艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

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機械戦線1

「こっちだ、走れ!!」

 

「ま、摩耶さん!」

 

防空巡洋艦になった摩耶は、濃密な対空砲撃をしながら声を張り上げ、海防艦娘達に避難誘導していた。パラオ泊地はもはや、全域で火事が起きて、施設が倒壊していた。その中を、高練度の艦娘達が対空砲撃をしながらハグれてしまった低練度艦娘達の避難誘導をしていた。

そして摩耶は、近くを通った松輪に

 

「ここら辺に居たのは、お前で最後か!?」

 

「えっ……あっ、あそこに佐渡ちゃんが!」

 

とある方向を指差した。見てみれば、同じく海防艦娘の佐渡が尻餅を突いていた。

 

「佐渡! 何やってる! こっちだ!!」

 

摩耶が怒鳴ると、気が付いた様子の佐渡が走り出そうとした。その時、佐渡のすぐ近くに数発の砲弾が着弾し、その衝撃で佐渡は転倒。そのすぐ真後ろに、ハイザックが着地し、ヒートホークを振り上げた。

 

「佐渡ぉぉぉぉぉ!!」

 

摩耶は佐渡を助けようと主砲を向けようとしたが、直感で間に合わないと分かってしまった。摩耶の時間感覚は伸び、ゆっくりと振り下ろされるヒートホーク。その時、地面スレスレを一機の人型が飛びなから光刃を投擲。ハイザックのヒートホークを持っていた右腕を肘から切断し、光刃は戻っていく。ハイザックがモノアイを向けたと同時に、ハイザックの胸部に蹴りが叩き込まれて、胸部が大きく陥没。ハイザックは機能を停止させた。

 

「フェニックスの旦那か!?」

 

『こいつを連れて、早く下がれ!!』

 

文字通り飛んできたのは、スピリッツの実働部隊の隊長機たるフェニックスだった。フェニックスは佐渡の首根っこを掴むと、摩耶の方に放り投げて、ビームサーベルでマラサイが振り下ろしてきたビームサーベルを防御。放っていたファンネルで撃破した。佐渡を受け止めてから摩耶は、近くで立ち尽くしていた松輪を脇に抱えて

 

「今のうちに地下シェルターに!」

 

と言って、駆け出した。背後からは、激しく銃声が響き渡り、その少し後には爆発音が鳴り渡る。チラッと見てみると、フェニックスは単機で十数機を相手に奮戦し、善戦していた。否、押している。

 

「摩耶さん、フェニックスさん一人で大丈夫なんですか!?」

 

「大至急だ! むしろ、あたしらが居た方が邪魔になる! あたしらは、急いで地下シェルターに向かうぞ!!」

 

「摩耶さん! あたしも走れるって!!」

 

「こっちの方が早い!!」

 

摩耶に抱えられていた佐渡が自分で走ると主張するが、それを摩耶は一蹴する。今パラオ泊地は、至るところに瓦礫が散乱しており、海防艦娘のような小柄な艦娘には非常に走り難い状況になっている。

そんな状況で走らせるよりか、摩耶が抱えて走った方が早かった。

その時、摩耶は直感から頭上を見上げた。レーダー類は、少し前から一切使えなくなっていたのだが、いわゆる歴戦の直感だろう。頭上には、見たことの無い人型が居た。

全身真紅で、背中からは禍々しい赤い粒子を噴き出していて、異様に長い両手には二本の大剣。些か頭部の赴きが違うが、特徴的なV字状のアンテナとツインアイ。

 

「あれって、ガンダム……?」

 

摩耶がそう呟いた時、そのガンダム。アルケーガンダムが、動いた。

 

『チョイサー!!』

 

「つっ!?」

 

摩耶は大きく前に跳び、アルケーが放った光弾を回避した。

 

「こっちを撃ってきた!?」

 

「つまり、スピリッツじゃねえってことだ!」

 

佐渡が驚いていると、摩耶は大きな瓦礫を盾にしながらシェルターに向かい始めた。

 

『久しぶりの戦争だぁ! 楽しませてもらうぜぇ!!』

 

「なんなんだ、あいつは!?」

 

戦争を楽しむという摩耶からも理解出来ないことを言ったアルケーは、摩耶の方に向かってきた。

 

「クソッ! 速えぇ!?」

 

摩耶はせめて佐渡と松輪は逃がそうと考えて、見えた地下シェルターの入り口に放り込むと、地下シェルターの入り口を閉めて、更に隔壁を下ろすためのボタンを叩いた。

 

「摩耶さん!?」

 

「摩耶の姉さん!」

 

後ろから松輪と佐渡が摩耶を呼ぶが、摩耶はシェルターに入らなかった。摩耶の後ろで、隔壁が閉まる音が鳴り響き、摩耶はバスターソードを振り上げながら接近してくるアルケーに、主砲を向けながら

 

(こりゃ、ここで終わりかな……)

 

と思った。摩耶も高練度の一人で、祐輔の艦隊でも強者の一人ではある。だが、直感で分かってしまった。相手は、自分達の常識の埒外の相手で、どうにもならないと。

 

(まあ、チビ達を助けられたのなら……万々歳か)

 

気付けば、アルケーはすでに肉薄し、摩耶が撃っていた砲弾は回避されていた。その時

 

『させるかよ、この戦争狂いが!!』

 

横合いから、XXXXが現れると同時に、アルケーに蹴りを叩き込んだ。

 

『この……また邪魔するのかよ、スピリッツのガンダムさんよぉ!!』

 

『摩耶だったな! こいつは、俺が引き受ける! 離れろ!』

 

「悪い、頼んだ!」

 

XXXXの言葉を受けて、摩耶は別のシェルターの入り口に向けて走り出した。そしてちらりと肩越しに見ると、空中で激しくぶつかっているXXXXとアルケーが見えた。

 

「本当に……MS相手だと量産機しか相手に出来ないのか……!」

 

悔しかった摩耶だったが、遥か頭上を走った紅い太い閃光を見て

 

「……命の方が大事だな、こりゃ……!」

 

祐輔も言っていたことだが、戦果も大事だが、何よりも生きて帰ってくることの方が大事だと認識し直し、摩耶はなるべく敵に会わないことを祈りながら走った。

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