その日は、パラオに国連の事務次官と監査官が来ていた。パラオは前提督の運営から建て直しが行われているので、その後キチンと運営が行われているのかを確認するために国連からの監査だった。
以前から打診されていて、何とか調整した日程が今日だった。
「ふむ……運営は、問題なく行われているようですね」
「はっ……艦娘達と、可能な限り話し合いを心掛け、彼女達に良い運営になるようにしています」
事務次官の言葉に、祐輔は背筋を伸ばしながら答えた。事務次官と監査官は、祐輔と大淀の案内で敷地全体を見ていた。そして監査も順調に進み、もう間も無く終わろうとしていた。
その時、パラオ泊地に轟音が鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
「姿勢を低くしてください! 状況報告!!」
事務次官と監査官を保護しつつ、祐輔は無線で司令部に問い合わせた。すると、司令部に詰めていた吹雪からノイズ混じりで
『こちらHQ! レーダーはホワイトアウト状態ですが、観測員が所属不明の人型の敵を多数視認しています! 恐らくは、MSかと思われます!』
と報告が入った。
「MSだと!? つっ!?」
祐輔が声を上げた直後、祐輔達の頭上を数機のドダイに乗った人型機。ハイザックとマラサイが通過し、更に当てずっぽうのようだが地上に砲撃を開始した。
「対空砲撃開始! 牽制で構わない! あの敵を、近づけさせるな!!」
祐輔の号令の直後、警報が鳴ると同時に機銃による対空砲撃が開始。それに僅かに遅れて、高射砲も砲撃を開始した。それを確認しつつ、祐輔は
「お二人はこちらに来てください! 地下シェルターにご案内します!」
要人二人を、駆け寄ってきた歩兵と一緒に地下シェルターの方に案内を始めた。すると、事務次官が
「榊原提督! 君は、あの敵を知っているのか!?」
と聞いてきた。
こうなっては、隠すのは無理と判断した祐輔は
「あれは、MS……この世界の新たな勢力です」
と説明してから、二人を地下シェルターに続くエレベーターに入れた。
「スピリッツの方々は!?」
『それが、遠距離通信が出来ません! 酷いノイズが走って……』
確かに、基地施設内部だというのに、ノイズが大分混じっている。ということは、敵側のジャミングに他ならない。
「多分、スピリッツは気付いてると思うけど、念のために信号弾上げて! 赤三発!」
『はい!』
祐輔の指示の数瞬後、空高くに赤い信号弾が三発上がった。それは、スピリッツ側と取り決めた緊急事態時の段階を示す合図。
三発は、基地敷地内部に敵勢力侵攻中、大至急応援を望む。である。そして祐輔は、爆発から身を守りつつ
「なるべく、皆には攻撃は控えるように通達して! この敵、確認したけど大口径の火砲を持ってる! 直撃を受けたら、皆でも危ない! 緊急時想定、Cー37! 高練度艦のみ対空砲撃を許可! 他は退避!」
と指示を下した。その直後、祐輔のすぐ近くで爆発が起きて、祐輔は吹き飛ばされた。
「ぐっ……つっ!?」
なんとか受け身を取った祐輔だったが、左腕に激痛が走った。視線を向けると、左腕が肘からあらぬ方向に向いていた。
「くっ……」
祐輔は痛みを堪えながら、近くの地下司令部に入るためのドアを探した。その時、頭上に一機のハイザックが現れ、祐輔にマシンガンを向けた。
(走っても、間に合わないっ!?)
祐輔が覚悟を決めた、まさにその時
『すまない、遅くなった!』
一機の人型、フェニックスが横からすれ違い様にハイザックの右腕を切り飛ばし、更に思い切り蹴飛ばした。
『榊原提督! 今のうちに退避を!』
「すいません、後を頼みます!」
フェニックスの言葉を聞いた祐輔は、地下司令部へのドアから出てきた吹雪に補助されながら、そのドアに入った。恐らく、地下司令部で治療を受けながら防衛の指揮を執るだろう。
そしてフェニックスは、軽く周囲を確認して
『フェニックス1よりスピリッツ全隊に通達! 敵は最低でも大隊規模を確認! まだ戦力が投入される可能性は非常に高い! 見つけ次第、確実に撃破! 泊地への被害を最小限にする!』
『了解!!』
フェニックスの指示を受け、スピリッツは敵への反撃を開始した。そしてこの戦闘は、激しさを増していく。