『トライアド1より、マザー……艦娘を数名保護ならびに死者多数……生存艦娘は損傷激しく、衰弱してますが命に別状はありません』
『マザー2、了解。今そちらに、潜水艇を向かわせました。そちらに乗せてください』
『トライアド1、了解』
エウクレイデスとの通信を終えたフレスベルグは、金剛達の方に振り向いて
『今こちらに、貴女達用の潜水艇が来ます。そちらに乗り、母艦に向かいます』
と告げた。
「ありがとうございマース……」
「本当にありがとうございます……助けていただいて……」
『無理に喋るな……傷に障る』
意識がある金剛と秋月は、頭を下げたが痛みに顔が歪む。その時、出入口の海面に二隻の潜水艇が現れた。
恐らく片方は、遺体用だろう。
そう判断したのか、フレスベルグは
『まず、生存艦娘を一番艇に……その後、遺体を二番艇に移送だ』
『了解』
フレスベルグの指示に従って、トライアド隊は次々と艦娘の移送を始めた。
最終的に、生存艦娘は6名。金剛と秋月の他には、照月、グラーフ・ツェッペリン、サミュエル・B・ロバーツ、パースとなった。
そして、死者は12名。遺体の損傷は激しく、艤装も大破級の破損だったが、ブラックボックスは無事であったから、もしかしたら何か分かるかもしれない。
『奇襲に警戒しつつ、エウクレイデスまで後退開始する』
『了解!』
『周囲は俺たちが警戒しますが、奇襲される可能性はあります』
「お願いしマース……」
トライアド隊が全周囲警戒をしながら、二隻の潜水艇がエウクレイデスまで移動を始めた。作戦開始時に、付近に居た深海棲艦の潜水艦隊は軒並み撃沈した。
しかし、相手は無尽蔵とも言える戦力を誇る深海棲艦。
時間が経ったら、戦力を回される可能性が高まる。
その為、トライアド隊は全周囲警戒をした。
だが、予想に反して奇襲は無かった。
やはり、付近一帯の戦力を狩り尽くしたのが大きいのかもしれない。
艦底部のハッチから潜水艇を入れて、まずは生存艦娘達を次々と医療室に運んだ。
そして次に、二番艇から死者を丁寧に運び出して艦種と名前、どこの所属だったかを確認した。
「この娘達……パラオかトラックの娘達ね……両方共、全提督の時にMIA認定された娘達ばかりだわ……」
死者の過半数は、特にトラック泊地の艦娘が多かった。
それを確認し、ブラックボックスを艤装から取り出したエウクレイデスは、死者達を丁重に荼毘に伏した。
「……間に合わなくて、ごめんなさいね……けど、約束するわ……連中は必ず、私達が倒して無念を晴らすわ……」
エウクレイデスは死者達にそう誓い、火葬場を後にした。
そして、作戦開始から約4日後にパラオ泊地にスピリッツは帰還し、祐輔へな面会を求めた。
そして応接室に通され
「申し訳ありません。遅くなりました」
「いえ、大丈夫です……では、海底基地攻略作戦の結果を伝えます」
そこから、作戦結果を祐輔に伝えた。
作戦結果を聞いた祐輔は、渋い表情で
「……そのような大規模基地があるとは……完全に予想外でした……」
「仕方ないかと……あの基地の技術は、完全にこちらの物でしたから……見つけるのも難しいでしょう……我々はエネルギー探知がありましたから、気付けた……それに、深海500mとなると、いくら潜水艦娘とは言えども潜れない深海域……そちらでは、見つけるのは土台不可能でした……」
今現在の既存の潜水艦娘の潜れる最大深度は、約200mで、500mには到底潜れない。
「……それで、その基地のMS生産ラインを掌握したということでしたが……」
「はい。こちらを見てください……」
アークエンジェルはそう言って、祐輔の前に端末を置いた。その端末には今現在の生産ラインの状況が表示されており、順調に再利用する為の作業が進んでいる事が伺える。
「今の状況ですと、何の問題も無ければ後3日程で生産ラインは活動開始出来ます。そうしましたら、後程お渡しする端末から量産の指示が出せます」
「……ここまでしてくださり、感謝します……それで、保護したという艦娘達は……」
「今はまだ、治療中になります……後2日もすれば、そちらに引渡しすることが可能になる。と、エウクレイデスから報告がありました」
アークエンジェルは報告しながら、祐輔に保護した艦娘の名前が書かれた書類を手渡した。その書類を一読した祐輔は、後ろに控えていた大淀にその書類を手渡し
「彼女達の籍を行方不明から在籍に復帰を……」
「はい、分かりました」
祐輔の指示を受けて、大淀は応接室から出ていった。
そして、祐輔はアークエンジェルの方に向き直り
「それで、死者は……」
「……こちらになります……」
裏返しに置いた書類を取った祐輔は、確認すると数秒間程黙祷し
「……彼女達を丁重に荼毘に伏してくださり、感謝します……」
「いえ……もう少し早ければ、助けられたかもしれないと思うと、無力さを覚えます……」
見つけた遺体は、基地内で無造作に廃棄扱いされていたのを含めて、二十名余りに上る。
もう少し早く基地を見つけていたら、助けられたかもしれない命だったのだ。そう考えたら、アークエンジェル達は無力さを覚えた。
「いえ、貴女達が居たからこそ、たとえ遺体や遺灰だとしても帰ってこれたのです……ありがとうございます……」
祐輔はそう感謝の言葉を述べながら、頭を下げた。
その後、遺灰の受け渡しの打ち合わせをして、アークエンジェルは応接室から出て母艦へと戻っていった。