GRUの隊長が起きた時、視界は真っ暗だった。目隠しされている訳ではないから、完全に光が無いのだろう。
床に寝転がらされており、その感触から金属製の床だというのが分かり、現状では脱出は不可能と判断した隊長は、まだ意識が戻っていないフリをしていようと思った。
だが
「意識が戻ったようね」
と女の声が聞こえた。顔を動かすと、右の方にまだ若い女が居た。外に跳ねている水色の髪が特徴の女だ。
「貴方、ロシアの諜報部隊の隊長格よね?」
女が問い掛けるが、隊長は
「何の事か分からないが、これは国際法違反だ。我々は、正規の手続きを踏んでやってきた輸送業者だ。今すぐ解放し、国に連絡させろ」
と告げた。あくまでも、諜報部隊だとは認めないようだ。だが、この時点で隊長は言い様のない不安に駆られていた。気付いていなかったのだが、実は今居る部屋は微妙に揺れており、更には大人では認識出来ない音が鳴り続けていた。
それにより、本人は気付かないが体と聴覚双方で常に揺れ続けているのだ。此により、相手は気付かない間に精神的に不安定になってきているのだ。
「へぇ……あんな、物騒な武器を持っていて、民間人と言い張るの?」
「今の海は敵だらけだ。護身用に銃火器は当たり前だと思うが?」
「マシンガンは分かるけど、軽機関銃は流石に護身用とは言えないわね……それに、こんな薬物に爆弾まで」
女がそう言って軽く開けたのは、使用予定だった
「その薬物は、痛み止めとして会社から支給されたものだ。爆弾とは何の事だ? もしや、荷物を勝手に開けたのなら、業務妨害で訴えるぞ」
「へぇ……痛み止めね……試してみましょうか」
「なに……がっ!?」
隊長が不思議に思った瞬間、隊長は両手に何かが絡み付いて強引に持ち上げられた。
「今から先にこれを打って、色々とやってみましょうか……」
女はそう言うと、女の後ろからゴンドラを引っ張りながら隊長に近づいてきた。その上には、刃物や針、棒等が乗せられていた。
一歩一歩、敢えてゆっくりと近づいてくる。それに伴い、ゴンドラが引かれる音と、ゴンドラに乗っている道具が隊長の耳に入ってくる。
それにより、隊長は鼓動が早まるのを自覚した。
拘束具の効果は、隊長は知っていた。本部で映像を見せられており、打たれた相手はまるで人形のように打った相手の言うことを従順に聞いており、過剰投与すると、副作用で命令されなければ動かない人形になる。
そして女は、隊長の後ろ側に周り始め、隊長の視界から消えた。すると、何か軽い物が落ちる音がした。
音からして、革のケース。つまり、拘束具が入れられていたケースだろう。
そしてとうとう真後ろに到着し、首筋に何かが当たるような感触がして
「分かった! 分かった! 言うから! それを打たないでくれ!!」
隊長は恐怖に屈して、そう告げた。
「それじゃあ、洗いざらし言いなさい……もし嘘を言ったら……分かってるわね……?」
手首に何かを巻きながら、女がそう言ってきて、隊長は何度も頷いた。
そして、数時間後。GRUが捕まってから、2日後に祐輔の下に人間体の天ミナ改が報告に来ていた。
「やはり、彼らはGRUで間違いないわね……目的は、艦娘の拉致と貴方の抹殺……抹殺の目的は、一時的にせよ、日本帝国の力を削ぐ為……その後に、この地にGRUの拠点を築くつもりだったようよ」
「そうでしたか……本土の情報省と軍の対諜報班に連絡し、ロシアの行動に注視するように伝えておきます。今回は、ありがとうございました」
天ミナ改からの報告を聞いた祐輔は、感謝の言葉を述べながら頭を下げた。そして
「それで、その隊長はどうしました?」
「そいつだったら、さっきそちらの憲兵隊に引き渡したわ。後はそっちにお任せするわよ?」
「分かりました。後日本土に送って、外交のカードとして使うように伝えておきます」
祐輔はそう言って、パソコンで少し作業した後に立ち上がり
「改めまして、今回は本当にありがとうございました……おかげで、パラオの民間人にも何ら被害は有りませんでした……此方が動いていたら、死傷者が出ていたでしょう……」
「いいのよ。これも、私達の仕事の内だから」
天ミナ改はそう言って、懐から何かを取り出して
「これ、今回奴らが使おうとしてた薬の中身のデータ……確認しておいてね」
と祐輔の前に、USBを置いた。
「承りました……後程確認しておきます」
祐輔が受け取ったのを確認し、天ミナ改は静かに退室していった。