艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

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明石の実験

アイランド攻略作戦から、十数日後。パラオ泊地

 

「……彼等に、人の体を?」

 

「はい。詳しくは、こちらの書類を」

 

アークエンジェルが首を傾げると、祐輔が書類をアークエンジェルに差し出した。あの戦いで傷付いた祐輔だが、スピリッツの医療技術により、既に日常生活には支障が無い程度には回復した。そんな矢先に、アークエンジェルとエウクレイデスが呼ばれ、あることを告げられた。

それが、スピリッツの戦力たるMS隊。そのガンダム達に、人としての体を与えようということだった。

 

「……艦娘に関する研究で得た技術を使って、体を……」

 

「だけど、人格は……あ、何とかなるかも」

 

どうやら、艦娘を色々と調べ、研究していく内に、この世界ではクローニング技術と呼べる物がかなり発達したらしい。

それにより、四肢の欠損等は当人の腕を作り出し、移植するという治療が出来るようになったらしい。

その技術を応用し、肉体を作り出すようだ。

 

「思い付いたのは、明石なんですがね……僕も、完全に予想外でしたが……」

 

「彼女、かなりの知識を持ってるようですね……まさか、クローニング技術まで知ってるとは……」

 

祐輔が苦笑いを浮かべていると、エウクレイデスが書類を見ながら感心していた。

 

「どうも、このパラオの明石さんは、知識に対して貪欲みたいでしてね。積極的に新技術を調べては自分でデータを取り、試験を繰り返してきたそうです。調べてみたら、地下にかなりの機材や実験結果らしい物が大量に有りました」

 

「まあ、知らないで後悔するよりかは、マシなんじゃないかしら? で、その知識のひとつに、クローニング技術が有ったと……」

 

「そうなりますね……」

 

会話を終えるとアークエンジェルとエウクレイデスは、改めて書類に視線を落とした。

もしかしたら、これも明石の実験のひとつなのかもしれない。しかし、もしこの技術が確立すれば、機体が大破したりした場合、そちらに人格を移し、機体の大規模修理が容易く行えるだろう。

 

(それに、彼等に人としての体を与えることで……)

 

アークエンジェルが悩んでいると、エウクレイデスが小声で

 

「アークエンジェル……彼等に、人としての喜びを知ってほしいんでしょ?」

 

と耳元で言った。アークエンジェルが視線を向けると、エウクレイデスが

 

「私もね、何時も最前線で頑張るあいつらに、何かしてやりたいな、って思ってたのよ」

 

と告げた。エウクレイデスの思いを聞いたアークエンジェルは、少し間を置いてから

 

「分かりました。このお話、受けます」

 

と告げた。

そこからは、トントン拍子に話は進んだ。設備は、アークエンジェルとエウクレイデスの二隻の物を使うことにした。その方が、直接遺伝子情報が引き出せて、使えるからだ。

嘗てのパイロット達の遺伝子データは、二隻のデータベースに保管されていたのだ。それを使えば、彼等に人としての体を与えられる。

確かに、倫理的には間違っているかもしれない。

だがアークエンジェルとエウクレイデスには、邪な考えは一切無い。

ただ彼等に、人としての幸せを知ってほしいのだ。

自分達は機械だからと、一歩引いた彼等に、人並みの幸せを。嘗ての彼等のように。

そうして、約三週間後。

 

「では、最初に……フェニックスさんから行きますよ」

 

明石はそう言って、パソコンの操作を始めた。

MS用のメンテナンスベッドには、フェニックスが固定されていて、そこから何本ものケーブルが少し離れた位置にある薬液が満たされたカプセルに繋がっている。

そして、パソコンの操作を始めてから、約十秒後。カプセルの中の薬液が無くなっていき、カプセルの正面の蓋が、空気が抜ける音を立てながら開いていく。

そして中から出てきたのは、確かに嘗てのフェニックスのパイロット。マーク・ギルダーそのものだった。

 

「どうでしょうか……」

 

明石が恐る恐ると問い掛けると、フェニックスは体を軽く動かしてから

 

「これが、人としての体か……感慨深いと言うべきか……まさか、自分を乗りこなしていたパイロットの姿になるとは……」

 

と言った。その声は機体の時と同じだが、やはり生身の方が機械的な印象が無くなる。

 

「よし! 上手くいきました! さあ、他の方々もやりましょう!」

 

明石はそう意気込みながら、両手を握り締めた。そこに、フェニックスが

 

「質問だが、また機体の方に意識を戻せるのか?」

 

と問い掛けた。確かに、それは重要だろう。人の体に意識を移したら、機体に戻れなくなった。では、彼等からしたら笑い話にもならない。

 

「あー……理論的には可能ですが、試してみないと……」

 

「どうすればいい?」

 

「そこのベッドにあるヘッドセットを装着して、寝転がってください」

 

フェニックスは明石に言われた通りに、ベッドの上に置いてあったヘッドセットを装着し、寝転がった。それを確認した明石は、再度パソコンを操作した。

その十数秒後。

 

『ふむ……問題なく、戻れたな』

 

とメンテナンスベッドに固定してある、フェニックスから音声が聞こえた。すると、明石が両手を挙げて

 

「私の実験大成功! やったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

と歓声をあげた。よほど嬉しかったらしい。

 

「どうでしょうか、アークエンジェルさん! この勢いで、皆さんに体を用意しましょう!」

 

「わかった、わかったから、落ち着いて……それと、休みなさい……隈が酷いから」

 

明石はアークエンジェルの肩を掴んで、ガタガタとアークエンジェルを揺らすが、アークエンジェルはそんな明石を落ち着かせようと明石に声を掛けた。

実は明石、徹夜二日目に入っており、いわゆるナチュラルハイになっていた。

そこに、祐輔の秘書艦の吹雪が入ってきたかと思えば、スタスタと明石に歩み寄り

 

「当て身っ!」

 

「あふん」

 

明石を気絶させた。

そして吹雪は、明石を担ぎ上げ

 

「すいませんでした。明石さんは、こちらでベッドに放り込んできますので。お疲れ様でした」

 

と頭を下げて、退室した。

残された一同は、それを見送った後に

 

「とりあえず、全員分の体は用意しとこうか」

 

と決めたのだった。

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