ブルネイ泊地で爆発が起きる、少し前。ブルネイ泊地の沖合いの海中にアークエンジェルとエウクレイデスが停まっていた。
「艦長、準備完了しました。何時でも行けます」
副長妖精の言葉に、アークエンジェルは頷き
「我々はこれより、己の私利私欲で他者を操り人形にするような輩に、鉄槌を下します……恐らくは、拘束具とやらを投与された艦娘も投入されてくるでしょう……そうなったら……艦娘達には、眠りを与えてあげてください……拘束具は、非常に副作用が強く、治療は困難とのこと……ですから、躊躇わずに眠りを……作戦、開始!」
そう宣言した後、二隻のVLSから次々とミサイルが発射されて、ブルネイ泊地に雨霰と降り注いで破壊力を発揮した。直撃を受けて、吹き飛ぶ泊地の防衛設備や大型クレーン。その直後、泊地内部で緊急事態を告げる警報が鳴り響くが、兵士達は混乱して右往左往するばかり。
どう見ても、まともな指示が下されているとは思えない。
それを、事前に出していたUAVで見ていたアークエンジェルは
「作戦は第二段階に移行、艦隊上昇! 高度4000まで上昇後、MS隊出撃! 敵迎撃機が上がる前に、滑走路と管制棟を破壊せよ!!」
アークエンジェルの指示を受けて、二隻は急速上昇を開始。海中から現れると、海水をまるで滝のように降らしながら高度を上げていく。
そして規定高度に達した時、カタパルトハッチが開いて、中から次々とMS隊が出撃していく。
出撃したMS隊は、次々と滑走路と管制棟を攻撃、破壊していく。次々と起きる爆発で、外に居た兵士達は逃げ惑うか、まるでぼろ雑巾のように吹き飛ぶのみ。
『……お前達に、直接的に恨みは無い……だが、これも仕事でね……それに、泣く人が居るのならば、それを排除するために刃を振るうのが俺達だ……!』
フェニックスはそう言いながら、次々とビームライフルで機銃や対空砲台を破壊していく。
そんな中で、反撃しようとしているのか対空ミサイルランチャーを担いだ兵士も居たが
『遅い』
フェニックスは小さく呟き、僅かに銃口を動かすとビームを発射。ビームの直撃を受けて、ランチャーが大爆発を起こして、その兵士は即死した。
それを確認したフェニックスは、そこから移動しようとした。その時
『02より01! 多数の艦娘を確認した! こっちに来るぞ!!』
クロスボーンフルクロスからの報告に、フェニックスはその方角を見た。確かに、艤装を装備した多数の艦娘達が見えた。その目に、意思は感じられない。
『……今、眠らせてやる……この悪夢を……』
フェニックスは悔しそうに呟き、一番手前に居た戦艦娘に肉薄すると、ビームサーベルを突き刺した。フェニックスの早さに反応しきれなかった戦艦娘は、それで死亡。他の艦娘達は、機械的に迎撃しようと一糸乱れぬ挙動で砲を構えた。
だが
『ごめんなさい……』
上空を取ったハルファスが、メガビームを発射し、次々と葬っていく。優しい彼女からしたら、非常に辛い選択だろう。だが、仲間をヤラせる訳にはいかない。
そう自身に言い聞かせ、ハルファスは吹き飛ばしていく。
『……頼んだぞ、天ミナ改』
フェニックスはそう呟くと、少し離れた場所で弓を構えていた空母艦娘を撃った。
その頃、ブルネイ泊地地下。その廊下を、ブルネイ泊地の提督が走っていた。
高宮薫、彼は司令部ではなくシェルターに向かっていた。
自身に保身のために、部下や仲間を全て放置して、その手に有り金が全て詰まったカバンのみを持って走っていた。
「くそくそくそ!? 一体、何が起きたんだ!? まさか、噂の秘匿部隊か!?」
実は極一部の提督の間では、スピリッツは秘匿部隊として噂が出回っていた。内容としては、元帥お抱えの特務部隊だ。
実際は、傭兵なのだが。
そして高宮は、しばらく走り続けて、あるドアの前に到着した。そのドアは重厚で、かつ厳重なセキュリティーが施されていた。
高宮は出来る限りの速度でそのセキュリティーを解除すると、ドアを開けて中に入ろうとした。
だが、その時
『はぁい、そこまで』
と聞き覚えの無い声がして、高宮は振り返った。そこに居たのは、金と黒の装甲が特徴の人型。
AGF天ミナ改だ。
「き、貴様! 何者だ!? この私を、誰だと思っている!?」
高宮は喚きながら、空いてる手で拳銃を取り出して構えた。その直後、その拳銃の持ち手以外が無くなった。
「な……!?」
『貴方、構えるの遅すぎ……そんなんじゃあ、人一人殺せないわよ?』
高宮は何が起きたのか分からず困惑するが、要は天ミナ改がもぎ取っただけだ。その証拠に、開いた左手からバラバラと拳銃の残骸が落ちた。
『貴方は、あまりにも罪を犯しすぎた……だから貴方は、生きる価値は無いわ』
天ミナ改は冷酷にそう言って、右手の複合盾のビームサーベルを出力させた。そのシェルターに行くための通路は、強化コンクリートで造られており、その強度はかなりのものだ。
だが、幾ら強化コンクリートとは言ってもビームには大した防御にはならない。ビームサーベルの熱に当てられて、一部の強化コンクリートが真っ赤になってドロドロに熔けてきている。
「な、あ……!? ま、待て! 金なら言い値を払ってやる! だから……!」
『私達は、お金なんてさほど重要視してないわよ』
高宮はカバンを開けて、中からお金を出して命乞いするが、天ミナ改は無慈悲に高宮の上半身を消滅させた。
『……後の処遇は、元帥さんに任せましょうか』
天ミナ改はそう言うと、ミラージュコロイドで姿を消して去っていった。
スピリッツが作戦を開始して、僅か10数分後。ブルネイ第一泊地は完全に陥落。それから数時間後に来た大本営の憲兵隊が泊地を調査して、ブルネイ泊地、タロア、タウイタウイの提督達の不正の証拠を発見・確保。
一気に逮捕に繋げた。
しかし、この騒動から間を置かずにある事件が起きる。
パラオに、深海棲艦の大規模艦隊の襲撃。
そして、世界中にMSの存在が明らかになる戦い。
通称、機械戦線が始まる。