襲撃者が現れて、2日後。
「……依頼人は不明、しかし、武器は……」
「ああ……型式は古いが、そちらの拳銃に間違いなかった。恐らく、表向きは廃棄で回したんだろう」
祐輔はフェニックスからの報告に、両手を組んだ。確かに、襲撃時は暗くて気付かなかったが、その拳銃は祐輔も訓練生時に使ったことがある型式だった。
「そうなると、軍内部からという可能性が非常に高いですね……」
「そうなるな……流石に、そちらの内部となると此方は動けない」
「大丈夫です。僕の方で対処します」
フェニックスの言葉に、祐輔はそう答えて書類をファイルに挟んだ。そして、その場所での会議は終わった。その後、祐輔は仮復旧した通信室に向かって秘匿回線を繋ぎ
「元帥に願います」
と告げた。
それから少しして、とある陸軍将校の執務室。
「くそ……あの殺し屋め……とんだ役立たずだったわ……金をドブに捨ててしまった……だが、まだ方法はある……何としてもあの小僧を殺して、我が子飼いの士官を送らねば……!」
一人の肥えた男将校が悔しそうに、祐輔が写った写真を睨んでいた。その男将校は、陸軍将校の派閥の一つ。強硬派に所属する一人だった。
しかし、今の主戦場は海。それにより、陸軍の発言力は低迷し、更に言うなれば強硬派はその人数を大きく減らしていて、その勢いは最盛期に比べれば三割近くにまで低下していた。
それを憂いていた男将校は、陸軍強硬派の勢力を復活させる手駒としてスピリッツを利用することを考案。
強い繋がりを有する祐輔を排除し、後に自分が英才教育を施し、提督の資格を得た新任士官を送り込もうと画策したのだ。
その為に、殺し屋を雇ってパラオにほゎ送ったのだが、結果は失敗に終わった。
男将校からしたら、大金をドブに捨てたようなものである。しかし、まだ手が無い訳ではない。
何としても祐輔を排除し、スピリッツを陸軍強硬派の手駒にして、かつての精強を誇った帝国陸軍を復活させよう。
「それが……我が家の悲願なのだ!」
男将校はそう言うと、机の上に置いてある白黒写真を見た。その写真に写る男性士官の胸元には、多数のバッジが飾られている。
そうして男将校は、電話を掴んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
場所は戻り、パラオ。祐輔は復興の指揮を執りつつ、艦娘達の練度を上げていた。ワンオフMSの相手は無理でも、せめて量産型MSは撃破出来るようにしたかったのだ。
それに合わせ、艦娘達も忙しく駆け回っていた。
奇襲だったとは言っても、悔しい思いをしたからだ。次こそは、悔しい思いをしなくても済むようにと。
そうして祐輔艦隊は、忙しくも次を見据えて動いていた。
そんなある日、祐輔はスピリッツが鹵確し改修した量産型MSを相手にした模擬戦を見ようと、テント下の椅子に座っていた。
その時、一発の銃声が鳴り響いた。
模擬戦を始めようとした艦娘達は、困惑した表情で互いの顔を見合わせた。間違えて撃ってしまったのか、と思ったからだ。
だがその考えを
「祐輔さん!?」
祐輔の副官として待機していた、吹雪の悲鳴が否定した。模擬戦を始めようとしていた艦娘達は、模擬戦を辞めて一気に駆け出した。
そして見たのは、自身が流した血貯まりに倒れている祐輔の姿と、必死に止血しながら声を掛け続ける吹雪の姿だった。