時は僅かに遡り、大和達が新三式弾を撃った後に戻る。新三式弾、名前は帝国海軍が配備している対空榴散弾の三式弾を踏襲しているが、新しい物になっている。
三式弾は、内部のタイマーを設定し、撃つ際に射角を調整。最後に必要な高度に到達させるために火薬の量を調整する。
これが、酷く手間が掛かるものの命中し効果を発揮するとなるかは運任せも多分に含まれる。
それをスピリッツが、大幅に改良を加えたのが新三式弾だった。
スピリッツが改良したのは、大きく分けて二つ。まず一つ目は、タイマー調整を無くし、代わりに内部に近距離用レーダーを内蔵したこと。そして二つ目は、ある程度の誘導性を与えたこと。
内部に近距離用レーダーを内蔵したことにより、高度が合い、近くに敵機が居れば外殻が開き、大量の子弾が吐き出されるようになった。
そしてある程度の誘導性。これは、砲弾後部に小型のフィンを追加して、近距離用レーダーと連動する形でフィンが稼働。近くの敵の方に向かって飛んでいくのだ。
この二つにより、新三式弾は今までの三式弾よりも高い命中率を誇るのだ。
事実、大和達が撃った砲弾は、一度高度を一気に上げると、砲弾後部のフィンが展開。制動を開始した。
砲弾前部に内蔵された近距離用レーダーの探知範囲は約5kmとなっており、その範囲に入るとより緻密な制動になる。
大和達が撃った先には、海面ギリギリをSFSで飛んでいるMS隊が飛んでいた。
どうやら、敵MS隊の狙いはアイランドに向かっている重巡洋艦娘の古鷹率いる水上打撃艦隊らしい。
新三式弾内蔵のレーダーがそのMS隊を捕捉したらしく、フィンが稼働。砲弾の飛行方向を微調整した。
敵MS隊も砲弾に気付いたようだが、既に必中圏内。回避は無理と諦めたのか、肩に固定されている盾を構えた。その直後に砲弾がまるで花弁のように開き、中から大量の子弾を吐き出した。
放たれた子弾は、敵MSの盾に防がれて敵MSに直撃は無かった。しかし、数発の子弾がSFSに命中。
SFSは、黒煙を吐き出しながら、速度を落とし始めた。
『支援感謝する』
通信回線にそう聞こえた直後、敵MS隊に次々と光弾が直撃。数瞬後に紫電を放って爆散した。
それを見ていると、大和達の頭上をスピリッツがフライパスしつつ
『このまま、我々は敵MS隊の撃滅を敢行する。そちらは、水中用MSに注意してくれ』
と告げて、新たに侵攻してきていた敵MS隊に突撃していった。それを見送りつつ、大和は
「水中用MSというのも、有るのですね……吹雪さん、五十鈴さん、ソナーに反応は?」
大和は振り返りつつ、同行していた二人。祐輔艦隊最古参の駆逐艦娘の吹雪と軽巡洋艦娘の五十鈴に問い掛けた。
「今のところ、そんな音は聞こえません」
「凄いわね……前より、音が断然聞こえるわ」
三式探針義こと三式ソナー。それも、お世辞にはいい性能だったとは言えないものだった。
確かに、最初に作られた94式ソナーより遥かにマシだが、それでも敵か味方かどうかの判断すら難しかった。
しかし、スピリッツが大幅改修した三式ソナー改め11式ソナーは凄かった。
海中のあらゆる音がクリアに聞こえ、あまつさえ附属の機器に音を記録させると、敵か味方の判断もしてくれるのだ。
これが帝国海軍全体に配備されれば、味方誤爆の危険性はほぼ無くなるだろう。
自分達がやっているのは、その実証試験。自分達の成否が、今後に関わるのは確実だ。
「皆さん、確実に進みましょう!」
『おうっ!』
『はいっ!』
大和は威勢のいい掛け声を聞きながら、少しずつ前進していった。そんな時だった、極太の閃光が走り、祐輔が座乗する指揮船たるおおしおが揺れた。
「司令官!?」
「提督!?」
しかも、おおしお前面の海中から一機のMSが現れ、おおしおの対空自働機銃を破壊。更には、艦橋に巨砲を突き付けた。
最早、絶体絶命の危機。だがその敵MS、ガラッゾをXXXXが蹴り飛ばした。撃たなかったのは、誘爆を恐れたのだろうか。
そうこうしているうちに、通信で後退するよう指示が下された。どっちみち、大和達の残弾もかなり減ってきている。一度うずしおに戻り、補給を受ける必要がある。
「全艦後退! 一度、補給に戻ります!!」
『了解!!』
通信回線に聞こえる、仲間達の声。被弾しているのか、時々ノイズが聞こえる。しかし、轟沈したのは居ないと信じている。何故ならば、今この海域に集うのは帝国海軍でも生え抜きの精鋭達なのだから。
大和はアイランドを睨み付けながら、後退を開始した。