スピリッツが第二トラック泊地に関する情報収集を始めて、約一週間。その間スピリッツは、直接潜入の傍らで第二トラック泊地の艦娘達を助け続けた。
「……まさか、私達を助ける存在が居るなんて……」
「憲兵ですら、あの提督の言いなりだったのに……」
『……これで、第二トラックの憲兵は件の提督に買収されてることが確定したか……』
新たに助けた鳥海と千歳の二人の話を聞いて、イクスフォスは腕組みしながらそう呟いた。
問題は、買収されたのが第二トラックの憲兵だけなのか、それともトラック泊地全域の全憲兵なのか、ということになる。
今や人員不足は世界中で深刻であり、帝国海軍に至っては急速な戦線拡大に伴う拠点の増設で、更に深刻化していた。
特に憲兵が顕著で、本土では一部の拠点は憲兵が居らず、本部の憲兵が巡回。または、秘匿捜査している位だ。
もし一拠点の憲兵全員が逮捕されたら、人員不足は更に深刻化してしまうだろう。
『それを悩むのは、俺達の仕事ではないがな……』
イクスフォスはそう判断すると、考えるのを止めた。
そうして、数日後。第三パラオ
「こちらが得た情報は、以上になります」
『ご苦労だった……しかし、ここまでとはな……こちらの予想以上だ……』
「自分もです……まさか、ここまでやるとは思いもしませんでした……」
元帥の言葉に、祐輔は同意した。
金瀬少将のことを元帥とスピリッツで調べ続けた結果、艦娘の人身売買が発覚したのだ。もちろん、艦娘を売買することは違法であり、発覚すれば軍人は銃殺刑は免れない。企業の場合はその企業の廃業だけでなく、莫大なお金を払うことになる。
「問題は金瀬少将の逮捕から連なるだろう、反発……特に、主義者達が反乱する可能性が高いかと……」
『確かにな……本部にも、少なからず主義者は在籍している……』
帝国海軍も、一枚岩ではない。今は、対深海悽艦という人類の大敵と戦うために纏まっているに過ぎない。
だが、もし派閥内の大戦果を挙げている将官が逮捕されたとなれば、反発からの反乱は避けられなくなるだろう。
『しかし、その心配は無用だ……既に、策は練っている』
「……分かりました。問題は、憲兵の人員不足ですが……」
『そちらも、対策している……貴様には、先に話しておこう』
元帥のその言葉に、祐輔は軽く驚いた。確かに祐輔も将官だが、今はパラオの提督となっている。以前までは横須賀の提督だったために、時折本部に出向し、元帥の補佐をしていた。
だが今は、その権限は無い筈である。
『確かに、今の貴様はパラオの提督だ。だが、私の部下という立ち位置は変わらん……』
「は、分かりました……して、その対策とは?」
『一部の妖精を、戦力化。そこから、憲兵隊に所属させる』
「な……」
それは、妖精が現れてから誰も考えたことが無かったことだった。確かに、一部の妖精は非常に高い能力を有していて、そういった妖精は整備や医療に携わさせている。しかし、戦力化させるとは誰も考えなかったのだ。
『これを考えついたのは、本当に偶然でな……半年程前に小銃のような物を持っている妖精と軍刀を持っている妖精を見つけてな……加賀と長門に訳して貰ったら、一部の妖精は陸戦能力を有していることが発覚した。今は、その装備も開発中だが……それを利用する形になるが、憲兵隊の隊長と会議して、妖精を訓練し憲兵に組み込むことを決定した』
「そんな妖精が……」
元帥の話を聞いて、祐輔は思わず腕組みした。
そもそも妖精は、未だに未解明な部分が多分にある存在で、艦娘に深く関わっているとしか判明していない。
『故に憲兵の人員不足は、何とかなる……後は、主義者達の一斉検挙だ』
「その為なら、こちらも粉骨砕身する所存です」
祐輔はそう言いながら、胸元に手を当てた。実は祐輔は、提督でありながら高い陸戦能力も有している。
それにより、陸戦隊の指揮権限も有しているのだ。
『その時になれば、通達する』
「はっ」
そうして、祐輔と元帥の通信は終わった。後は、時を待つのみ。