艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

36 / 113
作戦開始

「さて……ここら辺が、例の海域だけど……」

 

と呟いたのは、第二遠征艦隊の旗艦を勤める長良である。その長良が率いるのは、夕立、時雨、暁、響、霞の五隻。しかし、その全員が実戦経験が豊富なメンバーだ。

 

「旗艦の長良から、艦隊に通達! そろそろ、遠征第三艦隊が襲撃を受けた海域に入る! 総員、警戒せよ!」

 

『了解!』

 

長良が無線で呼び掛けると、艦隊の全員から元気な声で返答が来た。その声音から、緊張した様子はしているが、硬くなってはいないと分かった。

 

(これなら、作戦通りにいけるかな……)

 

と長良が思った時だった。視界の端で、何かが光った。それと同時に、レーダーが効かなくなった。それは、報告にあった襲撃前の現象と一致する。だから長良は、通常の無線ではなく、探照灯を使ったモールス信号。光通信で、対空警戒態勢を取るように通達。そして長良は、すぐに主砲たる14cm連装砲にある砲弾を装填。そして、真上に撃った。

 

「気付いて、スピリッツ!」

 

長良がそう言った数秒後、空中に二発の発光弾が炸裂した。色は、緑と赤。それが、事前に取り決められていた救援信号だった。

 

「これで……つっ!?」

 

信号弾を撃った直後、長良は背筋に悪寒を感じて回避機動を取った。その直後、連続して水柱が形成される。

 

「この威力……口径は駆逐艦の主砲クラスだけど……この連射は……!?」

 

長良は回避機動を取り続けるが、速射砲を越える連射速度で徐々に近づいてくる。

 

「くあっ!?」

 

とうとう、避けきれなかった一発が長良が右手に持っていた主砲に命中。爆発する直前に投棄したから、長良は無事だが、攻撃手段の一つを失った。

 

「誰も来ないで! 対空砲撃を!!」

 

長良は時雨が援護に近づいてこようとしていることに気付き、大声を挙げながら制止。その直後、光の弾が長良の腰部の砲塔に直撃。爆発を起こした。

 

 

「ああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

爆発の熱と破片が長良を襲い、長良は激痛から絶叫を挙げた。そうして長良は、バランスを崩して転倒。

 

「あ……ぎっ……づうっ……!?」

 

痛みで身悶えながら、長良は自身の傷を確認した。腰の右側面は爆発の炎の火傷と破片が突き刺さり、見るも無惨な有り様になっていた。

 

(ダメコン程度じゃ……立て直せない……)

 

歴戦の軽巡洋艦娘の一人として、長良は痛みを堪えながら冷静に判断していた。今回の作戦に先駆けて、長良達は必ずダメコンことダメージコントロールを装備していた。何よりも、生還率を上げるためだ。しかし、予想を越えたダメージに対処が追い付かない。

 

「祐輔……さん……私は……ここまで、みたいです……ごめん、なさい……」

 

長良は、自身に近づいてくる人型。マラサイを見ながら、覚悟を決めた。その時、長良のすぐ近くの海面が盛り上がって、新たに一機の人型が姿を現した。その人型を、長良は知っていた。

 

「スピリッ……ツの……フレス……ベルグ……さん」

 

『すまない、来るのが遅くなってしまった……』

 

長良が呼ぶと、フレスベルグは謝罪しながら装甲が開いていく。その隙間から溢れる緑色の光は優しい感じがして、長良は思わず安堵の息を漏らす。

そしてフレスベルグは、左腕で長良を優しく抱き抱えながら、右手のビームマグナムを出力調整して発射。先頭を飛んでいたハイザックを撃破した。

 

『フェニックス1よりスピリッツ全機に通達! 敵を殲滅せよっ!!』

 

『了解!!』

 

その声が長良の耳に聞こえて、長良はスピリッツが間に合ったことを悟り

 

「後は……お願い……します……」

 

と力無く頼むと、目を閉じた。フレスベルグのスキャンでは、安堵から気を失っただけらしい。それを確認したフレスベルグは、ビームマグナムを腰に懸架すると、長良をお姫様抱っこで抱き抱えて、近くに浮上したエウクレイデスまで運ぶことにした。

そして、帝国海軍とスピリッツの共同反抗作戦が始まる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。