艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

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海中で

「いったい、どういうことだ!?」

 

と男、第二トラック泊地の提督たる金瀬は、怒鳴りながら拳を机の天板に叩き付けた。すると、執務室に来ていた一人の艦娘。

翔鶴型二番艦の瑞鶴は

 

「だから、遠征中だった第四艦隊は、全員ロストしたって言ってるのよ」

 

と呆れた様子で、報告した。

 

「全員、一斉にか!?」

 

「ええ、そうよ。レーダーも通信も、一斉に消えたわ」

 

金瀬の怒声混じりの問い掛けに、瑞鶴はシレッと答えながら詳細が書かれた書類を金瀬の机に軽く放るように置いた。

 

「けど、あの海域は元々、敵姫級の支配圏で、敵精鋭艦隊の待ち伏せが予想されてた。そこに、非武装で遠征艦隊を派遣するって決めたのは、提督よ?」

 

瑞鶴がそう言うと、金瀬は瑞鶴を睨み付けて

 

「なんだ、私が悪いとでも言いたいのか!?」

 

と怒鳴った。気が弱い艦娘だったら、萎縮してしまう程の声量と怒気だった。

 

「あら、自覚あったんだ」

 

「貴様! 兵器の分際で!?」

 

金瀬は怒りからか、懐から拳銃を抜いて、瑞鶴に向けた。だが瑞鶴は、落ち着き払って

 

「へぇ、この基地唯一の空母を撃てるの?」

 

と問い掛けた。

その言葉に、拳銃を持っていた手が震えた。ここ最近、原因不明の艦隊の消息不明事件で、第二トラックの戦力はがた落ち。特に、空母は今居る瑞鶴のみとなってしまった。空母の有用性は金瀬も理解しているおり、処分で射殺が出来なくなっていた。

 

「言っとくけど、戦艦もよ? 駆逐艦は数は多く居るけど、練度はお察しね。事実、壊滅よ」

 

「ぐっ……!」

 

確かに、瑞鶴の言葉通り、以前に比べたら壊滅的打撃を受けていた。今深海艦隊の襲撃を受ければ、間違いなく全滅するだろう。

 

「じゃあね、提督」

 

瑞鶴は振り向きながら手を振って、ドアを開けて出ていった。金瀬は拳銃を投げ捨てて

 

「兵器風情が、粋がりおってぇぇぇぇ!!」

 

と怒声を挙げ、近くの物に当たり散らし始めた。

 

「私が有効活用してやっているから、今まで生きてこれたのではないか! それを忘れおって! おのれおのれおのれ!!」

 

幾つかの家具を壊した金瀬は、荒く呼吸をしながら

 

「しかし、何が起きている……まさか、深海の新兵装か……?」

 

と考え始めた。しかし、答えは出ない。詳細を知らないのだから、仕方ない。

一方その頃、第二トラック泊地から少し離れた海域の海中

 

「本当に、ありがとうございました……」

 

と睦月型の艦娘。弥生は、頭を下げた。

 

「まさか、非武装で居るなんて思わなかったわよ……焦ったわぁ……」

 

弥生の言葉を聞きながら、エウクレイデスは頬を掻いた。弥生が率いていた艦隊は、遠征の帰路に就いていたが、そこに空母ヲ級F改率いる空母機動艦隊に襲われた。非武装で、持っているのは燃料や弾薬。

攻撃が直撃すれば、爆発が起きて致命的なダメージを受けるだろう。

直接的な足の速さでは遠征艦隊の方が速かったが、敵の艦載機による襲撃。

もはや、全滅しかないかも。と諦めが滲み始めた時、海中からエウクレイデスが出撃させたMS隊が援護を始めた。

そこからはあっという間だった。まず、制空権を確保し、空母ヲ級F改を両断し撃沈。

深海艦隊を殲滅後、損傷していた艦隊をエウクレイデスに保護。ある程度修理した後、弥生がエウクレイデスと話し合っていたのだ。

 

「それで、非武装にされた理由は……?」

 

「遠征艦隊に、武装は勿体ない。他の艦の重武装化用に確保する……と」

 

エウクレイデスの問い掛けに、弥生は少し俯きながら説明した。

確かに、理には叶っているだろう。だが、危険と分かっている海域への遠征でも武装をさせなかった。

その結果が、6名中3名が大破。1人が中破した。

弥生も、入手した物資を投げてでも離脱に使おうかと思考した程だ。

会話を終えると、弥生は宛がわれた部屋に向かった。

その手前の廊下には、イクスフォスが居たのだが、そのイクスフォスに肩車の形で文月が乗っていた。

 

「文月……何してるの……?」

 

「あ、弥生姉さん。この人が遊んでくれるって」

 

弥生が問い掛けると、頭に包帯を巻いた文月が笑顔を浮かべながら答えた。

 

「イクスフォスさん……ありがとうございます」

 

『いや、構わない……子供は、笑顔が一番だ』

 

弥生が頭を下げながら言うと、イクスフォスは文月を両手で高く持ち上げた。

 

『本当なら、俺達が表だって動ければいいんだがな……許してくれ』

 

「……制約があるようですから、仕方ないですよ」

 

イクスフォスは文月を下ろした後、二人に頭を下げた。やはり、いくら戦う力を持つ艦娘とは言っても、見た目は幼い少女だ。

イクスフォスからしたら、戦うべきは純粋な戦闘兵器たる自分達の役目と考えていた。

 

「でもぉ、イクスフォスさんが来てくれたから、私達は助かったんだ。だから、ありがとうね」

 

『……あぁ』

 

文月が笑顔を浮かべながら感謝の言葉を述べると、イクスフォスはコクりと頷いた。

そして、これから数日後に大きく動くことになる。

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