基地敷地内での司令官たる祐輔への銃撃。本来なら安全な場所で発生した凶行に、艦娘達には激しい動揺が襲った。吹雪と一部艦娘により、祐輔に必死の止血と応急処置を施した後にエウクレイデスへと運ばれ、他の艦娘達は殺気立った様子で犯人捜しをした。
だが犯人は見つからず、見つかったのは使用されたらしい弾の廃薬莢のみだった。
しかも、その口径は帝国軍でも広く使われる7.62mm弾。つまり、犯人は
なんとか犯人を見つけようとしていた時、つい先日にパラオ泊地陸戦隊の指揮官として着任した牧瀬亮太中佐が
「今日から、私がこの艦隊を指揮する。私の命令は絶対だ」
と宣言した。確かに、階級的には牧瀬中佐が祐輔の次に高い階級になる。しかし、パラオ泊地の艦娘達は誰もその指示に従わなかった。
その理由は、牧瀬中佐が信じられなかったからに他ならない。牧瀬中佐の目には、艦娘を下に見るような感じがしたからだ。そんな人物を、司令官とは認めなかった。それに業を煮やしたのか、牧瀬中佐は一部の気が強い艦娘達を地下牢に閉じ込め、大本営が送ったという仮だが司令官に据えるという書類を掲げた。
それを理由に、一部の艦娘は不承不承だが指示に従って付近の海域の哨戒等を開始。だが、指示に従う艦娘だけでは近海の哨戒だけが限界で、牧瀬中佐は怒りを溜めていた。そんな時、深海側の襲撃が起きた。
深海側の艦隊は、空母棲姫率いる大艦隊で総数は優に100を超えていた。
その数を聞いた牧瀬中佐は、指揮を放り投げて地下深くのシェルターに逃げ込んだ。
そして、戦域では
「クソ! あの威張り散らしてたバカはどうした!?」
「それが、我先にとシェルターに避難したみたいで……」
「これだから、安地育ちは嫌いなんだ! 態度ばっか大きくなって!!」
牧瀬中佐が逃げたことを羽黒から聞いた天龍は、イライラしながら敵の砲弾を両断し、接近してきた駆逐ロ級後期型に砲撃を叩き込んで撃沈した。
しかし、一隻撃沈しても後から後から深海艦が侵攻してきて、攻撃してくる。その深海艦の一隻から放たれた砲弾の直撃を受けて、名取が大破すると
「朝潮と満潮の二人で、名取を護衛しつつ後退しろ!! 羽黒! 前面に牽制で構わねぇから砲撃しまくれ!! こいつらを少しでも足止めするぞ!!」
「分かりました!」
『了解!』
「ごめんなさい、下がります……!」
天龍の指示に各々従って、行動を開始した。
実は天龍率いる艦隊は、哨戒艦隊な為に装備している武装は艦隊決戦には火力不足な装備ばかりなのだ。
だが戦えているのは、彼女達がベテランぞろいだからに他ならない。火力不足だろうが、それを彼女達は経験で補って戦っていた。
しかし、不利なことは変わらず、少しずつ前線を後退させざるを得なかった。
「クソが! 龍田! 無事か!?」
天龍が呼び掛けると、少し間を置いてから姉妹艦娘の龍田が近くに来て
「何とか無事よー? けど、このままじゃあ長持ちしないのは確かねぇ?」
と何時もの声音で答えたが、その表情は真剣そのものだった。幾ら彼女達がベテランの古強者だろうが、限界はある。
武装の弾薬と燃料、そしてその手に持つ近接戦闘用武器も刃零れし、折れそうだ。
「不味い! 敵機直上!!」
「対空砲撃!!」
その時、天龍が敵の爆撃機が侵入してきていることに気付き、羽黒と一緒に対空砲撃を開始した。しかし、撃破出来たのは一部のみで、大部分が投下コースに進入開始。機銃の弾幕をすり抜けて、直撃コースに入ってきた。
「回避!!」
天龍が叫んだ直後、羽黒を凄まじい爆発が襲った。
「羽黒!?」
「あ……う……」
爆煙の中から現れた羽黒は、意識が朦朧としているようでフラフラとしていた。羽黒は実質大破で、身動きが取れなくなり、砲撃が弱まってしまった。そこに、海面ギリギリを這うように今度は雷撃機が近づいてきていた。
「羽黒! クソ! 邪魔だ!!」
「羽黒ちゃん、動いて!!」
天龍は近づこうとしたが、海中から現れた駆逐級に阻まれ、龍田は対空砲撃を開始するが、単艦ではたかが知れている。殆どが突破し、魚雷を投下。
「羽黒ぉぉぉぉぉ!!」
天龍が叫んだ直後、海中から赤い装甲のガンダム。フェニックスが現れて、羽黒を抱き抱えて高度を上げて回避した。
「フェニックスの旦那!!」
『すまない、遅くなってしまった……今から、援護する』
フェニックスの言葉の直後、海中から二隻の白亜の巨艦が現れ、スピリッツが出撃を開始した。