艦隊これくしょん・傭兵魂を継ぎし艦   作:京勇樹

84 / 113
来客

その日、祐輔はパラオの市街地に来ていた。

パラオは日本の支援により、インフラや経済が活性化していた。祐輔が今居る料理屋も、日本本土の店を誘致し、支店を出してもらったのだ。

祐輔は私服で、そんな料理屋に居た。しかも、居たのは二階の奥の部屋。そこは限られた人しか入れない為、秘密の会話をするにはうってつけなのだ。

相手はスピリッツではない。スピリッツだったら、鎮守府の施設で事足りる。

では、会うのは誰か。

 

『お客さま。お待ちの方がいらっしゃいました』

 

「通してください」

 

祐輔が促すと、料理屋の女将が静かに扉を開けて

 

「どうぞ、お入りください」

 

「ありがとう」

 

女将に促されて、一人の小柄な女性が入った。

その女性が入ったのを確認した女将は

 

「御二階は貸し切りでございますので、どうぞごゆっくり」

 

と言って、扉を閉めた。

そして、女将の足音が聞こえなくなったのを確認してから

 

「……お久し振りにございます……朝日様」

 

と頭を下げた。

敷島型戦艦二番艦の艦娘で、天皇陛下のご意見番であり、更には時々新人に対する教師役も勤めている。

そして、祐輔に対して高い評価を出した一人でもある。

 

「久方ぶりですね、榊原提督」

 

「は……自分が訓練生時代でしたから、三年振りでしょうか」

 

朝日に返答しながら、祐輔は朝日のコップに飲み物を注いだ。

今から数日前、祐輔に私信が届いたのだ。

非常に遠回りな方法で、通常より日数を掛けてきた。それ程日数を掛けたのは、警戒しての事だと祐輔は考えて、今居る料理屋の二階を貸し切りにしたのだ。

更に言うならば、料理屋の周囲には鎮守府の陸戦隊から信頼出来る部隊を選抜し、配置している。

 

「して、朝日様……内密な話とは一体……」

 

祐輔の問い掛けに、朝日は少し躊躇う様子を見せた。

しかし、数秒後

 

「……今陸軍内部で、深海棲艦を鹵獲し、数を増やしている……という情報を入手したのです」

 

「なっ……深海棲艦を鹵獲!?」

 

深海棲艦を鹵獲なんて、どうやって。というのが、祐輔の最初の反応だった。しかもそれだけでなく、数を増やしているというのもあり得ないと言いたかった。

 

「信じられないのも、無理らしからぬ事です……私も、密偵から話を聞いた時は驚きました……もし本当ならば、海軍に協力している者が居る事になります……」

 

「……一体、誰が何の目的で……」

 

深海棲艦は時々、特異な個体が現れる事がある。

その特異個体に遭遇したら、撃破した後、沈む前に回収。海軍研究所に引き渡す事になっている。

 

「今のところ、皆目検討も付きません……しかし、ろくでもないのは確かでしょう……榊原提督……」

 

「自分に出来る事ならば、対処します……軍人として、民間に被害を出させる訳にはいきません」

 

朝日が最後まで言い終わる前に、祐輔は頭を下げながら宣言した。それは一重に、祐輔が善良な軍人だからだろう。

 

「感謝します、榊原提督」

 

「微力ながら、力を尽くします」

 

朝日の感謝の言葉に、祐輔は再び頭を下げた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。