『トライアド1より、全機に通達! 今しがた、敵に操られていた陽炎と交戦し、解放しました。敵はどうやら、ナイトロの技術を利用していると思われます!』
フレスベルグは通信で報告すると同時に、データリンクに先ほどの戦闘ログを挙げた。
『確認するが、ナイトロのタイプは?』
『どうやら、後期型のようです。出力が低いのを確認しました』
『ならば、まだ助けられるな……フェニックス1より、スピリッツ全機に通達! 敵に艦娘が居て操られている場合、対象の装置を破壊した後に保護せよ!』
『了解!!』
隊長たるフェニックスからの指事を受けて、スピリッツ全機の斉唱が通達で聞こえる。
業によって誰かが涙を流すならば、それを止めるために剣を執ろう。
例え誰かに笑われようが、その戦いは辞めない。
場所は変わり、祐輔艦隊指揮船おおしお。
その艦橋で祐輔は、艦隊の指揮を執っていた。
「接近する敵航空機、八割撃墜!」
「残存と新たに接近する敵機に留意。特に、摩耶さんには血気に駆られて前に出過ぎないようにと伝えてください」
通信妖精からの報告を聞いた祐輔は、直ぐ様新しい指事を伝えた。対空艦隊旗艦の重巡洋艦娘の摩耶が、血気盛んで勝ち気な性格のために前に前に行きやすいのだ。
(まあ、対空艦隊の副官に鳥海さんが居るから、大丈夫だとは思うけど……)
勝ち気な摩耶の姉妹艦娘、冷静沈着な鳥海。この二人は非常にバランスがよく、暴走しそうになる摩耶を鳥海が諫める。というのが、最早日常になっている。
それは日常だけでなく、戦闘でもだ。
「対空艦隊より通信! 接近する人型機確認! 数は9機!!」
「見た目は言ってる?」
祐輔の問い掛けに、通信妖精は少し間を置いてから
「オレンジ色と緑色の装甲の一つ目の機体と!」
「それは敵! 撃墜や撃破は考えなくていい! 弾幕を形成して、突破や接近を許すな!」
祐輔が新たに指事を下した直後、空中に激しい弾幕が形成される。だが祐輔は
「こちらも対空砲撃! 主砲並びに対空VLS、連続撃ち方!!」
「主砲及び対空VLS、撃ち方始め!!」
祐輔の指事を復唱した後、妖精は機器を操作した。すると、おおしお前甲板の127mm単装主砲が素早く動き、発砲を開始。それに僅かに遅れておおしおの両舷に配備されていた箱。VLSから、次々と対空ミサイルが放たれた。
本来だったら、深海棲艦にそのような兵器は大した効果たりえない。だが、何にも体裁というのが必要なのだ。
しかし今回、その装備が役に立つのだから、何が起きるのか分からないものだ。
「砲撃を絶やすな! 相手に近付かれたら、終わりだ!!」
祐輔はそう指事を下すと、今度は操舵手妖精に
「回避運動は任せる! 遠慮なくぶんまわせ!!」
「了解!」
操舵手妖精は復唱した直後に、操舵輪を右に大きく回した。その直後、艦橋のすぐ左側を閃光が走った。どうやら、アークエンジェルが放ったアンチビーム爆雷の効果を抜けた砲撃のようだ。
「つっ……被害報告!」
「被弾無し! されど、閃光で目が眩んだ要員多数!」
「すぐに収容! 外に出ている要員は、艦内に退避!」
祐輔は受話器を持ち上げると、スピーカーで今外に居る要員達全員に艦内に退避するように命じた。すると、ドカドカという足音が響き渡り
「急げ!」
「早く入れ! 隔壁を閉じるぞ!!」
という怒号が聞こえた。それを耳にしながら祐輔は、側面のモニターに視線を向けた。そこには退避状況が表示されており、指事を下して一分程で外に出ていた要員は、全員中に入った。
「……これも、意味は無いのかもしれないけど……」
ビームが直撃したら、間違いなく原子に帰るだろう。アンチビームコーティングされた装甲でなければ、ビームは防ぎようがないからだ。
「接近してきていた敵に、ミサイル直撃! 三機撃破を確認!」
「まだ生き残ってる! 警戒を解くな!!」
祐輔が叱責した直後、海中から一機のMSが姿を現した。背部のコーンから噴き出すオレンジ色の粒子。
「さっきのまでと、違う!? 機銃迎撃!」
祐輔がそう指事を下した直後、艦艇を激しい衝撃が襲う。
「自働機銃、破壊されました!!」
どうやら、敵MSの攻撃で機銃が破壊されたらしい。そして敵MSは、脇に抱えていた巨砲を、艦橋に突き付けた。最早、回避も間に合わない。そこに、横合いから白地に青いラインが入ったガンダムが、その敵MS。
ガデッサを思い切り、蹴り飛ばした。
『こいつは、此方で引き受ける! 今のうちに後退を!』
「感謝します! 艦隊、後退! 態勢を立て直す! 艦娘艦隊で補給が必要なのは、うずしおに後退せよ!」
XXXXの指事を受け入れた祐輔は、即座に後退を指事し、更に態勢の立て直しを始めた。
戦いはまだ、始まったばかりだ。