 

「元より、簡単に治るとは思っていません……最善を尽くしましょう」

 

「そうね。やるだけやるわ」

 

祐輔の言葉に同意し、エウクレイデスは頷いた後に退室。それを見送った祐輔は、窓から空を見上げて

 

「……儘ならないなあ……」

 

と呟いた。

ほぼ同時刻、第二トラック泊地。

 

「ち……あのバカ者め……やらかしおって……」

 

そこでは一人の将官が、日本本土からの新聞を読んで舌打ちしていた。

その将官の名前は、金瀬豪一(かなせごういち)少将。

天瀬の上官にして、天瀬にスピリッツの詳細な情報を入手してこいと口頭で命じた張本人である。

しかし金瀬が見ている新聞には、天瀬が上官を銃撃し逮捕されたと記されてあり、他にも余罪が複数あるとしていると書かれてある。

そこまで一読した金瀬は、新聞をゴミ箱に放り捨てて

 

「あのような役立たず、もう知らん」

 

と吐き捨てるように言った。

金瀬の持論は、役立たずは百害あって一理なし。であり、それを証明するかのように、一度でも失敗した者は容赦なく切り捨てている。

 

「……さて……そもそもが、あのような青二才の若僧が、私と同じ将官になっているというのがおかしいのだ……艦娘だがなんだか知らんが、たかが兵器に好かれる必要など無い……穏健派の連中は生温いのだ……絆の力? は、馬鹿馬鹿しい……そんな目に見えん力に頼る時点で、奴等に軍人たる資格などない……今こそ、軍は私のような軍人の家系の者が仕切り、果てには日本が世界を取り仕切るのだ……」

 

金瀬はそれが当然だと言わんばかりに、恍惚とした様子で語った。

金瀬の実家たる金瀬家は、長い間日本の軍に多数の優秀な軍人を輩出している家系で、金瀬はそれを誇りに思っていた。

それ故か、金瀬は一般選出されている提督達を快く思っておらず、数多の妨害をしてきた。

資源をわざと滞らせたり、遠征に出ている艦隊の航路上に数多くの機雷を仕掛けさせて、遠征を失敗させたり。

中には、ケッコンカッコカリに至った艦娘を襲撃させて轟沈させたりした。

それらが表沙汰になれば、金瀬は間違いなく失脚するだろう。しかし、それが露見しないように金瀬はあの手此の手の策を張り巡らした。

配下の提督に極秘裏に滷獲させた深海側の兵装を横流しし、その兵装を装備させて襲わせたり。自身の艦娘を捨て駒にして深海悽艦を誘導し、吹き飛ばさせたりと。まさに多岐に渡る。

そうやって金瀬は、少しでも自身の情報を探り始めた提督達を排除してきた。

そして、死んだ提督達に対し、何時も

 

「その程度のことも予想出来ない役立たずが、軍に居る必要は無い」

 

と言うのだ。

 

「さて……あの若僧をどうしてくれようか……」

 

と金瀬は、指で机を軽く叩き始めた。

だが金瀬にとって予想外だったのは、スピリッツの戦力と能力だったのは、この時は予想しようがなかった。

そう、隠密に特化した機体が潜入していようとは、予想していなかったのだった……

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