艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

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隠者

二隻が艦娘となって、少し経って数ヵ月。

二人は一室で、今現在秘匿行動中の機体からの報告文章を読んでいた。

 

「……本当に、人は同じ過ちを繰り返します……」

 

「そうね……」

 

その文章には、ある提督がしている汚職の数々が記載されていた。公文書偽造、違法転売、艦娘に対する扱いと挙げたらキリが無い。

 

「……私達は、正義の味方ではありません……」

 

アークエンジェルは、そう言いながらゆっくりと目を閉じた。スピリッツは傭兵であり、傭兵とは戦いを仕事にお金を貰う仕事だ。

中には傭兵なんか嫌いだと言う人も、少なからず居るだろう。それが、悪いことだとは言わない。

悪く言えば、傭兵というのは敵対する相手を殺してお金を貰う人殺しだ。

死の商人に近いだろう。だが

 

「しかし……人の業で泣く子達が居るのなら……救う理由にはなります」

 

アークエンジェルはそう言って、目を開いた。その目には、強い意思を感じさせる光があった。

 

「隠密作戦で行きます……」

 

「はいはーい。動かすのは少数。妨害能力持ちの機体がいいわね……」

 

そこまで言うと、二人は揃って目を閉じた。どうやら、部隊の中から最適な機体を選んでいるようだ。

そして、数秒後。

 

「彼等を出します……さあ……隠者部隊(ハーミット)出撃……まず情報を得るために、保護しましょうか」

 

とアークエンジェルは告げた。

それから、数日後。

 

「私、ここまでかな……」

 

海原を、一人の艦娘が航行していた。

その艦娘は、左手に紅白に塗られた弓を持ち、緑系の服を着ているが、左足の部分にづほの文字が見える。

彼女は、祥鳳型軽空母の瑞鳳だ。

彼女は第二トラック泊地所属の艦娘で、今回の敵地強行偵察艦隊の旗艦だった。

偵察は概ね成功し、敵地の艦隊規模や姫級の有無を知ることが出来て、後は帰還するだけだった。

だが、そこに敵艦隊が襲撃してきた。

もちろん瑞鳳の艦隊は奮戦したが、相手が強すぎた。仲間は一人ずつ連絡を断ち、気づけば瑞鳳だけになっていた。

そして瑞鳳も、被弾から攻撃は出来なくなっていた。

燃料も、残り僅か。

 

「……どうして、こうなっちゃったかな……」

 

瑞鳳はポツリと呟き、過去を振り返った。着任した時は、誰かのために一生懸命頑張ろう。と意気込んでいた。

だが、提督からの扱いは悪かった。

瑞鳳がどんなに戦果を上げても、褒めてもらうどころか見向きすらされなかった。

そしてある日、同時期に着任した重巡洋艦の鈴谷が沈んでしまった。

原因は、鈴谷が迂闊に前に出すぎたために戦艦級の集中砲撃を受けたらしい。

それに関して、提督は

 

『死んだのは、あやつが無能だったからだ。無能な奴は不要』

 

とだけしか言わなかった。その時の提督の目は、瑞鳳を見ていなかった。

そして、ようやく瑞鳳は理解した。提督は、瑞鳳だけでなく、艦娘を道具としか見ていないと。

しかも、一回でも失敗した艦娘には容赦しなかった。

ある日、一人の駆逐艦娘が遠征でバケツを拾えなかった。それだけで、提督はその駆逐艦娘を単艦で情報収集に向かわせて、轟沈させるまで情報を送らせた。

怖かった。無線で、その駆逐艦娘の悲鳴と嘆願が聞こえたが、提督は眉ひとつ動かさずに情報を送らせ続けた。

そこから瑞鳳は、機械的に動くようになっていた。生きるために。

 

「……どうすれば、よかったのかなぁ……」

 

涙を流しながら瑞鳳は、曇り空を見上げた。

それが、敵艦載機から瑞鳳を守っていた盾だった。だが、雲の切れ間が少しずつ増えてきている。もう、長くは保たないだろう。

 

「……お姉ちゃん……私、どうすればよかったのかなぁ……」

 

大好きで、泊地で唯一の癒しだった姉の祥鳳。

祥鳳は、心配するかなぁ。と瑞鳳が思った時、滔々機関が止まった。燃料が無くなったようだ。

そこに、轟音と共に数本の水柱が立ち上った。

どうやら、敵艦隊に捕捉されたらしい。

 

「……お姉ちゃん……先に逝くね……」

 

瑞鳳はそう言って、ゆっくりと目を閉じた。だが、何時まで待っても攻撃がこない。それを不思議に思った瑞鳳は、恐る恐ると目を開けた。

そして瑞鳳の視界に入ったのは、緑色に輝く粒子。

 

「……なに、これ……?」

 

それが何なのか分からず、瑞鳳は疑問の言葉を漏らした。そして、瑞鳳は気付いた。

 

「まさか……深海が、全滅した?」

 

遠方に、夥しい数の黒煙が上がっている。その方向は、深海艦隊が瑞鳳を追い掛けてきていた方向だった。

 

「……一体……」

 

『確認するが、君も第二トラックの艦娘かな?』

 

声のした方向に顔を向ければ、緑色の光を吹き出す人型が居た。

 

「……あ、貴方は……?」

 

『俺は、傭兵部隊スピリッツ、ハーミット隊所属のダブルオーザンライザー・XXXX……まあ、好きに呼んでくれ』

 

これが、彼女の。否、彼女達の救いになる者との出会いになる。

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