作戦が始まってから、数時間が経過。陽も沈み始めた頃、戦況が変わり始めた。
『グランド1よりマザー。アイランドに取り付きました。これより、突入します』
『了解。油断しないように』
『了解』
スピリッツの部隊のひとつが、アイランドに取り付いたのだ。グランド小隊、バンシィ・クロスが率いる部隊な、手近な施設の隔壁を破砕突破。今正に出撃しようとした敵MS部隊を撃破した。
そして奥に進むと、見つけたのはMSの無人生産ラインだった。
『これは……』
『映像を記録したら、徹底的に破壊するぞ。今は、そうするのが最善だと判断する』
『了解!』
『了解ですわ!』
バンシィ・クロスの指示を受けて、部下達も生産ラインの破壊を始めた。次々と撃ち込まれる砲撃に、機械が火を噴き、生産中だったMSが次々と爆発していく。
そしてそれは、外からも確認出来た。屋根を突き破り柱のように上がる炎。アイランドの各所で始まる爆発。
もはや、陥落は時間の問題だった。
だからかは分からないが、敵の動きが変わった。
「深海艦隊、一部が離脱を始めました!」
『こちらでも確認した……駆逐級と軽巡級が中心になって、こちらに来るぞ!』
恐らくは、足止めが目的なのだろう。大型艦の大部分が転進し離脱を開始すると、駆逐級と軽巡級が中心となった深海艦隊が祐輔艦隊の方に突撃してきた。
それを受けて、祐輔艦隊とスピリッツは迎撃を開始した。
祐輔艦隊は長門が旗艦になって、迎撃を開始。スピリッツは、機動攪乱戦で深海艦隊の足を遅くしつつ、撃滅を開始した。
その結果、約二時間後に残った深海艦隊は殲滅が完了し、アイランドも完全に破壊し、海の底に沈んでいった。
海水を巻き込みながら沈んでいくアイランドを見つつ、時雨が
「これで、終わりなのかな……」
と呟いた。だが、それを即座にフェニックスが
『いや、始まりだ……長く困難で激戦の幕開けだ……』
と否定した。
そう、これはほんのプロローグに過ぎなかった。
2010年9月末、人類は未だに経験したことの無い戦いの幕を開けた。
人対深海棲艦&機械という、前代未聞の戦いを。
報告書
榊原祐輔少将率いる艦隊は、敵無人兵器(以後MSと呼称する)の生産拠点、仮称アイランドの破壊に成功。
ただし、少将の艦隊にも被害は大きく、少将本人を含めて、おおしおの運用人員、18名に重軽傷。艦娘も数名の大破が出た模様。
これに対して、大本営は資源の融通と人員の補充で対処することを決定する。
ただし、今作戦は秘匿することが決定し、表向きには姫級率いる大規模艦隊を捕捉し、撃滅作戦を敢行したこととする。
大本営参謀本部統括 大田恵大佐
その報告書を読んだ元帥。神林十蔵は、その報告書を秘書艦の五十鈴に秘匿案件のファイルに綴じさせると、窓から外を見て
「この世界は、どこに向かおうとしているのか……」
と呟いた。
それに答える声は無く、十蔵は蒼空を見上げることしか出来なかった。