艦娘用移動母艦、うずしお内部。そこはまさに、戦場と化していた。帰還した艦娘達の艤装への補給と整備のために、妖精や整備士達が走り回っていた。
「急げ! 戦艦の各主砲砲身の予備を持ってこい!」
「駄目だ、この装甲は溶けてる! 新しい装甲板を!」
「94式酸素魚雷を持ってこい!」
そこかしこで怒号が飛び交い、その中を様々な資材を妖精や士官が運んでいく。その奥には、艦娘達用の待機スペースがあり、何人もが得たデータから作成した敵MSのことを確認していた。
「マラサイにハイザック……」
「おいおい、ビーム兵器だ? 直撃喰らったら、一撃じゃねぇか」
「それに、水中戦用のMSとMA……私達の脅威ですね……」
「そちらは、スピリッツが対処するという話になったようだが……こちらでも、対策を考えるべきだな……」
と数人が話していると、ドアが乱暴に開けられて
「はいはーい! 最新の情報を持ってきたわよ! 確認お願い!」
と夕張が、新しい書類を机に置き、データをモニターに表示させた。そこに表示されたのは、ガラッゾだ。
「……なんだ、このふざけたスペックは」
「これが本当なら、このGNランチャーとやらの最大出力は、戦艦ですら一撃で撃沈するぞ」
そのデータを見た殆んどの艦娘達は、マラサイやハイザックとは比較にならない高スペックに絶句していた。
すると夕張が、レーザーポインターでガラッゾを指し示し
「これら、高スペック機……なんでも、ワンオフ機って言うらしいけど、それらはスピリッツが最優先に対処するって。間違っても戦わないようにってさ。特に、天龍と摩耶」
「だけどよ!」
「好き勝手やられるなんて、イヤだぞ!」
名指しされた二人は、身を乗りだしながら夕張に抗議した。だが夕張は、無言で持っていた端末を掲げた。その画面には、祐輔の顔が表示されていた。
「祐輔!?」
『これは絶対事項です。変更はありません』
どうやら、摩耶と天龍の言葉は聞こえていたらしい。祐輔は開口一番にそう告げた。そして続けて
『これらワンオフ機は、量産型機とは隔絶した性能を有していて、今表示されてる機体は氷山の一角に過ぎません。聞いた話では、自律機動型の砲台を装備した機体や全身ビーム砲の機体もあるようです……それらと交戦すれば、轟沈は必至でしょう……』
祐輔のその言葉に、待機スペースに居た艦娘達は黙った。自分達の知らない技術を使って造られた未知の兵器群。
『今回の作戦……恐らく表立って表彰されることはないでしょう……ですが、この作戦に参加していた全要員が覚えています……それを心に刻み、生きるんです……今後、僕達はこの敵と幾度となく交戦することになる……だから、今を生きて次に繋げるんです! 今は
そこまで言った時、画面にノイズが走り、端末から轟音が聞こえた。
「祐輔!?」
それに驚いたのか、木曾が夕張から引ったくるように端末を掴んだ。その直後
『おおしお、艦橋付近に被弾!! 艦、コントロール失う! 通信途絶!!』
と彼女達からしたら、信じがたい報告が、スピーカーから聞こえた。それを聞いて、木曾は端末を夕張に投げ返すと、モニターの映像を切り替えた。それは、艦外部の光学カメラの映像。それを見て
『祐輔!?』
『祐輔さん!?』
誰も彼もが、祐輔の名を呼んだ。見えたのは、艦橋付近が黒煙に包まれているおおしおだった。
すると、長門が大声で
「動ける者は、すぐにおおしおに向かうぞ!! 祐輔を死なせるな!!」
と号令を下し、全員がそれに従った。ハンガー区画に入ると、整備士達が既に用意を終えて待っていた。艦娘達が急いで艤装を装着して出撃しようとすると、一人の整備士が大声で
「祐輔さんを頼んだぜ! オレ達みたいなはみ出し者達に、新しい仕事をくれたんだ!」
と言って、閉まっていたハッチを全開放した。実は祐輔艦隊の兵士達の大半は、他の鎮守府や基地で爪弾き者として扱われていた者達ばかりなのだ。
祐輔はそういった兵士達を積極的に受け入れ、働かせる場を与えたのだ。
「了解した! 艦隊出撃するぞ!!」
長門の号令の直後、全艦娘達は次々と出撃。黒煙を吹き上げているおおしおに向かっていった。