奇襲してきた深海艦と艦娘達が戦闘を開始した頃、中佐は一人安全な地下シェルターに向かっていた。
「今回の奇襲で、このパラオは致命的な損害を負うだろう……そうして、その責任を全てあの若造に押し付ければ、若造は失墜する……!」
実はこの中佐、強硬派の軍人であり、祐輔の排除を指示されていたのだ。その為に、わざと艦娘達にロクな指示を出さずに哨戒網に穴を空けさせて、深海艦隊に攻め込む隙を与えたのだ。
自分も負傷するだろうが、それは誤差の範囲内だと判断していた。そしてパラオに大打撃が与えられれば、その責任を祐輔に押し付け、上手くいけば祐輔を提督から退かせられ、祐輔配下の高い練度の艦娘も手に入る。
正に、一石二鳥だと考えていた。
しかし、この中佐は忘れていた。今このパラオには、常識に収まらない部隊が存在するということを。
シェルターの隔壁を開け、中に入ろうとした。その時、大きく揺れて、シェルターの隔壁が閉まらなくなった。
「な、なんだ!?」
なぜ閉まらなくなったのか分からず、中佐は満身の力を込めて隔壁を閉めようと引っ張ったが、うんともすんとも動かない。
先ほどの大きな揺れは、侵攻してきた深海棲艦の姫級の一体。戦艦棲姫の砲撃による衝撃による揺れで、そして中佐は知らなかったが、今居るシェルターは実は老朽化により破棄されたシェルターで、至るところが老朽化によりガタが来ていたのだ。
そして先の衝撃により、隔壁周りが歪み、噛んでしまって動かなくなったのだ。更に間が悪いことに、廊下の壁に亀裂が入り
「なっ!? 海水が!?」
そこから、一気に海水が浸水。中佐が入ろうとしたシェルターに流れ込んできたのだ。中佐は慌てて脱出しようとしたが、水の勢いに敵わずにシェルターの奥まで流され、中佐は溺死した。
場所は変わり、地上。
「職員の方々は、こちらに避難してください!」
由良に先導され、非戦闘要員達は安全な地下シェルターに向かっていた。頭上では空母艦娘達が上げさせた戦闘機が激しく
「頭上に気を付けてください! 焦らないで!」
由良の先導に従い、次々と非戦闘要員達は地下シェルターに入っていく。その時由良は、右手に持っていた14cm連装砲で対空砲撃を始めた。
「ドーントレスとか、苦手だけど……!」
由良は連装砲だけでなく、機銃による対空射撃も開始。死者を出してたまるか、と弾幕を形成した。その甲斐あって、数機の撃破に成功した。だがそれでも、空を覆い尽くさん数の深海機が向かってくる。
「くっ……!」
由良は素早く弾倉を交換して、対空射撃を再開した。だが、止められないと思った。そこに
『私に任せてください!』
と言って、両手に連装ガトリング砲を装備したMS。ヘビーアームズ改が滑り込むようにして現れて、両手のガトリング砲による濃密な対空射撃を開始した。
MSすら蜂の巣にする大口径とビームによる混合弾幕に、ただの飛行機が耐えられる訳もなく、次々と引きちぎられて、残骸へと成り果てていく。
『対空射撃は、私が引き受けます! 由良さんは、避難誘導を続けてください!』
「わかりました、お願いします!」
射撃の轟音に負けないように大声で言ってから、由良は避難誘導に戻った。そこに、長良が来て
「由良、通信を広範囲に切り替えて!」
と耳を指し示した。それを聞いて由良は、
『繰り返します! 艦娘の皆さんは、スピリッツの皆さんと共闘しつつ非戦闘要員の避難誘導を優先してください!』
と祐輔の声が聞こえた。
「ついさっき、復帰したみたい! 私達は、逃げ遅れが居ないか確認しつつ、近くの陣営を攻撃するよ!」
「はい、長良姉さん!」
祐輔の指揮復帰を境に、艦隊の動きが一気に変わった。それまで各個に対応していたのが、組織だった対応に変わって効果が跳ね上がった。
駆逐艦娘と軽巡洋艦娘達が中心になり、避難誘導。重巡洋艦娘、戦艦娘、空母艦娘達が対空射撃と深海艦隊に対して攻撃を開始した。
一度は陸地侵攻を許した祐輔艦隊だったが、息を吹き返してからは一気に第一防衛線まで押し返すことに成功。
祐輔が指揮を取り戻してから、約一時間後。深海艦隊の旗艦だった戦艦棲姫の討伐に成功。
パラオ泊地は、侵攻してきた深海艦隊を撃滅した。