陛下の発表から暫く、祐輔はひっきりなしに来るスピリッツに関する問い合わせに対応し続けていた。
とはいえ、余りにも突っ込んだ内容の問い合わせは無い。あったとしても、スピリッツを使った謀叛をやるのか否か、という位だ。
それらの対応が全て終わった祐輔は、疲れた体を椅子の背もたれに深々と預けた。そこに、秘書艦としていた古鷹が駆け寄り
「お疲れ様です、祐輔さん」
と労いながら、マッサージを始めた。祐輔は、軽く唸り声を漏らしてから
「まったく……質問内容の答えは、全て宮内庁の発表した陛下の決定書の中に記されているというのに……きちんと読んでない証拠だよ……よくそんなので、提督業が出来てるよ……」
と愚痴を溢した。
他の提督達からの質問責めの全ての問い掛けに対する答えは、宮内庁の発表した内容に全て記載されていたのだ。それを聞いてきたという事は、ちゃんと読んでいないと自白しているのと同義だ。
「本当、お疲れ様です……暫くゆっくりして下さい。書類は私達で捌ける物ばかりなので……」
古鷹はそう言って、祐輔の目元に手を乗せた。古鷹の手の温かさに祐輔は、体の力を抜いて
「……すいません……少し休みますね……」
と言って、少し経つと寝息が聞こえてきた。
それに安堵すると古鷹は、ゆっくりと手を離してから祐輔が被っていた帽子を外し
「ゆっくり休んでください……」
と祐輔に、仮眠室から持ってきたタオルケットを掛けた。そうして古鷹は、自分の机に戻ると、書類を捌き始めた、
そうして古鷹は、窓の外を見て
「……対MS戦……か……対空戦闘より難しいなぁ……」
と呟いた。それは、スピリッツが用意したシミュレーター訓練での事だった。そのシミュレーターは空間に映像を投影し、攻撃が当たるとその映像が消える仕組みになっている。
それを用いて艦娘達は訓練したのだが、対空戦闘が得意な艦娘でないとまともにMSに対する効果的な迎撃も出来なかった。
だが、だからといってそのままには出来ない。古鷹もだが、対空戦闘が不得手な艦娘達はスピリッツと協力して、対MS戦用の新しい装備を現在開発中だった。
「まあ、しばらくはスピリッツの皆さんも忙しいみたいだから……私達でも、出来ることはやっておこうっと」
古鷹はそう言って、書類に意識を戻した。
スピリッツだが、今現在部隊を二つに別けて行動しており、一つは敵のMSの調査。
そしてもう1つが、確保した量産型機体の水中仕様への改造とそれのデータ収集だ。
ハイザックの水中仕様の改造とデータ収集は、改造設備があるエウクレイデスが行っており、少し前に聞いた話では水中用の近接戦闘用装備が上手くいってない、と古鷹は聞いていた。
水中戦となると、艦娘では潜水艦娘しか出来ず、潜水艦娘は魚雷でしか戦えないのが現状だ。
もし水中用の敵に遭遇したら、蹂躙されるのがオチだ、というのが資料を見た結論だった。
水中用MSとMA、そのどちらも艦娘達からしたら脅威に他ならなかった。
だから、水中戦用MSの開発は急務だった。
場所は変わり、とある海域の海底付近の洞窟。
そこを、アークエンジェル隊が調べていた。
『……クロスボーン、どうだ?』
『……見つけたぜ。今データを送る』
フェニックスからの問い掛けに、クロスボーンガンダム・フルクロスはフェニックスにあるデータを送った。
そのデータを見たフェニックスは
『……この熱量……間違いな。この先に、発電設備があるな』
『それも、かなりの規模だ……どうする、もう少し近づいてみるか?』
クロスボーンガンダムからの問い掛けに、フェニックスは暫く黙った。そして
『いや、一度離脱する……嫌な予感がする』
『了解。NTの勘を信じよう』
フェニックスの決定に従い、二機はその場から離脱。別の洞窟を調べに分離していた他の機体との合流に動いた。
そして、フェニックスの勘は正解だった。
実は二機の居る洞窟の奥の通路には、爆薬が設置されており、例え爆発に耐えられても、瓦礫に押し潰されていた可能性が高かったのだ。
それの悪意、というべき感覚をフェニックスは感じとっていたのだ。
『……この世界で、好き勝手させるものか……リボーンズガンダム……』
アークエンジェルに戻ったフェニックスは、小さく呟いた。この世界での戦いは、まだ始まったばかりなのだ。