「……これは、本当ですか?」
『間違いないわよ。第二トラック所属の瑞鳳って子に聞いたからね』
パラオ泊地の執務室でエウクレイデスからの報告を聞いた祐輔は、思わず唸りながらパソコンを見た。
そこには、第二トラックの提督が行っているとされる悪事が事細かに書かれてある。
捨て艦、艦娘に対する扱い、不法な艦娘運用、etcetc……
挙げたらキリがなく、逮捕されるのは確実だろう。
しかし、逮捕されていないのは
「……第二トラック……いえ、下手したらトラック全域の憲兵が買収されてる可能性が高いですね……」
第二トラックの提督、金瀬少将により第二トラックの憲兵達は買収され、見てみぬ振りをしているのだろう。
でなければ、金瀬少将は逮捕されていておかしくない。
「……憲兵隊も、大規模に居なくなるかな……そうなると……」
と祐輔が考えていると、エウクレイデスが
『とりあえず、私達はまだ情報収集と第二トラックの艦娘達の保護を続行。先に保護した娘達に関しては、既にそちらに送ってるわ。護衛に、デルタカイを着けてる』
「わかりました。こちらでも、口裏を合わせておきます」
その会話を最後に、エウクレイデスとの通信は終わった。そして祐輔は、吹雪を呼び
「吹雪ちゃん、長門さん、加賀さんの二人を呼んできて。多分、そろそろエウクレイデスさんが送ってくる娘達がVTOLで来る筈ですから、口裏を合わせるよう話し合います」
と告げた。
それから数十分後、一機のVTOLがパラオ泊地に到着した。その中から、瑞鳳を先頭に陽炎、名取が降りてきた。そして、僅かに遅れてデルタカイが着地し
『ガンダムデルタカイ・フレスベルグ、彼女達の護衛で来ました。引き渡しの手続きをお願いします』
と言ってきた。それを聞いて、吹雪が
「司令官に代わり、総秘書艦の私。吹雪が彼女達を引き取ります。お疲れ様でした」
と敬礼しながら、瑞鳳達を迎え入れた。
そして、フレスベルグが踵を返すと
「あ、あの! ありがとうございました!」
と瑞鳳が頭を下げた。
すると、フレスベルグは振り返り
『礼ならば、彼等に……我々に調査を依頼したのは、そちらの方々だからな』
と言って、離れた。
それを見送った後、吹雪は
「それでは、着いてきてください。今から話し合いをしましょう」
と瑞鳳達に提案し、瑞鳳達も頷いてから吹雪の後に続いたのだった。
その頃、第二トラック泊地執務室。そこで金瀬少将は、唸り声を漏らしていた。
「何が起きている……」
ここ数日、金瀬指揮下の艦娘達が次々と消息を絶っている。中には腕利きだった重巡洋艦娘の鳥海も居たのだが、突如起きた通信不良とレーダーロストから行方知れずになってしまった。
鳥海率いた艦隊も、全員が行方不明になり、最近は艦隊の立て直しに時間が取られてしまい、思うように戦果が挙げられない。
「ええい……忌々しい艦娘共め……! 道具なら道具らしく、使い潰されるのが筋だろうに……!」
金瀬は予想外に時間を取られたことに苛立ち、持っていた鉛筆を真ん中からへし折った。
だが、彼は知らない。今海軍内では、対主義者一斉検挙の準備が着々と進んでいることに。