艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

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復興開始

戦闘が終わったのは、夕方に差し掛かった頃だった。安全確認の為に外に出た吹雪は、見るも無惨な有り様のパラオ泊地を見て、思わず固まった。

そして、翌日。

 

「吹雪ちゃん……報告を」

 

「はい……地上設備の約8割が全壊か半壊を含めて倒壊……残りの約2割も何らかの損傷を確認している為に、地上設備は無傷は一つとして有りません……只今、その損傷設備を優先して修復していますが、復旧にはどれ程の期間が掛かるかは、正直未定とのことです」

 

まず施設面の報告を受けて、祐輔は深々とため息を吐いた。よく見れば、祐輔も吹雪も疲労の色が濃い。まともに休めていないのは明白だ。

 

「幸いにも人員面で死者は無し……しかし、重軽傷者が多数居て……地上設備倒壊により病院施設と薬剤が足りていません」

 

吹雪の報告を聞いた祐輔は、暫く腕組みし

 

「スピリッツに医療品と手術室を使わせてもらえるか打診を……」

 

「使ってもらって大丈夫ですよ」

 

祐輔の発言に被せる形で、アークエンジェルが同意した。そして祐輔は、いつの間にか来ていたアークエンジェルに驚いていた。

 

「貴方は、一度仮眠を取るべきかと……疲労で倒れられたらそれこそ、この泊地の危機では?」

 

今はかろうじて、指揮官たる祐輔が指揮を執っているから均衡が保てているのだ。しかし、その祐輔が疲労にしろ倒れたという話が広まったら、最悪は士気が崩壊してしまう可能性すらありえる。

アークエンジェルは、その点を指摘したのだ。

 

「……指摘ありがとうございます……しかし、今は休める時では……」

 

祐輔が躊躇っていた時、ドアが開いて

 

「ならば、私が一時的にせよ指揮権を預かろう」

 

そう言いながら、長門が入ってきた。

 

「長門さん……しかし……」

 

「何を躊躇う必要がある? 戦場では、何時も私か吹雪に指揮権を預けているだろう? それと同じだ」

 

長門の言葉を聞いた祐輔は、暫く悩んで

 

「……分かりました……少しだけですが、仮眠してきます……その間の指揮を一任します」

 

「うむ、任された」

 

長門が頷いたのを確認した祐輔は、ゆっくりと立ち上がると仮設の指揮所テントから出ていった。祐輔を見送った長門は、テント内に居た吹雪やアークエンジェル、更には資材管理者の曹長を見て

 

「以後、暫くの間は私が臨時に指揮を執る。以降、全ての報告は私に持ってくるように!」

 

と告げた。その後、長門は祐輔が起きて戻ってくるまでの間指揮を代理で行った。はっきり言って、パラオは大打撃を受けた。地上設備は壊滅。地下設備も攻撃の余波で幾らか損傷を受けていて、完全復旧にはかなりの日数が必要になるのは明らかだ。

その後、吹雪も無理やりに休ませ、長門は古鷹に吹雪の代わりを任せた。古鷹も祐輔艦隊では古参で、やり方は十分に知っている。

長門はその敏腕振りを発揮し、テキパキとパラオの建て直しを開始した。そうして、祐輔と吹雪が戻ってきたのは翌日の早朝になってからだった。

 

「ごめんなさい、長門さん……結局、一晩中寝てしまって」

 

「いや……祐輔も片腕を折っているんだ。本来なら、療養すべきだろう」

 

祐輔が謝罪すると、長門は祐輔を労った。だが祐輔は、ゆっくりとだが席に座り

 

「それで、現状はどうなってますか?」

 

と長門に問い掛けた。すると、長門は書類を差し出し

 

「まず、トラックと本土から資源が送られてくることが決まった。詳細な量は一枚目に記載されている。施設に関しては、スピリッツも復興を手助けしてくれるとのことだ。医療面もな」

 

と告げた。そして祐輔は、書類の確認を始めた。その隣には吹雪が居て、祐輔に見えやすいように書類を持っている。

 

「……なるほど……MSは、工事も可能なんですか」

 

その書類には、ガンダムが崩れた外壁や大きな瓦礫を運んでいる証拠の写真が添付されていた。しかも、何機かは工具らしい物を持っているのも確認出来た。

素晴らしい汎用性だ、と祐輔は思った。

 

「それと、祐輔以外の重傷者も殆どが治療は終わったと先ほど聞いた。後は、祐輔だけだろう」

 

「しかし、骨折は時間を掛けるしかないのでは?」

 

「そうでもないわよ? 私達の技術力、舐めないでね?」

 

祐輔が首を傾げた直後、エウクレイデスが姿を見せると同時に胸を張りながら自信満々に告げた。

 

「エウクレイデスさん……どういうことですか?」

 

「ん? そうね……折れた骨をくっ付ける位なら、二時間も有れば可能よ?」

 

吹雪の問い掛けに、エウクレイデスは少し考えてから事実だけを述べた。全治約二ヶ月のケガが、約二時間で癒える。それを聞いて、吹雪は驚いた。

 

「たった二時間で、ですか……?」

 

「ええ、可能よ? まあ、様子見を含めて……最長2日有れば、大丈夫かしらね?」

 

吹雪が驚いた表情で問い掛けたら、エウクレイデスは更に答えた。どっちにしても、破格の回復期間になる。

 

「祐輔さん……」

 

「……2日か……」

 

祐輔が悩んでいると、長門が祐輔の肩に手を置いて

 

「治療を受けてこい、祐輔……2日位ならば十分に私が回せる」

 

と後押しした。それが決め手になったのか、祐輔はエウクレイデスを見て

 

「分かりました……治療をお願いします、エウクレイデスさん」

 

と頼ることにした。祐輔の言葉を聞いて、エウクレイデスは頷き

 

「お任せあれよ! それじゃあ、全は急げね!」

 

と言って、祐輔に手を伸ばした。どうやら、今から治療する気のようだ。祐輔が驚きで固まっていると、長門が祐輔を担いで

 

「エウクレイデス殿、何処に連れていけばいい?」

 

「艦まで運んでくれれば十分よ? 後は、こっちの妖精が対応してくれるから」

 

長門に付き添う形で、エウクレイデスもテントから去っていった。あっという間の誘拐劇(搬送)に、吹雪は見送ることしか出来なかった。

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