「……なんですって? すいませんが、もう一度言ってください」
『ですから! 敵の艦隊の中に沈んだ筈の陽炎ちゃんを確認しました! 艤装から蒼い炎が噴き出しているのを確認しています!! 今は不知火ちゃんと交戦中です!』
困惑した様子で祐輔が問い掛けると、最前線に出撃した古鷹からそう報告がされた。
(前パラオ水雷戦隊有力駆逐艦の一人、陽炎……確か、元大佐により沈んだ駆逐艦娘の一人……それが、生きて深海艦隊に居て、しかも、蒼い炎を噴き出している? 一体、どういう……)
と祐輔が困惑していると、通信で
『その彼女、こちらで対処させていただきます』
とアークエンジェルから声が届いた。
「アークエンジェルさん……しかし……」
『その蒼い炎というのは、恐らくは我々が知るある特殊装備です。我々が対処する方が迅速かつ確実です。それに、もしかしたら戻せるかもしれません』
アークエンジェルのその言葉に、祐輔は僅かに押し黙ってから
「……お願いしても、よろしいですか?」
『承りました。お任せを』
「……古鷹さんに通達! 以後、件の陽炎ちゃんに関しては、スピリッツが対処するので、不知火ちゃんを援護し共に離脱せよ!」
「了解!!」
祐輔の指示を受けて、オペレーター席に座っていた大淀は古鷹に祐輔が発した指示を通達。そして祐輔は、戦況マップに表示されている各艦隊の戦況を見て
「……もしかして、陽炎ちゃんだけじゃないのかもしれない……各艦隊に問い合わせて。敵の戦力に、艦娘が混じってないか」
「わ、わかりました!」
祐輔の指示を聞いた大淀は、まさかという表情をしながらも各艦隊に問い合わせた。その数十秒後
「祐輔さん! 機動連合の第二艦隊から、敵に初霜と叢雲、夕立を確認してると!」
と大淀から、祐輔の予想した答えが教えられた。それを聞いた祐輔は、直ぐに
「スピリッツにデータを送って!」
と指示を飛ばした。
場所は変わって、最前線。
「不知火ちゃん、後退して!」
「古鷹さん! しかし!?」
古鷹の指示に納得いかないのか、不知火は陽炎が牽制で撃ってきた機銃弾を盾で防御しつつ、反論しようとした。しかし古鷹は、そんな不知火の肩を掴み
「スピリッツの方が対処する! 彼等を信じよう!!」
と泣きそうな表情で告げた。古鷹の性格は、不知火もよく知っている。優しく仲間思いな古鷹は、本当だったら陽炎をどうにかしたい筈だ。しかし、どう対処すれば分からない。だったら、対処方法が分かっているスピリッツに任せた方が確実である。
「……わかりました」
「うん、良かった……不知火ちゃん、爆雷を使って。深度は、最低に設定」
「了解」
古鷹の指示に従って、不知火は艤装に取り付けてあった爆雷を投射。陽炎と自分達の間に、巨大な水柱を作って目眩ましにした。その間に、不知火と古鷹は陽炎と距離を取った。
そこに、上空から黒い彗星が落ちた。
『なるほど……ナイトロか……これは、分かる……それに後期型ならば、まだ助かる余地があるな』
黒い彗星、フレスベルグは、錨を構えて投げようとしていた陽炎の腕を抑えながら、冷静に観察していた。
ナイトロ後期型。ナイトロには、三段階で開発されており、初期型は一回発動しただけでパイロットを廃人にしてしまっていた。
中期型はそれよりもマシだが、出力調整を失敗するか時間超過によりパイロットが廃人になってしまっていた。
そして、後期型。後期型は最高出力がかなり低く設定されており、数回に亘って発動すれば、ほぼ確実にパイロットを強化人間にすることを可能としたサイコミュ装置である。
しかしそれに伴って、起動回数が少ないと投薬が必要だが人間に戻れる可能性があるのだ。
フレスベルグは、陽炎が撃った砲弾を容易く回避すると、ビームサーベルを抜刀。長さを短く。それこそ短刀レベルまで短くすると、陽炎が背負っている艤装のある一ヶ所に突き刺した。
すると、艤装から噴き出していた蒼い炎が消えて、陽炎の頭を覆っていた機械の仮面が取れた。
「あ……」
『む』
仮面が取れると陽炎は倒れそうになったが、それはフレスベルグが支えることで未然に防がれた。そしてフレスベルグは、陽炎を抱き抱えると
『トライアド1よりマザー2、要救助を一名確保した。一度帰投する』
『了解。道中は、トライアド中隊が安全を確保している』
エウクレイデスに一報を入れてから、エウクレイデスへの帰投コースに入った。
そして、解放の戦いが幕を上げる。