「助けてほしい……とは?」
「……第一トラック泊地の提督……つまり僕達の提督は
、僕達のことを捨て駒にしか考えてないんです……」
エウクレイデスの問い掛けに、時雨は辛そうに語りだした
時雨と吹雪は一代前の提督の時の艦娘だったが、先代提督が病気で急逝
今の提督に引き継がれた
そこから、地獄が始まった
今代の提督は、先代提督がやっていた艦娘の意思を尊重するやり方を否定
先代提督が育て上げた艦娘を、使い捨てるように轟沈させ続けた
次々と沈んでいく駆逐艦娘
先代からの生き残りの駆逐艦娘は、時雨と吹雪を含めて、最早片手で数える人数しか居ない
戦艦や空母艦娘は生き残っているが、行動は制限されている
寮の部屋から出ることは許されず、最もレベルが高い長門だが、艦艇時代の記憶を刺激され、全く身動き出来ない状態になっている
「……あの司令官は……私達を兵器だって……兵器なんだから、死んでこいって……」
泣きそうな表情になりながら、吹雪はそう言った
それを聞いたアークエンジェルは
『愚かな……』
と吐き捨てるように言った
すると、時雨と吹雪の二人をエウクレイデスが抱き締めて
「よく、頑張ったわね……偉いわ」
と優しく声を掛けて、二人の頭を撫でた
それを聞いた二人は、声を押し殺して涙を流し始めた
それを感じたらしく、エウクレイデスは
「子供なんだから、素直に泣いていいの……ね?」
と諭した
その後、二人は声を上げながら泣き始めた
そして、二人が落ち着いたのを確認したアークエンジェルが
『……私達は、傭兵です……正義の味方ではありません……』
と語りだした
傭兵
その言葉の意味を、時雨と吹雪は知っている
依頼者から金を受け取り、依頼を達成するためにあらゆる手段を尽くす
だから自分達は、依頼者には当たらない
自分達は、お願いしているだけだ
『けれど……何もしないで後悔するより、何かをやって後悔する方がマシです……何より、私達の理念に反します』
スピリッツの理念
助けを求める人が居るならば、助けよう
例え偽善者と蔑まれようが、助けられる命は助ける
それが、スピリッツの理念
『進路決定……行きましょう、トラック泊地へ!』
アークエンジェルのその言葉で、二隻はトラック泊地に向かうことが決まった
「凄い……海中を進めるんだ……」
「しかも、海底付近……19さんや8さんでも無理なのに……」
艦内の通路を進んでいた時雨と吹雪は、窓から見た景色を見て驚いた
今二隻は、海底付近を潜航している
近くのモニターには、海底3000mと表示されている
その数字は、彼女達の知っている潜水艦娘の潜航限界深度を遥かに越えていた
「あ、吹雪さん! 時雨さーん!」
と二人と呼ぶ声が聞こえたので、二人は声のした方を見た
その先には、一緒に来た駆逐艦娘達が居たのだが
「見て見て! 彼凄い力持ち!」
四人に抱き付かれながら、スタスタと歩いているフレスベルグの姿があった
『此ぐらいならば、問題ない……前なんか、数メガtの隕石を押し返そうとしたからな』
「隕石……」
「それって……貴方は、宇宙に居た?」
フレスベルグの言葉に、時雨と吹雪は思わず顔を見合わせた
すると、フレスベルグは
『ああ、言ってなかったか……俺達は、本来は宇宙での活動を前提としているんだ』
と彼女達からしたら、衝撃的なことを告げた
「宇宙……話には聞いてるけど……」
「本当に、空気が無いのー?」
という雷と文月の問い掛けに、フレスベルグは頷いて
『宇宙では、空気だけでなく重力も無い……一瞬の油断が死に繋がる……それが、宇宙だ』
と答えた
その声音から、吹雪と時雨の二人はフレスベルグがベテランだと気付いた
数多の実戦を越えて生き残ってきた、ベテランだと
『話は変わるが、これから彼女達を食堂に案内するが……君達も来るか?』
というフレスベルグの言葉を聞いて、時雨と吹雪の二人はお腹が空いていることに気がついた
「はい」
「行くよ」
二人がそう言うと、フレスベルグは頷き
『では、着いてきてくれ』
と言って、食堂に向かうのだった