グラーフツェッペリンが意識を取り戻し、そのグラーフから出された不正の証拠。それを受け取った祐輔は、大至急元帥に連絡した。
『それは確かか!?』
「はい、間違いありません。今から、データを送ります」
祐輔がそう言うと、パソコンの前に立っていた大淀がパソコンを操作した。その数秒後、元帥が
『受け取った……これは……!』
サブモニターに表示された拘束具を使う各提督達が犯している、更なる不正の証拠。それを見た元帥は、目を見開いた。事前に確認した祐輔も、驚愕で固まったのを覚えている。
拘束具など、氷山の一角に過ぎなかった。なんと、タロア、ブルネイ、ラバウル、タウイタウイの各拠点の提督達は、自身の私腹を肥やすために、
まず、最前線故に許可されている艦娘の建造を悪用し、数多の艦娘を建造し、表向きは戦闘で轟沈ということにして、実際は艤装を解体し人間にすると、娼婦、人体実験用にとして密売。
次に、基地の一角に麻薬畑にして、麻薬を精製し、売り捌いていた。
それによって泣くのは、標的にされた一般人。お金のために大事だったモノを売り、犯罪を犯して、麻薬で体がボロボロにされる。
艦娘と一般人の両方を食い物にし、それで私腹を肥やす。
『問題は、どうやって奴らに……』
「それでしたら、私達にお任せを」
元帥が唸ると、そこに第三者の声。気付けば、通信室の端にアークエンジェルが居た。
(何時の間に……)
『よろしいので?』
祐輔は驚き、元帥はアークエンジェルに問い掛けた。
「構いません……そのような輩共から、無辜の人達を助けるのが、我等の理念……既に、出撃用意は整っています……複数拠点なので、完全同時とはいかないかもしれませんが……奴らに、逃走の時間は与えません」
そう言ったアークエンジェルの目には、普段からは想像出来ないような、底冷えするような光があった。
『……すまないが、頼む……徹底的に、やってくれ』
「依頼、承りました……では」
アークエンジェルは一礼すると、静かに通信室を去った。それを見送った祐輔は、ポツリと
「……逆鱗に触れたか……彼らは……」
そう呟いた。そして、傭兵部隊は動き始めた。
静かに、非道を働く者達に忍び寄っていく。
それから暫く
「くくく……いよいよだ……いよいよ、計画も大詰め……!」
ブルネイ泊地執務室。そこに居たのは、帝国海軍第1ブルネイ泊地提督、
日本帝国において、軍家の名家たる高宮家の次期当主候補の一人である。
「不安要素はあるが、大したことではない……記録から見るに、あの人形が生き残る可能性は低い……私をこんな僻地に飛ばした本国のバカ共に、戦時下ということを忘れた無能な政治家共……今ならば、何処に侵攻しようが深海の排除という大義名分で許される! だからこそ、今が好機! 私が! 世界を支配する! 忠実な人形共に予想外だったが、手に入れた兵器……あれらが有れば、あのアメリカとて容易く灰塵にすることが出来る!」
高宮は自身の机の上にある書類には、彼が集めた戦力が記載されている。その一覧の一番下には、新型機動兵器二個連隊と書かれてある。
この男はとてつもない野心家で、ブルネイ泊地の提督となったのも、その野心を警戒されてのことだった。
やはり名家の出身なだけあり、人心掌握術に優れ、投資家や大規模粛清したとはいえ主義者の残党と接触されたら要らない不祥事を起こされる可能性が高かった。
そう判断し、元帥と一部の将校の判断で最前線の一ヶ所だったブルネイに配置した。
インドネシアはブルネイ。
近くには帝国陸軍の拠点のあるフィリピンがあるために、不用意なことはしないと思われたのだ。
「タロアやタウイタウイ、ラバウルの提督達は端た金で私の下に付いて、拘束具も回した……さあ、私の時代が来た……!」
彼がそう言って、笑い始めた。その時、ブルネイ泊地に轟音が鳴り響いた。
これが、この男の破滅の始まりであり、涙のために戦う者達の幕が上がる。