パラオ泊地の戦闘は、視察に来ていた国連の官僚達からすれば、まさに未知の領域だった。
人型の存在が空を自由に駆け巡り、光の弾が駆け抜けたかと思えば、何処かで爆発が起き、地響きが鳴る。
「榊原提督! あのMSとやらは、一体どういう勢力なのだ!? 我々を攻撃してきたかと思えば、今度は味方するのも居るではないか!」
「……味方する勢力は、スピリッツと名乗っていました……」
「スピリッツ……?」
祐輔の言葉を聞いた官僚は、おうむ返しに呟いた。そして祐輔は、モニターに表示されているガンダム。フェニックスを指差して
「彼らは我々に友好的で、度々支援してきてくれました……」
「度々ということは、以前から知っていたのか! ならば、何故こちらに知らせなかった!!」
「貴殿方の中に、未だに深海との戦争の終結が見えないのに、次の戦い……対人戦を考えている方が居るからです! 今、混乱状態の朝鮮半島での事……知らないとでも思ったか!? 貴殿方が、何をしていたのかを!!」
官僚の怒声に負けぬ声量を挙げながら、祐輔は官僚を睨んだ。観光地と北朝鮮は無政府状態で、内線が起きている。
だが、その武器の供給源は国連だった。
「貴殿方は表向き、陸上侵攻してくる深海への抗戦用として数多の武器を供給した……だがその実、反日的で帝国が対深海の最前線を担い、各国は支援をするとした協定に非協力だった国でテロを起こさせて、無政府状態にし、国連軍の治安維持と傀儡政権の樹立を名目とした派遣への布石だった! それを、知らないとでも思ったか!? 貴殿方の下らない企てのせいで、一体何人の人が亡くなったと思っている!!」
その怒声は、普段の祐輔を知る艦娘達からしたら、予想外な物だった。普段は優しく、怒るとしても理論的に怒る祐輔が、まるで感情を露にしたような怒声だった。
そして祐輔は、無事だった右手で何かの書類を取り出し
「これが、なんなのか分かりますか?」
とその官僚の眼前に突き出した。その書類に書かれてあるのは、その官僚がした汚職の数々。
それが分かった官僚は、目を見開いて固まった。
「そう、貴方がやった汚職の証拠です! すでにこの内容は、そちらの長官に送信済みです……特に貴方は、アメリカと内通していて、武器の密輸まで行っていましたね……貴方のような人に知られたら、要らぬ騒動を起こされるのは目に見えています……だから、秘匿していたんですよ、彼らのことを!!」
祐輔がそこまで言うと、その官僚に同行していた若い男性が
「……アンバー監査官……あなたは、以前から黒い噂が絶えませんでしたが……!」
と言いながら、懐から手錠を取り出した。すると、慌てた様子で
「待て! 私より、この小僧のことを信じるというのか!?」
と振り向いた。すると、若い男性は
「彼の事は、よく知っています。彼は実直な軍人です。以前から黒い噂の絶えなかった貴方とは、信用度が違うんですよ!」
と言って、彼を押さえ込み、手錠を掛けた。
そして、若い男性は祐輔に敬礼し
「ありがとうございました。彼に関しましては、以前から内偵を進めていたんです……妙に羽振りが良かったりしたので……」
「そちらの一助になれたのならば、幸いです……こちらの警備兵に、後程牢屋に運ばせます」
そして、若い男性は姿勢を正し
「以後は、私。ジョシュア・マッケンジーが引き継ぎます……それで提督殿。あのスピリッツは、信用出来るので?」
と祐輔に問い掛けた。
「間違いなく、信用出来ます。何回も会談をしてきまして、代表者の人となりはおおよそ把握出来ました……彼らは、強者の務めを果たそうとしているんです」
「強者の務め……ですか?」
「はい……傭兵という形ですが、彼らは弱きを助け、強きを挫くために戦っています……例え相手が強大だろうとも、決して引くことはありません」
ジョシュアの問い掛けに、祐輔は毅然とした態度で答えた。そしてモニターを見ると、フェニックスがマラサイとハイザックを瞬く間に両断し、ガラッゾと交戦を開始した。
激しく火花を散らしながら、ビームサーベルを交差させる二機。その動きから、本気で戦っていることが分かる。
「しかし、あの敵の目的は……」
「分かりません……しかしあの敵は、人類に対して敵対的なことは確かです……それに、このパラオはトラックやラバウルの大事な中継拠点です……陥落するわけにはいきません……」
祐輔がそう言った直後、轟音と共に大きく揺れた。
「何が起きた!?」
「南西部に、巨大な敵が上陸! それの砲撃のようです!!」
祐輔の問い掛けに答えながら、大淀はメインモニターにその敵を表示せた。赤を基調としたカラーリングが特徴の巨体が長い首の先の口から砲口を覗かせていた。
「こちらの被害は!?」
「第一滑走路と航空機のハンガーが多数破壊されました! 怪我人の有無は、只今確認中です!」
「確認急いで!」
指示を下しながら、祐輔はメインモニターに映る敵。
シャンブロを睨んだ。