パラオ泊地、観艦式の日。そこには、今までで一番の民間人が入り、楽しそうに見て回っていた。各出店は様々な艦娘達が営んでおり、種類に富んでいる。
お好み焼きだったり、たこ焼きだったり、串焼きだったり。
しかし、一般人を受け入れてはいるが、一般人の立ち入りを制限している区画もある。
その内の一つ、執務棟の一室にてスピリッツと海軍元帥が対面していた。
「こうして、直に対面するのは初めてになるな……帝国海軍元帥の神林十蔵と言う」
「傭兵部隊スピリッツ。旗艦艦長のアークエンジェルです」
「同じく、傭兵部隊スピリッツ。汎用工作艦艦長、エウクレイデスよ」
三人は軽く自己紹介を終えると、握手してから席に座った。そして、先に口を開いたのは元帥だった。
「今回、我が海軍の汚職を行っていた者の捕縛の協力、感謝します……貴女方の協力と迅速な解決により、我々は人員的、国民からの評価的にさほどのダメージもなく立ち直ることが出来ました。非常に感謝しています」
元帥はそう言って、深々と頭を下げた。それを聞いたアークエンジェルは、首を左右に振って
「我々は、依頼を受けて動いたまでです。依頼内容は秘匿しつつ、最高の結果を出せました……それは、最前線で動いた隊員達の頑張りの結果です」
と返答した。それは、彼女の嘘偽りの無い答えだった。彼女からしたら、自分は安全が確保された後方から指示を出していただけ、という認識だった。
「しかし、貴女の的確な指示が合ったから、部隊は有機的に連携を取れる……そうではないですかな?」
元帥のその言葉に、アークエンジェルは固まった。そう言われるとは、予想していなかったのだ。
「こちらとしては、以後も貴女方と良き関係を続けていきたいと願ってます」
「……こちらも、裏切り等が無ければ関係を維持したいと考えます」
アークエンジェルはそう言いながら、スピリッツが独自に調べた世界情勢を思い出した。
はっきり言って、今の世界情勢は泥沼と言っても過言ではない。深海棲艦によって失われた海路。それにより世界中で起きている恐慌。石油、食糧、経済。それを何とか支えているのが、艦娘が多く居る日本帝国海軍だ。
しかし、それを快く思わない国が居る。
以前より世界の警察を自称していたアメリカは、また世界のトップに立とうと暗躍中。聞いた話では、主義者に武器の横流しをしているようだ。
この深海大戦が始まる前から反日政策をしていた韓国は、最早無政府状態で国内は銃火が鳴りやまぬ有り様。
ロシアは諜報組織が暗躍し、何度も艦娘を拐おうとした過去があり、今は国際的信用が失われている。
中国はその国力の高さから何とか建て直したようだが、一部の地域では独立戦争が勃発し、最早風前の灯。
その中で、まだ治安維持が出来ているのが日本帝国だった。
日本帝国は世界でも近海の安全を確保出来てる唯一の国で、最近では近隣諸国や親交のあった国に基地を建設し、少しずつだが深海棲艦から海路の解放を成し遂げている。
そのおかげか、今は最早形骸化しつつある国連から、対深海戦略を一任されている。
それらを考慮しても、やはり日本帝国と契約関係を維持するのはメリットが大きいのだ。
「それで、以前貴女方と協同で攻略したあの敵……MSを運用していたアイランド……あれに関する話が有ると伺いましたが」
「はい……我々は確かに、対MSのエキスパートです……しかし、我々は相手と違い数に不利が有ります。それに、行動範囲も」
アークエンジェルがそう言うと、祐輔が大き目のモニターを点けて、アイランドの予想行動可能範囲を世界地図に
「これは……本当に?」
「はい……こちらで入手した情報を精査した結果、アイランドは動力は波浪発電と太陽光発電を併用しており、海路ならば何処にでも作戦展開が可能と判断されました。更に、掘削能力も有しているために、その気になれば海底鉱山から資源の掘削が可能……つまり、アイランドが複数存在すると、世界各地で同時にテロ行為が可能になります」
「なんてことだ……」
アークエンジェルの説明を聞いて、元帥は天井を見上げた。祐輔から提供されたデータにより、艦娘ではよほど対空値が高くないとMSに太刀打ちするのは現実的ではないと分かっている。
しかし、今のところまともに戦えるのはスピリッツのみ。だがそのスピリッツも、万能ではない。行動範囲も数にも限界はある。それを考えると、頭を抱えるしかない。
「そこで、我々は敵のMSの鹵確……ひいては、アイランドを制圧し、此方の戦力化を目指しています」
「そんなことが、可能と?」
「はい……既に少数ですが、敵MSの鹵確を行い、自戦力化を行いました……こちらを」
アークエンジェルはそう言って、元帥に書類を差し出した。
「これは……そのMSのデータですか……!」
「はい……我々が鹵確したのは、合わせて一個中隊規模ですが……幸いなことに、貴方方の技術力でも整備が可能ということが分かりました……つまり、アイランドを制圧し確保すれば、貴方方でも生産・維持・運用が可能ということです」
「確かに……しかし、大丈夫なのですか?」
元帥のその問いかけに、アークエンジェルは首を傾げた。すると元帥は、真剣な表情で
「もし主義者が、このMSを貴女方に差し向けたら……幾ら貴女方とはいえども……」
と言葉を濁した。つまり、スピリッツが敗北することを危惧しているのだろう。しかし、アークエンジェルは底冷えのする笑みを浮かべ
「先にも言いましたが、我々は対MSのエキスパート……更に言うと対人戦闘もお手の物です……相手に、敵対したことを後悔させましょう……圧倒的敗北でもって」
と断言した。それを聞いて、元帥は察した。スピリッツは、ここに来るまでに数え切れない程の修羅場を潜り抜けてきた猛者だと。生半可な戦力では、痛い目を見ることになると。
「……私からは、諸君を裏切らないと確約しよう……」
「私達も、貴方方とは争いたくはありません……お互いに、よき隣人で居ましょう」
二人はそう会話を締めくくり、最後に再度握手を交わした。こうして、非公式だが二つの組織のトップの会談は幕を下ろしたのだった。