「観艦式?」
そう言って首を傾げたのは、アークエンジェルである。ここパラオの第三会議室にて、祐輔と話し合っていた時に、祐輔が思い出したようにその言葉を言って、アークエンジェルがおうむ返しに言ったところだ。
「はい。あ、式と言いましたが、実際はお祭りですね。一般の方により艦娘を知ってもらうためのお祭りです。確かに、選抜メンバーによる観艦式も行いますが、艦娘達が出店をやるんです」
「ほう……しかし、何故それを私達に……?」
「実はその日に、元帥が来訪し、貴女方に直接お会いしたいと」
アークエンジェルの疑問に祐輔が答えると、アークエンジェルとエウクレイデスは顔を見合わせた。
「今まで映像通信のみだったから、直接お会いし感謝したいと」
「気にしなくていいんですがね、我々は傭兵。依頼を遂行してるに過ぎないのですが」
アークエンジェルのその言葉に、祐輔は首を振り
「貴女方が居なければ、パラオやトラックの前提督の汚職の発覚。あのMS隊に対抗は出来ませんでした」
と告げる。更に言えば、アークエンジェルが入手した情報が、元帥が行った主義者の一斉検挙に繋がったと言っても過言ではない。主義者達の間には独自の情報網があり、その中には高額で艦娘を買い取る違法風俗店や製薬企業があり、元帥はその情報を長年欲していた。
そして最近、ようやくそれらの対象に一斉取り締まりに動くことが予定されているらしい。
「貴女方のおかげで、僕達海軍は首の皮一枚で繋がりました。感謝します」
実を言うと、今の海軍は非常に危うい立場になっている。主義者達は主に艦娘に対しての扱いが悪い連中だが、中には周囲の民間と要らぬ軋轢を生む輩も居るのだ。自分が提督だからと権力を笠に、やりたい放題したり、漁船の護衛で漁業組合から貰う料金を、大本営が定めた料金の倍以上を請求したりする輩が居るのだ。
勿論海軍は、そう言った提督に対し何らかの処分を下し、監視を付けたりして対処している。しかしそう言った提督達は、あの手この手で私腹を肥やそうとする。
そんな提督達のせいで、海軍は今大分求心力が低下しているのだ。
そしてもし、主義者達がやっていたことがメディアにより先に露見していたら、大変なことになっていただろうことは間違いない。
元帥からしたら、先に主義者の情報を入手出来たのは、正に幸運だったのだ。
「我々は、一度受けた依頼は必ず果たします。その為に、取れる手段は全て取ります」
「重々承知してます。そこを含め、元帥は直接お会いし感謝したいと」
祐輔がそう言うと、アークエンジェルは暫く黙り
「……分かりました。元帥殿とお会いします」
と受け入れた。その後、当日に関する細かい内容を決めると、会議室を出た。すると祐輔は、窓からグラウンドの方を見て
「ああ、やけに賑やかだと思ったら……」
と微笑んだ。それが気になったアークエンジェルとエウクレイデスも、グラウンドの方を見た。するとグラウンドでは、多くの駆逐艦娘が集まり、野球をしていた。
それを見たアークエンジェルとエウクレイデスは、元気なのはいい事だ、と思った。
だが次の瞬間には、驚きで固まった。
何故ならば、審判の位置に、人間体のフェニックス、フレスベルグ、XXXX、バーストが居たからだ。
恐らく、駆逐艦娘達に請われて、審判役を引き受けたのだろう。彼等なら、中立の立場で正確に判断すると。
「すいません。どうやら、こちらの子が彼等を……」
「いえ、構いませんよ。彼等にも、人間並の生活をしてほしいので」
祐輔が謝罪すると、アークエンジェルは首を振った。遠目で分かりにくいが、よく見ると彼等も僅かに微笑んでいるようにも見える。もしかしたら、客観的希望というのも混じっているかもしれない。だが、楽しんでいるのならば嬉しいものだ。
人間体が与えられてからだが、パラオに居る間はなるべく人間体に意識を移して行動するように決めた。
それに合わせ、パラオの執務棟の一角にスピリッツの部屋を確保。そのすぐ近くに、地下に向かうエレベーターを建設し、それはスピリッツ専用とした。その地下に、アークエンジェルとエウクレイデスの停泊所たる秘匿ドッグを設営した。
なおそのエレベーターの入り口は、擬装されているためにスピリッツ以外には入れないようになっている。
その後、気付けばグラウンドにて一大野球大会が始まり、白熱した展開になる。