パラオ泊地から、少し離れたある小さな村。
その一ヶ所の二階建ての宿泊所の部屋に、15人のロシア人が集まっていた。
その内の一人、GRUの1隊の隊長が、全員に見えるように祐輔の写真と何枚かの艦娘の写真を貼ったコルクボードを指し示し
「いいか、今回のターゲットはこいつらだ。この男は殺し、艦娘は何人か連れていく……手段は問わない。手筈は、物流業者のフリをして泊地内部に侵入し、木箱の内部に隠した爆弾で撹乱開始。その後、この男を殺害し、本国で開発されたこの
と手順を説明した。実は既に、宿泊所の前には数台のトラックが停まっており、その荷台には爆弾入りの木箱が積まれている。
そして薬物の入った手帳サイズの箱を、各員に渡した。
中身を確認し、箱を懐に入れたその時、激しい爆発音が鳴り響いて、宿泊所も大きく揺れた。
「な、なんだ!?」
隊長と隊員達は動揺しながらも、状況を把握しようと窓から外を見た。すると、宿泊所の前に停めていたトラックが、全て爆発していたのだ。
「一体、何が……」
一人の隊員が最後まで言う前に、その隊員は後ろに倒れた。
「お、おい、どうした!?」
別の隊員がその隊員に駆け寄り、気付いた。倒れた隊員の眉間に、穴が空いていることに。
「狙撃だ! 全員隠れろ!!」
その隊員の声に反射的に従い、隊長を含めた全員は机やソファーをバリケードにし、その陰に隠れた。
すると隊長が
「誰か、狙撃手の姿を見たか!?」
「いえ、見てません!」
「見えませんでした!!」
隊長の問い掛けに、隊員達は口々に否定の報告を返す。隊長も、その報告に仕方ないと思った。何せ、撃たれたタイミングにはトラックだった物体を見ていたのだから、狙撃手の姿を見れる訳が無いのだ。
「だが、相手は少なくともサプレッサー付きのライフルを使っている……! 一人ではないだろう……突入してくる可能性がある! 各員、警戒しろ!」
隊長は相手、帝国陸軍が突入してくると考えて、隊員達に警戒するように促した。確かに、常道的に考えるならば、それが正解だ。
そして隊員達も、ドアの方に用意していた銃を向けた。
だが、隊長を含めた全員の予想は外れていた。
次の瞬間、再び轟音が鳴り響き、同時に目も開けられないような閃光が隊長に襲い掛かり、隊長は反射的に目を閉じながら目許を腕で覆った。
そして恐る恐ると目を開けば、隊員達が居た場所に大穴が空き、隊員達は誰一人してその姿はなかった。
「い、一体何が……!?」
隊長は混乱しながらも、隊員達の名前を呼んだが、返事は無い。返ってくる訳がなかった。何せ隊員達は、ビームの直撃を食らって
隊長は狼狽しながら、この場所から逃げようとした。だが次の瞬間、その身を何やら見えない巨大なクローが捕まえて、持ち上げられた。
「ぐああぁぁぁ!?」
隊長は痛みから絶叫していると、目前に空間が揺れるように人間サイズの存在が姿を現した。AGF天ミナ改だ。隊長は、天ミナ改のマガノイクタチに捕まっていたのだ。
「き、貴様は……何者だ……!?」
隊長は痛みに耐えながらも、天ミナ改に問い掛けた。だが、天ミナ改は
『貴方達に告げる名前は無い』
とだけ言って、ほんの一瞬だけ電撃を放って隊長の意識を奪った。
スピリッツによる襲撃が始まって、僅か二分の早業だった。二分で、GRUの部隊は文字通り全滅したのだった。