艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

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すいません、遅くなりました


突然の来訪

GRUの捕縛からは、パラオは対人関連は平穏だった。

あの後分かった事といえば、拘束具(フェッター)は以前にあった事件と同じ組成ということだった。

つまり、ロシアはそのデータを同じ所から奪い、生成したということになる。

今現在、本土の諜報機関が調べている最中だという。

それはさておき、パラオ泊地は度重なる襲撃に危機感を覚え、防衛力の強化を始めた。

哨戒艦隊の編成と航路の変更から始まり、泊地施設内部だけでなくパラオ全体に対空機銃と対空砲を設置。

滑走路も増設することにして、その仕事をパラオの人々に割り振った。

そして祐輔は、その進捗状況が記された書類を一読し

 

「順調なようで、良かったです。物資が少なくなったら、すぐに伝えてください」

 

「分かりました!」

 

祐輔の言葉に頷いた明石は、ご機嫌そうに部屋から出た。その直後、入れ替わる形で大淀が慌てた様子で駆け込んできて

 

「祐輔さん! 今しがた、本土から航空機が来ました!」

 

と告げてきた。

 

「本土から? そんな予定、有りましたかね……」

 

大淀からの報告に祐輔は、予定表を開いて確認を始めた。すると、大淀が小声で、祐輔の耳許で呟いた。その直後、祐輔は驚愕から目を見開いて

 

「その御方は何処に!?」

 

「第一会議室です!」

 

場所を聞いた祐輔は、走り出した。そして、目的の第一会議室に到着すると、努めてゆっくりとドアを開けてその人物を一目確認したら、片膝を突き

 

「斯様な遠方の地にお出でになられるとは、思いもしませんでした……陛下」

 

その人物に対して、恭しく頭を下げた。祐輔の祖国たる日本の現天皇。その人である。

70歳を超えているが、背筋は伸びており、まだまだ活動的な印象を覚える。

 

「このパラオに現れたという常識外の戦力を持つ艦娘……どうしても、一目見たかったもので……」

 

「そのお気持ちは察しますが……護衛の方は……」

 

祐輔が確認出来る限り、護衛らしい姿も気配も無い。

しかし、言っても気にしないのが目の前の人物だった。

深海大戦が勃発し、日本に艦娘が現れた時。自ら動いて世界各国と外交をしたのだ。

本来なら外交官の役目だが、その外交官の殆どが緊急帰国の際に襲撃されて亡くなってしまった。天皇は、その行動力の高さと真摯さで約束を取り付けた。

泊地や警備府の拠点設営と物資の融通。その対価として、安全と海運を保証する。そうして、今の日本があるのだ。

 

「それで、飛行機から見えましたが……あの白い二隻の船が、件の?」

 

「はっ……傭兵部隊、スピリッツです」

 

今居る会議室からは見えないが、飛行機から見えた二隻の白亜の巨艦。アークエンジェルとエウクレイデス。

天皇は、やはり気になるようだ。

 

「……行かれますか?」

 

「ええ……直接、会ってみたいのです……」

 

「承りました……大淀さん。向こうに連絡をお願いします」

 

「はい」

 

祐輔の指示を受け、大淀は会議室から出た。そして十数分後、祐輔と天皇はアークエンジェルの艦長室に居た。

 

「初めまして、天皇陛下。私が、スピリッツ代表。艦娘、アークエンジェルです」

 

「スピリッツ万能工作艦娘、エウクレイデスです」

 

「これはご丁寧に……」

 

アークエンジェルとエウクレイデスが恭しく頭を下げると、天皇も頭を下げた。その天皇の背後には、祐輔と神通の姿があった。

念のための護衛である。

 

「此度は急な来訪を受け入れてくださり、感謝します」

 

「いえ。こちらも、何時かお会いしたいと思っておりましたので……」

 

天皇とアークエンジェルは握手すると、席に座った。そして

 

「我々にお会いしたい、ということでしたが……」

 

「世界の為に戦ってくれている貴女方をよく知りたいのと、お礼を言いたかったのです」

 

「……我々は傭兵です。一度依頼を受ければ、例えどんな手段を取ろうが、必ず完遂させます」

 

アークエンジェルのその言葉に、天皇は首を左右に振り 

 

「貴女方は、力の使い方を知っている……誇り高き方々だ……目を見れば分かります……」

 

「……ありがとうございます」

 

天皇の言葉に、アークエンジェルは少し嬉しそうに頭を下げた。

アークエンジェル達からしたら、それはかつての乗組員達を褒められていたのと同義だった。

すると天皇が

 

「此方としては、貴女方とは長く良い関係でいたいと思っております」

 

と言って、右手を差し伸べた。それからほんの僅かに間を置いてから

 

「我々も、貴国とは良き関係を保ちたいと思っております」

 

と告げ、握手に応じた。

こうして、天皇認可の戦力となる事になり、後日宮内庁からの発表により、スピリッツが天皇認可の戦力で、良好な関係を築きたいとされ、最後には直接交渉可能なのは、パラオの現提督の祐輔と長官のみに限定された。

これで、強硬派は動けなくなってしまった。

強硬派からしたら面白くないだろうが、もし強行すれば国家反逆罪が即座に適用される。

これで、長官と祐輔の懸念事項は無くなったのだが、まだ戦火は収まらない。

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